三毛田
2025-12-10 22:14:13
1073文字
Public アドベント25
 

10. 冗談ばかりの狼少年

10日目
そんな彼の拠り所になれたら

 嘘か真か。それを見極めるのは、極めて難しいだろう。
「あまり冗談ばかり言っていると、そのうち誰も信じてくれなくなるぞ」
 楽しそうに話をしている姿に水を差したくなくて、他の人達から離れてこちらへ来たところへ思わずそんな言葉を投げかけてしまう。
 彼を誤解して欲しくない。そんな思いが強かったのもあるけれど、冗談で周囲を笑わせている姿に、謎の引っかかりを覚えたのもあって。
「丹恒も?」
「俺は……
 さて。どう答えるのが正しいのだろうか。
「悩まなくていい。お前の直感で、答えて」
 分からない。それが正解。
 けれど。
「俺は、お前を信じている」
 そう。
 俺は彼を、穹を信じている。
 俺と話すときは常にまっすぐで、あまり言葉を飾らないから。
「あー……それは、ズルいだろ」
 ボソッと言葉を落として机に手をつき、ズルズル座り込んでしまう。
「穹?」
 名前を呼ぶも、反応はない。
「予鈴鳴った。戻る」
「早く戻れ」
「わかってるって」
 耳を真っ赤にしながら、穹は己の席へ戻っていく。
「ということがあったんだ」
「アンタたちの惚気はお腹いっぱいだよ~」
 家に帰ってから三月に今日の出来事を告げると、彼女は己の腹をさすりながら眉を寄せて。
「惚気?」
「そうだよ。アンタと穹のラブラブエピソードを毎日聞かされるのは、流石に勘弁して」
「ラブラブ……別に俺と彼は付き合ってはいないが」
「ぇ」
 俺の返答に、言葉を失ったように声を漏らす。
「あれで付き合ってない? 本当に?」
 ブツブツ呟きながら、俺から距離を取る。なんなんだ。
「無意識で無自覚とか質が悪いって~」
「痛い。叩くな」
 バシバシ叩かれる。彼女の力であればそこまで痛くはないけれど、一応形式として告げておく。
「三月」
「なに?」
「冗談ばかりの嘘吐きは、いったいどうなると思う」
「うーん……
 突然の質問に、困ったような表情を浮かべ。
「難しく考えなくていい。お前の直感で答えてくれ」
「きっと後々大変なことになるのは、その人自身だと思う。でも」
「でも?」
「そうしないと、自分を守れないんじゃないかなって。冗談を口にするのも、嘘をついちゃうのも、その人が自分を、自分の心を守りたいって気持ちが強いからだとウチは考えてるよ」
「なるほど。参考になった」
「いえいえ~」
 お礼は? と、期待を込めた瞳が俺を見上げてくる。
 きっと穹も、自分を守るためにああして冗談を口にしているのかもしれない。
 そんな彼の拠り所になれたらいいなと、勝手に思っている。