三毛田
2025-12-09 19:49:47
1070文字
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1 あ. 愛と恋の違い

1日目
君に与えたいし、求められたい

 愛とは何か。恋とは何か。
 きっと、一言で説明するのは難しいだろう。
 それでも。
 俺は、彼の口から違いが聞きたくて今日もそちら関連に無知を装う。
「丹恒。愛ってなんだ?」
「俺は、他者から与えられる愛というものを理解していない。それで良ければ、ひとまず一般論としての愛を説明する」
「お願いします」
 「簡単に言えば、相手を大切に思う気持ちだ。深く掘り下げると、『慈しむ、いとしく思う、親しみの心で寄りかかる』も当てはまる。家族間、男女間でそういう感情を抱く事も指すだろう」
「はい!」
「なんだ」
 勢いよく手を挙げると、どうしたという表情をこちらへと向けてきて。
「俺と丹恒の間にも、愛は芽生えますか?」
「俺がお前を、お前が俺を、先のように大切に思う気持ちがあるのならば」
「丹恒は、どうなんだ」
 俺はもちろん、丹恒を大切に思っている。彼だけじゃない。列車のみんなのことも、大切に思っている。
 これを愛と呼ばず何と呼ぶのだろうか。
「大切に思っている。だから、親愛の情は抱いているとも言えるだろう」
「丹恒〜!」
「こら。飛びつくな」
 嬉しくて飛びついたから、叱られた。
 それくらいなんともないやい!
「それじゃ、恋って?」
「恋……
 答えに窮したように、言葉を途切れさせる。
「わからない。すまない。アーカイブやネットにある辞書で調べてみてくれ」
「はーい」
 これ以上は触れられない気がして、大人しく引き下がる。どうしたのだろうか。
 なんか一人になりたそうなので、部屋に戻ると声をかけてから資料室を出ていく。
「恋が求めるものなら、愛は与えるもの。か……
 そうだとしたら、俺は与えられてばかりだ。
 そして、丹恒に恋をして欲しい。なんて、自分本位な考え。
 俺を求めて欲しいだなんて、与えられている愛に満足していないと同義じゃないか。
「知られたくない」
 けれど、知られたい。知って欲しい。
「愛してるけど、恋もしてるんだ。丹恒に」
 だから求めてしまうし、求めて欲しいと願ってしまう。
「わがままになってきたなぁ、俺も」
 好かれている自覚はあるけれど、それは所詮〝親愛〟の情というやつで。
 残念ながら、恋から愛になったものじゃない。
 親愛でも愛を向けられているのだから、贅沢を言うなと外野からは言われそう。
 それでも欲しがってしまうのが、きっと人間の性。
「好きだ、丹恒」
 この気持ちが届いてほしいけれど、届かなくてもいい。
 彼の重荷になりたいわけでも、枷になりたいわけでもないから。