九條もぐ
2025-12-07 15:55:04
4946文字
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お題【嫉妬】

伊剣ワンドロワンライ
お題【嫉妬】をお借りしました。
無自覚に嫉妬する伊のお話です。
最初は本編軸、終盤はデア軸になります。

1時間OVER&フライングにて失礼します。

(いつものように、江戸の町並みの物珍しさに目を輝かせているだけなのに)
 いつものように江戸の町にて盈月の儀に関する情報の収集に勤しむ伊織とセイバー。ただ、江戸の町を見ては目を輝かせながらはしゃぐセイバーを見て、伊織の胸の奥からドロドロとした黒い感情が湧き上がっていた。
「お嬢ちゃん、お団子食べるかい?」
「良いのか!?では
「こらセイバー、勝手に貰うんじゃない。銭を払うから少し待ちなさい」
「疾く急げ!!」
「解ったから
 いつものように団子屋の店主から団子を差し出され勝手に食べようとするセイバーを窘め、銭を払い団子を手渡すだけなのに、店主とセイバーのやり取りだけで伊織のドス黒い感情は湧き上がる。
(なぜ)
 伊織はこの感情の意味が解らないでいた、なぜ普段通りに町の人に声を掛けられニコニコと接するセイバーにこのような感情を抱いてしまうのか
 一番酷かったのはなんと助ノ進に声を掛けられた時だった。
「よっ、伊織さんにセイバーさん!!いつも仲がいいねぇ〜」
「むっスケノシンではないか(もぐもぐ)」
「こら、食べながら喋るんじゃない」
 助ノ進はいつものように笑顔で伊織とセイバーに声を掛け、セイバーが団子を食べながら助ノ進に話しかけるだけで伊織の胸から黒い感情が湧いてきた。
「にしても相変わらずよく食べるねぇ。セイバーさんの食いっぷりを見ると気分が良くなるからなぁ」
「もぐもぐんぐ、そうなのか?」
「そりゃあそうよ!!アンタ、いっつも美味そうな顔して食うだろ?それがどうも評判でよお伊織さんが連れた別嬪さんが美味そうに食うからつい
………。」
(気に入らん)
 饒舌に町の人からのセイバーに関する声を話す助ノ進に無性にイライラしてしまう伊織。よほど凄い顔をしていたのか、助ノ進は驚きながら伊織を見ていた。
「い、伊織さん?どうしたんだよ、眉間にシワよせて
何が?」
「どうしたんだよ、なんかアンタの気に障っちまったか?」
「おいイオリスケノシンが困ってるではないか」
はぁ?」
(助ノ進が困ってもしや、表情に出てたのか?)
 伊織はセイバーから指摘され我に戻ったのか、一気に血の気が引いた。
「すすまない、しばらく一人にしてくれ!!」
「えっ、ちょ伊織さん!!」
「イオリ!!」
 伊織は耐えることができず、その場から走り去ってしまった。
「どうしちまったんだ?」
「解らぬ、だが行く場所は何となく察している。イオリは私が何とかしておく、すまないなスケノシン」
 セイバーは団子を一気に平らげ、助ノ進に頭をさげ伊織が向かったであろう場所に向かうことにした。

