ぐるさん
2025-12-06 23:46:30
1899文字
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12.6 ふみりかワンドロ【ロマンチック】

ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2025.12.6お題をお借りしました。

「ふみやさん!て、手を繋ぐ時は一言を声をかけて下さい!!」
 
「えっ、ちょ、待っ、急に抱きつかないの!!」
 
「き、きききききキスッ!?そ、そんなふしだらな事、みだりに口に出さない!!」
 
 我ながら、雰囲気やムードの類が皆無の人間とよく付き合えてるなと思う。

 手を繋ごうとすれば真っ赤になって騒ぎ出し、後ろから抱きつけばジタバタと暴れて逃げ出し、キスしたいと告げれば笛を吹いて怒り出す。

 改めて言葉にすると、俺と理解は本当に付き合っているのかと思える程だ。

 だけど理解は俺の事を好きだ。現に、理解は怒ったり恥ずかしがったりしても俺の事を拒絶しないし、むしろ受け入れようと努力はしている。

 俺もそんな理解の事が好きだし、そもそも理解がこうした事に耐性が無いのは承知の上で付き合っている。

 と言うか今更普通になられても困る。きっとその方が付き合いやすいと言われても、それは俺の好きな理解じゃない。

 だから、このままで良い。ムードや雰囲気が無くたって、俺達らしくあれば十分だ。
 
◇◇

「ん?理解?」
「ふみやさん?」

 新作スイーツ巡りからの帰り道、駅前で偶然理解と会った。

 P!

「こら!もう午後五時を過ぎています。門限はもう過ぎていますよ」

 そう言えばいつの間にか早くなってたな、門限。

「でもここで理解に会うって事は、理解も門限破ってるよな?その感じだとパトロールでもなさそうだし」
「私は、その、仕事が、ちょっと……

 流石に自覚があるのか、理解はモニョモニョと口ごもる。

「まぁ、わざわざ休みの日に呼び出される位のトラブルだし、仕方ないかもしれないけど」
「本当にすみません……

 本来なら、今日は一日理解と出かける予定だった。だけど朝から呼び出されてバタバタと職場に向かった理解から早々に「今日は無理です」の連絡が届いて予定を急遽変更、今に至る。

「まぁ、せっかくここで会えたし、ちょっとだけ寄り道しようよ」
「えっ!?」
「まぁまぁまぁ。ちょっとだけ、ちょっとだけ」
「ちょっと、って背中押さない!危ないでしょ!」

 俺を叱る理解の背中を押して、家とは反対方向の大通りへと向かう。スイーツの情報を集める際に見たSNSの情報通りなら、確かここにはこの時期限定のイルミネーションがある筈だ。

「わぁっ……!」

 通りに着いた瞬間、理解の口から歓声が零れる。

 その横顔をチラリと覗いた瞬間、思わず息を呑んだ。

 すっかり日が落ちた空、その暗さを跳ね返す様に輝くイルミネーション、その光に照らされる理解の姿。

 有り体に言えば、綺麗だと思った。

「すごい……!反対側の通りがこんな風になっているなんて知りませんでした!」

 俺を注意してた時のしかめっ面が嘘のように、理解はキラキラとした笑顔を俺に向ける。

「せっかくだからさ、ちょっとだけここを見てから帰ろうよ」
……はい!」

 そのまま、今度は理解と並んで歩き出す。

 物珍しそうに辺りを見回す理解を眺めながら歩いていると、周囲にも似たような連中が沢山居る事に気づく。

 そういえばイルミネーションとか、冬の夜のデートスポットの定番だったな。

 基本的に理解は夜に出歩く事を良しとしないから、考えた事も無かった。

 ……俺達は今、周囲からどんな風に見えているのだろうか。友人?家族?恋人?他人の頭の中なんて、どれだけ考えたって分からない。

 分かるのは俺達は今、ここに居る幸せなただの二人組の内の一つだ。

 寒空の下、ありきたりでロマンチックな時間を楽しむ一般人、いや凡人かも。

 今更普通なんて要らないと思っていたけど、こういう時間も悪くない——

 PPPPPPPPP!!

「コラァッ!そこ、ポイ捨てするな!」
「理解、ここ往来だから」

 PPPPPPPPP!!

「ここは路上駐車禁止エリアだ愚か者!!」
「理解、ボンネットぶっ叩き二回目はマズいって」

 理解のよく通る笛の音と声に、わらわらと周囲の人間が集まってくる。

……逃げよう、理解」
「ハァッ!?まだ私の話は終わってないですよ!!」
「いいから」

 ゴネる理解の手を引いて、一目散に通りを後にする。

 徐々に遠ざかる喧騒と明かり、それと反比例するように強くなる理解の語気。

 さっきまでは世間一般で言う、普通のデート的な感じだったのにな。

「やっぱ俺達、ロマンチックとかガラじゃないな」

 小さな笑みと一緒に零れた言葉は、そのまま足音にかき消された。