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こゆ
2025-12-10 00:04:23
1780文字
Public
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『お手をどうぞ』
https://x.com/coffeetimeworks/status/1992235103439970417?s=46
こちらの↑素敵な絵から三次創作させてもらいました
“ とんだ茶番ね ”
“ そんなこと言うなよ ”
深夜の食堂、ペンギンが手を引けば、イッカクが足を出す。しなやかな腕が、微かに背を反らす…………
※イッカクちゃんとペンギンが踊ってるだけの話
※当たり前ですが㍉もカップリングの意図はなく、ノンカプほのぼの、兄妹的なイメージ
「ふぅ
……
やっと終わった」
おれがため息をつくと、イッカクがカウンター越しに笑った。
「そうね、お疲れ様ペンギン」
がらんとした食堂を見回す。テーブルも椅子も片付いて、床も拭き終わってる。今日は12月の合同誕生日パーティーで、イッカクはその主役の一人だったはずなのに、もはや趣味なのか?と疑いたくなるように仲間に酒を飲ませまくって文字通り全員ぶっ倒し、余った体力で片付けまで完璧にこなしてしまった。
そして主役なのに、今日もあのツナギ姿だ。剣を抜いて、工具をぶら下げての生活で着飾る気ゼロなのはいつものこと。
それでも、出会ったころより長くなった髪や、肌に刻まれたハートのモチーフに思うことがないわけではない。
「なあイッカク、今年のパーティーはどうだった?」
「いつも通りよ。料理は美味しかったし、誰もアタシの酒を断らないし、最高に楽しかった。ペンギンとキャプテン以外は全員潰したしね。あはは、まあ例年通りってとこかしら」
「ははっ、おれが潰れたら誰が片付けるんだよ。
……
まあ、朝になったらシャチが一番に起きるだろうから、皿洗い丸投げって手もあるか」
そう考えると、さっき部屋に転がしてきた相棒の顔が浮かぶ。意外といいアイデアかも知れない。おれも今からシンクの山を相手にするのは骨が折れる。
「あら?」
イッカクの声に顔を上げると、どこから誰が持ってきたのか。置き去りにされたトーンダイヤルから、北の海で馴染みの古い曲が流れ始めた。
「せっかくだし、このまま一曲お願いしても?」
疲れてるし酒も入ってるけど、昔からこの曲はみんなが笑顔になるやつだ。誕生日にはもってこい。
おれが手を差し出すと、イッカクは目を丸くさせて、すぐにふふっと笑った。
「もう! しょうがないわね」
そう言いながら、照れ隠しみたいに手を握り返してくる。
おれが一歩踏み出すと、最初は少し戸惑いながらも、ちゃんとついてきてくれた。子供の頃から何度も聴いた曲だから、ステップは体が覚えてる。
もちろんこの船には北の海出身の奴ばかりじゃないが、いい曲は誰が聴いたっていい曲には違いないわけで。繰り返し聴いてるうちに
ハートの海賊団
おれたち
の馴染みの曲になったってわけだ。
おれがリードすれば、イッカクは自然に女性側の動きで合わせてくれる。
さっきまでの疲れた顔が、だんだん呆れたような笑顔になって、最後は小さく歌詞を口ずさみながら、くるくる回った。そして曲が終わるタイミングで、胸に手を当てて、とても綺麗なお辞儀をした。
おれがパチパチ拍手をすると、
「やめてよー、恥ずかしいじゃん」
と笑いながら頬を赤くする。
「ペンギンこそ、さすがのエスコートね」
「昔は見様見真似でおれもくるくる回ってたからな」
「
……
まさか、シャチと?」
「
……
シャチとだな」
ちょっと気まずい空気が流れたけど、イッカクはすぐに吹き出して手を叩いた。
「やだもう、うける!」
格好のつかない話ではあるが、まあ、主役がこんなに楽しそうなら、それでいいか。
「ねぇ、この曲たまにあんたたち歌ってるけど、キャプテンも馴染みなのよね? 来年の誕生日とかに
……
その、頼んだら
……
」
だんだん小さくなっていくイッカクの声に思わず吹き出してしまった。さっきまでの「誕生日なんだから」と言って「ほら、飲んで飲んで!きゃはははっ、たっのしー!」と豪快に飲んでいた彼女とのギャップと言ったら。
「そりゃあ
……
断るわけないだろ」
「でも、足とか長さ違い過ぎて絡まるかも」
ふっ、ふははっ、あははははっ。
一度吹き出したら我慢できなくて、必要以上に笑ってしまった。イッカクが目の前でみるみる不機嫌になって「笑い過ぎ! ほんっとアンタはデリカシーない」って抗議と悪口をまとめてぶつけられた。
すまんすまん、っと口先だけで謝った。震える肩をなんとかいなして、どうしたもんかと首を傾げるとあのトーンダイヤルが目についた。
「それじゃあ、来年の練習にもう一曲どうですかお嬢さん」
うやうやしく手を差し出せば、イッカクは瞬きひとつして、しょうがないわね、とその手を重ねた。
くしゃりと笑った顔がちょっとだけ嬉しそうに見えたのはおれの気のせいかも知れない。
『お手をどうぞ』
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