 ◇

 ここは長屋から少し離れた雑木林、伊織が鍛錬する際よく来る場所。伊織はここまで走ってきたため、肩で息をしていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ
(なぜ助ノ進にあのような態度をただ普通にセイバーと話していただけで、なぜ)
 伊織は今、理解し難い感情に苛まれている。剣以外興味すら抱くことがなかった伊織が抱いたドス黒い感情。それも、セイバーが自分以外の誰かと話している時にだ。
「おい、イオリ!!」
「っ!?」
 考え込んでいる最中、セイバーが伊織を追いかけて来たようだ。まだ気持ちの整理がついてないのに、伊織は思わず声を荒げた。
「一人にしてくれと云っただろ!?」
「さっきからなんなんだ、その態度は!?私のマスターのクセに生意気だぞ!!」
「はぁあっ!?」
(こっちはお前のせいでこうなっているというのにか!?)
 口喧嘩がしたい訳では無いのに、いつの間にか喧嘩に発展してしまう。伊織もセイバーも頑固な節があるため、折れるわけがない。
「それはこちらの言の葉だ!!何故、俺の云う事を無視した!!」
「誰が弱いきみの云う事なんぞ聞くものか!!さっさとスケノシンに謝らぬか、かなり失礼な態度だったぞ?」
「助ノ進は関係ないだろ!!」
「巻き込んでおいて何を云っておる!!」
 今にも殴り合いに発展しかねない雰囲気だ。誰もいないからよかったものの、カヤとかに見られたりしたらそれこそ収拾がつかない事態になる。埒が明かないと思ったセイバーは、一息を置いてから口を開いた。
きみ、何をそんなに怒っている」
「なんだ急に」
「私とスケノシンが話しているだけで、きみ相当怒っていただろ?」
「っ
 伊織はマスターとサーヴァントの関係性を思い出す。基本的に考えているはパスを通じて筒抜けな状態伊織のドス黒い感情も筒抜けなのだ。
「で、何に対してそんなに怒ってる?」
そうか、どうせお前に筒抜けなら
 伊織から何かが削げ落ちたかのように表情がなくなり、そのままセイバーにゆっくりと近づきセイバーを近くにあった木に押し付け、そのまま両肩を掴む。
「うっ、ちょっ痛い、痛いぞイオリ!!」
お前が悪いんだぞ、誰ふり構わず愛想を振りまくから」
えっ?」
「そうだよ、俺は怒っているんだよお前に対して」
 伊織はまたセイバーの肩を掴む手に力を込める。セイバーは痛さのあまりに顔を歪める。
「いっ、痛いっ!!」
「こんな痛み俺の怒りに比べたら、まだ可愛いものだろ
 伊織はそのままセイバーの顔に近づき乱暴に唇を奪う。
「んんっ!?」
(ななぜ口づけ)
 何度か伊織と魔力供給と称した口づけをしたことがあるが、それとはまた違う口づけだ。とても乱暴で荒々しい口づけ。セイバーが少し口を開けた瞬間、乱暴に舌をねじ込み絡ませてくる。
「んうッ、んんッ!!ふぁあッ、ひッ、おッんんッ!!」
 乱暴な口吸いにセイバーの身体はビクビクと震える。魔力は流れてこないから魔力供給ではないことは解る。その代わりに伊織の感情が流れ込んでくる。
 ─なぜ俺以外に笑いかける?─
(ここれ、は?)
 ─俺以外に愛想を振りまくな、腸が煮えくり返る!!─
(もしや嫉妬?イオリが、シット?)
 セイバーは口吸いのせいで力が入らない腕に力を込め、伊織の胸を叩いた。
「っ、はぁっ、なんだやめてほしいのか?」
「ケホッきみ、嫉妬してるのか?」
はぁ?」
 伊織はセイバーの言の葉に絶句した。セイバーは嫉妬という言の葉を口にしたのだ。
「し、嫉妬?俺が?誰にだ?」
「私が、スケノシンと話しているのが気に入らぬから、怒っていたのだろ?それスケノシンに嫉妬していた、ということではないのか??」
「はっはぁああ!?」
 伊織はセイバーの言の葉に顔を真っ赤にし、口元を抑えながら後ずさりした。
「お、俺が嫉妬!?そ、そんなはずは今までに斯様な感情など
 理解が全く追いつかず、伊織はその場に座り込んでしまった。そんな伊織の様子を見ていたセイバー、思わず吹き出してしまった。
「ぷっぷははははっ!!」
「笑うなセイバー!!」
 伊織は未だに顔を真っ赤にしながらセイバーに吠えた。しかし、伊織が嫉妬したことがよほど面白いのかセイバーは腹を抱えながら笑い転げるだけだった。
「だっ、だってきみが、感情を表に出さぬきみが、嫉妬だなんてっあははははっ!!」
「面白くもないだろ、こんな醜い感情など
「何を云っておるのだイオリ、私は嬉しいよ」
「はぁ?」
 セイバーは笑い過ぎて涙が出たのか、涙を拭いながら伊織の前に屈んだ。そして、花を咲かせたかのような笑みを浮かべた。
「それだけ、私に惚れ込んでいると見た。だから、スケノシンらと話しているのが面白くなくて嫉妬した。うむうむ私は嬉しくてたまらない!!」
 伊織はあまり納得してないのか、不服そうな表情を浮かべながら「自惚れすぎだ」と返した。
「仮にそうだとしてもいい気分にはならぬだろ?」
「そんなことはないぞ私は、きみが好きだからな」
 そう云いながら、今度はセイバーから伊織に口づけしたのだった。

