傘道
2025-12-12 21:42:07
1421文字
Public ビリイト
 

映画のエンドロールは初雪の中

#billighter1w
【お題投稿〈3回目〉】
お題①: 最初の雪
お題②: 『小僧』と『老いぼれ』
から書きました。

「小僧、わかってねぇな。」
「老いぼれに言われる筋合いはないっすよ。」
軽口を叩き合う。
目の前には凶悪なエーテリアスの群れ。
咆哮がホロウを震わせる。
危機的な状況?
笑わせる。
こんなの映画の小道具だ。
「勝負しません?どっちが多く狩れるか?」
小僧は不敵な笑みを浮かべて提案する。
負けるつもりも手も抜くつもりもない。
それは挑発だった。
サングラスをずらして見える翡翠色の生意気さ。
「言うじゃねーか、小僧。」
老いぼれはホルスターからクルクルと赤と黒が織りなすシックな銃を二丁取り出す。
黄色のアイライトが猛禽類の鋭い目つきで小僧をとらえた。
挑戦状を正面から受け止める強者の目だった。
「小僧のお遊びに付き合ってやるよ。」
やれやれと肩を竦める老いぼれ。
挑発に乗った老いぼれを見て小僧の口が三日月のように弧を描く。
二人は戦場に堂々とした足取りで向かう。
金色のガントレットと黒き銃が交差する。
「踊りたいやつからかかってきな。」
小僧と老いぼれがダンスのお誘いをエーテリアスの群れにした。
シーンが動く。
焔が。
銃弾が。
敵を一掃する。
それは映画のワンシーン。
瞬きすら許されないアクションシーンだった。



結晶が宙を舞う。
砕ける結晶のダンスホールでビリーとライトは踊っている。
お互いの手を握り、適当なリズムを刻んで。
結局、勝負の結果はどうなったのかわからない。
煽り、挑発に乗り。
そんな状態で冷静にカウントなんてできない。
審判も観客も居ない決闘の勝敗は誰も知らない。
「小僧。」
「なんすか、老いぼれ。」
ビリーはライトを抱き寄せた。
突然のことで足は絡れ、ライトは完全に機械人に身を預ける形になった。
「ちょっと!」
「そろそろいつもの『パイセン』を聴かせてくれよ。」
大好きな後輩からそう呼ばれるの好きなんだぜ?
そうビリーがぎゅうっと後輩を抱きしめながら嬉しそうに言う。
「それなら俺の名前も呼んでくださいよ。」
「ライト俺の後輩で可愛い恋人♡」
「誰がそこまで言えって言いました?」
柳眉が吊り上がり、自分はいかにも不機嫌ですとアピールをする。
まぁ、それはただの演技なのだが。
自分が可愛いなんて常識なんて言わんばかりの生意気さが隠れていない。
「悪かったよ、ダーリン♡」
ビリーはライトの頬にフェイスガードを押し当てキスを贈る。
ライトが好きな料理を奢って。
ライトが好きな音楽を聴かせて。
ライトが好きなことをしてあげる。
だから機嫌をなおしてくれ。
そうデートのお誘いをすればチャンピオンはたちまちご機嫌になった。
「俺、欲しいものがあるんですけど?」
「それは俺か?」
「よーくご存知で。パイセンをくださいよ。」
かっこいい老いぼれは堪能したから。
甘くてスパイシーな夜をください。
あぁ、でも生意気な小僧にお仕置きしてもいいんですよ?
「俺を満足させてくれよ、お兄さん?」
「上等じゃねーか、小僧。」
ホロウを後にした二人の視界に映るは曇天から降り注ぐ初雪だった。
白くて無垢な地上を知らない雪。
そんな雪たちは教えられない。
大人な悪いことをしよう。
雪が舞う街を小僧と老いぼれは歩く。
これから熱を、愛を確かめ合うのだ。
この物語はここで終わるが。
二人の物語はまだまだ続く。
二人だけの夜の物語がこれから始まるのだ。



お芝居はおしまい。
初雪がエンドロールを飾る。