重たいカーテンの隙間を泳がせるように朝陽がチラと差し込む。1年の三分の1が終わったこの朝は、それまで2月から3月並みの厳しい冷えを更新し続けていたのを覆し、初夏の様相だと気象予報キャスターが役者宜しくテレビの箱から伝えている。
「……ン。……オズ、オズ。おはよ」
「んん……はよ。……また付けっ放しじゃん」
まだ眠っている部屋の中、もぞりと動く影がある。それは残念ながらこれから勤めに出なくてはならない、憐れな2人の人の子である。間延びした声が、テレキャスターを抑えて隣に寝そべる彼氏に被さり囁く。
「……聞いてください、今日は……お仕事休んでいい日です 」
「は、も……何言ってんの、まだ寝てんの? 壮大な夢だなぁ……」
「……というわけで俺とお出掛けしよ?」
「全っ然、『というわけで』じゃないんだわ。も、どいて」
反論したげな深海の瞳が、目の前でパチパチと動く瞼に遮られる。あ、好き。そんな稚拙ながら素直で突飛な告白がチェレスの口から2、3度紡がれる。
「だ、から……そんな日は、無い、から! はい起きる!」
「ひどい! 冷たぁい! 真っ裸には辛ぁい!」
華麗に掛布を翻し、彼らは朝陽におはようを言う。駄弁りながらも2人は手際よく身支度を進めていく。
「今日はこれで決まりだな……」
「お、新しいやつ」
彼らが愛する“ヒーロー”のような真っ赤なバンダナが、誇らしげに首元を彩っている。
「せめてもの腹癒せに、景気付けってやつよ。だーいじょうぶ、バレないバレない」
「いや、ARCAの筆頭さんには即バレだと思うよ……」
それな、あの人すぐ分かっちゃうなァきっと。とチェレスが口を尖らせると、返事のようにオズが控えめに噴き出す。同じ赤のバンダナがオズの首元にも品よく飾られている。
「ンじゃ、今日も頑張って仕事をこなそうぜ」
「労働者万歳、ってね」
クラップの音が軽快に玄関へ響き渡る。
労働の対価は金で支払われるものであるが、時にチップも欲しいもの。今日は誰に何を強請ろうか、そう口ずさみながら2人はバイクに飛び乗った。
5/1 メーデー
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