 ◇

と感情を表に出さぬイオリが、初めて嫉妬心を剥き出しにしたのだ」
「マジかあの、宮本さんが
 所変わってここはカルデア。カルデアにいる伊織にはセイバーことヤマトタケルとの記憶がないが、あの頃のように共にすごしているが現在伊織はシミュレーションルームに引きこもり中。
 暇を持て余したタケルは最近カルデアに来た藤堂平助とチョコケーキを食べながら、あの時の伊織が嫉妬心を丸出しにした時のことを話していた。藤堂はカルデアに来て何かと伊織とタケルの痴話喧嘩に巻き込まれてしまうのだが、主に甘い物関係でタケルと意気投合しこうして話し相手になっている。
 剣ばかりに集中する伊織の意外な一面を知り、藤堂は絶句していた。
「だっ、だってあの人あまり感情的にならない人じゃないですか?剣のこと以外は
「それはそうなのだがだからこそ、少し寂しいと思うのだ」
「寂しい?」
「ああ私の、自惚れだったのかなって
 タケルが伊織に複雑な想いを抱いているのは藤堂も知ってる。だからこそタケルにあまり強く云えないでいるのだ。すると藤堂は何かを思い出したかのように「いや、待てよ」と云い出した。
「どうかしたか?」
「いや僕、宮本さんのとんでもない表情を一回見たことがあって
「そ、それはいつだ!?」
「ここ最近です確か、僕とタケルさんがチョコアイスの話で盛り上がってる時に
 と云いかけた時、「セイバー」とタケルを呼ぶ声がした。呼ばれたタケルが振り向くと何故か不機嫌な伊織がいた。
「イオリ、まだ鍛錬してたのでは?」
「今日は打ち切られた、部屋に戻るぞ」
「あ、ああではなトウドウ」
「は、はい
 タケルは未だに不機嫌な様子の伊織と共に食堂を後にした。藤堂はゲッソリとした表情を浮かべた。
「うわっ僕、嫉妬の的になってんのかよ」

 *****

 部屋に戻るなり、タケルはいきなり伊織に畳へ押し倒されてしまった。
「いたたっ何をする、イオリ!!」
何をする、か。やはり無自覚のようだな」
「何が云いたいのだ
 伊織は部屋の鍵を閉め、そのまま畳に倒れ込むタケルの上に覆いかぶさる。
「えっ、ちょっ
「─なら解らせるまでだ」
 伊織はそのまま乱暴にタケルの唇を塞ぐ。まるであの時、助ノ進と話してただけで露骨に嫉妬したあの時の伊織のように。
「んむッ!?んうッふぁッんんッ!!」
「んんはぁっ、どうしてお前はお前が知る俺と比べたがるんだ」
えっ?」
「っ腹立たしいんんッ」
「ちょっ、やめっ、ふぁああッ」
 伊織は相当腹の虫の居所が悪いのか、タケルの首筋に跡を付けた。そのまま耳元に顔を寄せ
では、お前の相手にならぬのか?」
 と本音を口にしたのだ。タケルは伊織の本音に顔をポカーンとした。しかし、言の葉の意味を理解した瞬間タケルは吹き出してしまった。
「ふっふはははははっ!!」
「笑うなセイバー!!俺は怒ってるんだぞ!?」
「だっ、だっていくら記憶がないとはいえ、自分に嫉妬する奴が何処におるのだ!!可笑しすぎて笑いがあはははは!!」
 笑っているはずなのに、何故かタケルの笑い声は震えている。よく見ると涙をボロボロと流していた。
「えっセイバー?」
「っグズッ、自惚れ、ではなかった
(良かったイオリも、私と)
 急に泣き出したタケルに先ほどまで怒りを顕にしていた伊織はオロオロとし出した。
「わ、悪かったからだから
「っきみが怖くて、泣いてるのではない
 タケルは身体を起こして、慌てふためく伊織の唇に自分の唇を重ねた。
きみのその気持ちが、嬉しくて泣いてるのだ」
 タケルは伊織に抱きつき、伊織に笑いかける。その笑みは伊織が初めて嫉妬心をぶつけてきた時に見せた花を咲かせたかのような笑みだった。

 後日、藤堂に嫉妬の的になったと完全に誤解された伊織は藤堂とタケルにカルデアの食堂でも一番デカいチョコレートパフェを奢る羽目になりましたとさ。