甲板に出ると、冷たい風が首筋を撫でた。リコとマスカーニャとブリムオンは、一緒になってブルブルと震える。すると横から声をかけられた。その主はロイだ。
「リコ、寒そうだね」
「うん…ロイは平気そうだね?」
「へへ、今これ抱えてるからさ〜」
得意げに言って、ロイはリコの方にお腹を向けた。見てみるとロイの腕の中には楕円形の容器がある。
「湯たんぽ?」
「そうだよ。一人で旅してた頃に夜肌寒い時があったから買ったんだけど、あったかくて最高だよ」
「へぇ〜!私、湯たんぽって使ったことないんだ。見るのも初めてかも」
話しながらリコはロイの隣にしゃがみ込んだ。ロイのそばにいるラウドボーンの体にマスカーニャとブリムオンが近づいて暖をとっていると、ロイはリコに湯たんぽを差し出した。
「じゃあせっかくだし使ってみなよ!お湯が入ってるから低温やけどには気をつけてね」
「ありがとう。わ、ほんとにあったかい…」
「でしょ〜?これで布団に入ったら全身ポカポカだよ」
「いいね…今度私も買っちゃおうかな…」
すっかり湯たんぽに魅了されているリコを見てロイが微笑んだ。するとまた冷たい風がさーっと吹いた。マスカーニャとブリムオンはラウドボーンに密着し、リコもまた首を縮めた。
「でもやっぱり外だと寒いね…」
「そうだね…あ、そうだ!リコ、ちょっとじっとしてて」
そう言うと、ロイはリコの背中に回った。そして、言われた通りじっとしていたリコの肩の上から手を通し、リコを包み込んだ。
「どう?リコ。これなら背中もあったまるし、首に来る風も防げるでしょ?」
「……」
「リコ?」
「ふぇ!?あ、そ、そうだね!あったかいね!!」
むしろ暑い。リコの頬に雫が伝っていた。突然抱きしめられた事実を理解するのに時間がかかったが、急激に速くなった鼓動がリコの全身に血液を巡らせて体温を高めている。ロイの声はリコの耳元に直接、優しく、囁かれる。顔も耳も赤くなって、リコは何も考えられなくなっていた。
「しばらくこうしてよっか」
「…うん」
「湯たんぽ冷めてきたら言ってね」
「…うん」
「そういえばリコはなんで甲板にきたの?」
「…なんだっけ」
「…リコ、なんかぼーっとしてない?」
「…してない」
「ほんとに?」
「…わかんない」
変だ。とやっと感じたロイはリコを抱きしめる手に少し力を入れて、頭をぐっと前へ押し出した。すると紅潮し、汗でいっぱいになったリコの顔が見えた。驚いたロイは正面に回ってリコの両肩を掴んだ。
「え!?リコ、大丈夫!?」
「…だいじょうぶ」
「絶対大丈夫じゃないよ!?と、とりあえずモリーのとこ行こ!」
マスカーニャとブリムオンが見つめる中、ロイはリコを抱え上げて医務室に走った。マスカーニャとラウドボーンが少し心配そうにしたのに対し、ブリムオンは少し呆れ気味にため息をついた。ロイは急げ急げと医務室に向かう。なおモリーに事の顛末を話して呆れられるのはまた別のお話。
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