三毛田
2025-12-10 22:52:39
1079文字
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2 い. 言わないで今はまだ

2日目
すぐには聞きたくない。はずだった

 その言葉を聞きたい。でも、聞きたくない。
 二つの感情が、せめぎ合う。
 だからといって、彼の口から俺が欲しい言葉を止めることは出来ないし、したくない。
「丹恒」
「どうした。腹が減ったのなら、ラウンジにデザートや軽食が用意されている。それを食べるといいだろう」
「お昼にいっぱい食べたから、それは大丈夫」
「そうか。それなら」
 アーカイブ端末と俺の腕の間に挟むと、一瞬驚いたように目を丸くし。
 ほんのり頬を赤く染め、それからそっと視線をそらして。
 いつの間に、彼の中で俺への好感度が上がっていたのだろうか。
 俺から丹恒への好感度は、開拓の旅が進むたびに上がって行っている。けれど、逆は? と考えて、試してみたくなったが故の行動。
……
「きゅ、ぅ?」
 困ったように、か細い声で俺を呼ぶ。
 駄目だ。今すぐキスしたい。
 可愛すぎるだろ。というか、普段のあの令達な蒼龍はどこに行ったんだよ。
 俺が彼に恋をしているように、もしかして? と考えてしまう。
「丹恒。あまり可愛い顔されると、ちょっと困る」
「か、可愛くない」
 否定しながら、そっと俺の胸を押す。
「そんな力じゃ、びくともしないぞ。普段の馬鹿力はどうしたんだよ」
「お前を傷つけることはしたくない」
「壁に激突して、頭から血を流したとかそういうことじゃない限りは、傷ついたとは言わない」
 手首にそっと手を添えると、軽々と振りほどいて。逆に指を絡めてくる。
 なんでさ。
「お前は、その……俺を、好きだと思っていいのだろうか」
「っ」
 まさかストレートに訊ねられるとは思わなかった。
 というか、自分で聞いてきたくせに、なんで照れてるんだよ。いつもみたいに冷静に、淡々と、俺の心を抉るような聞き方をしろよ!
 なんて、それをそのまま口にしたら逆ギレだ。
「じゃあ、丹恒は俺のことどう思ってるんだよ」
 絡めてきた指を握り込むと、更に顔を赤く染めて。
「好き」
 彼の口から言わないでほしいと、聞きたくないと、数分前に思っていた言葉を。
 俺が先に告げてしまう。
……嬉しい」
 絞り出すような声だが、しっかりと、はっきりと、耳に届く。
 指先まで寝るが伝わっていき、そこから一つに溶けてしまいそうな錯覚。
「俺も、穹が好きだ」
 俺の手を握り返しながら、嬉しそうに。
 手を繋いだまま、空いている方の手で彼の頬に触れ。
 徐々に顔を近づけていく。唇が触れ合って。
 俺たちは初めての腰をした。
「好きだ」
「ああ。俺も、好きだ」
「嬉しい」
「俺も嬉しい」
 笑い合う。