覚悟はしていたが、12月に入り、とんでもない忙しさに見舞われている。クリスマスを迎える前にすでに年明け新年の特番の収録が始まっている。ロケで地方にも飛び回り、自分がどこの時間を生きているのかわからなくなりそうだ。左馬刻の方も忙しなく、一緒に暮らしているというのにすれ違いの日々が続いている。もう何日顔を見ていないだろう。不規則な生活が続いているので、左馬刻お手製の料理を食べることも叶わずだ。
深夜に帰宅しても左馬刻はいなかった。本日は朝まで組事務所に詰めているそうだ。早朝には簓も再び仕事に向かう。今日も顔を見ることが出来なかった。玄関で靴を脱いでいる間も明かりはつかなかった。廊下の人感センサーが反応しない。あかん、ヌルサラともあろうものが疲れで存在感が無くなってきたかも。へらりとそんなことを考えていただけなのに急にずしりと疲労がのしかかってきた。
真っ暗な廊下をのろのろと進み、リビングの扉を開ける。暗闇の中にチカチカと光るものがある。ギョッとしたものの、いろんな色に光っているものだから、暗闇の中でたたずみしばらく見入ってしまった。ようやく我に返ってリビングの明かりを付ける。光るものは棚に置かれた小さなクリスマスツリーだった。それは先月、簓が買ってきたものだった。すっかり忘れていた。忘れていたのに今ここに出ているということは、左馬刻の仕業である。ここに飾って、電飾が光るようにしている。なんのためかって、それは。
じんわりと胸に広がるものが鼻の奥をツンとさせる。滲んだ光がまた綺麗だ。
「いい子にしてたらツリーの下にクリスマスプレゼントあるかもな」
そんなことを言いながら簓はウキウキとクリスマスツリーを買ってきたのだ。あの時、相変わらず左馬刻は興味無さそうにしていた。その光景を思い出しながら、チカチカと綺麗な光を放つクリスマスツリーの写真を撮る。
綺麗や!ありがとうな!いい子にしてたらサンタさんがクリスマスプレゼント置いてくれるかも。
メッセージにはすぐに既読がつき、
クリスマスツリーよりでっけえやつかもな、と返信がくる。簓は、でっかいやつって何!?と声を上げて笑った。目に焼きつけるために、光をまとうクリスマスツリーを見続ける。簓がしまい込んでいたクリスマスツリーを出し、飾り付けをして電飾を巻き付けている左馬刻を思い浮かべながら。
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