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望月 鏡翠
2025-12-07 01:47:26
896文字
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日課
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#1929 ミノーフィッシュの男たち7
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
そこからどんな因果を経て、貴族なんぞに名を連ねることになってしまったのか。
トルガ自身にもわからない。
不可思議な因果と、時代の巡り合わせだ。
運命だったと言ってもいい。
リュネストの屋敷で、トルガに注がれる視線は、好奇心と敵意だった。
貴族の連中は、平民出身の主人を認めていない。これから先、幾度となく似たような目を浴びることになるだろう。
海の向こうからきた偽の貴族。
ただ、資金力と後ろ盾となる国の大きさによって玉座を求める外国勢力。血筋による正当性がなかったとしても、無視できない。そのくらい力を持つ家であり続けなければならない。
ジョアンはトルガを嫌う態度を隠しもしないので、御し易くはあった。態度を明らかにしない相手に、言いがかりのような咎めの言葉を向けるわけにはいかない。水面下で敵対的され続けるよりは、一度決定的に命令に違反するか決裂するかしてもらって、トルガの側の正当性を突きつけて頭を押さえつける方がいい。
その夜は、分岐点だったのだ。
このまま、貴族としてやっていくことができるのかどうか。生きる道がバンデイアにあるのか。
ギリギリの賭けに、トルガは勝利した。
夜の暗さで気づかれてはいないだろうが、裏門から外に出るとき閂を外すては震えていた。外に出るとき、夜の路地には思ったより大きな音が鳴り響いた。
相変わらずそこは静かだったが、誰かに見咎められる前に足早に馬車まで戻った。音に気づいて路地を気にする人間が、誰もいないことを期待した。
裏門に直接つけたら、ジョアンに気づかれる可能性があったから、少し離れたところに馬車を待たせていた。
馬車に乗り込むとき、最後の最後で気が緩んだ。ブーツの先が滑り、脛を打ち付け、倒れ混むように車室に入った。
足を滑らせた程度、大したミスではない。エリセオが見て笑う程度だ。
トルガは自分に言い聞かせる。
大したことではない。大丈夫だ。今は夜だ。誰も見ない。
扉を閉める。
出発の合図で内側から馬車を叩いたが、それ以降は椅子に座り直す気力もなく、馬車の中に転がると天井を見つめた。
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