白殊皎(しらよし こう)
2025-12-06 20:00:00
3910文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

輝く星が、眩しくて

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
この作品はぐだ鯖WEBオンリー『ボイラー室横より愛をこめてW 』に連動して、白殊が勝手に考えた【白殊に歳勇小説リクエストを投げつけよう】企画にてリクエストいただいたものになります。

◆リクエスト内容
「両思いになったものの、好き過ぎて大切にしたくて素人童貞になってしまう土方さん×そんな土方さんが可愛くて仕方ない近藤さん」

近藤さんにとってはどんな土方さんもきっと可愛くて可愛くて可愛いんだと思います!
周囲の見守り隊がすごいことになってしまいました。
山南さんに藤堂くん、いやなら逃げてもいいと思うよ……。

 ずっと片恋だと思っていた。
 すぐ傍にいても、この恋は秘めるべきだと思っていた。
 共に走り、背を預け預けられ、手を伸ばし伸ばされ、その立場で輝く星を支えられるのなら、これ以上はないと。
 人知れぬ劣情に身を焼いた夜もある。
 決して綺麗な思いだけではなかったけれど。



 ずっと片恋だと思っていた。
 いつも傍にいてくれた、自分のどこにそんな魅力があるのだろうと思うくらい。
 自分を高みに押し上げるのだと、それこそが自分の夢なのだと常々言ってくれていた。
 その憧憬がどこから来るのか知りたくても、その一歩は踏み出せずにいた。
 聞いて、失望されて、離れてしまうのが──怖くて。



──奇跡の召喚。
 カルデアでは近藤勇の召喚はそう言われている。
 自分が座に刻まれた最大の理由・新選組を真っ向から否定し、その存在を消し去ろうとした彼が、その新選組の局長として召喚に応じることはないとされてきたからだ。
 だが、いま近藤はここにいる。
 かの京の特異点でマスターに誠の旗を託したことで再び近藤は起つことを選んだ。
 その誠を示すために。


 そして、それは近藤の傍にあることを求め、願い、走り続けた土方歳三にとって、なによりも替えがたい福音となった。


「歳。少し話さないか?」
 召喚から少し経って、土方は近藤にそう声をかけられた。
「話?」
 おかしな事を言う、といった顔で土方は聞き返す。
 改まってそんなことを言わなくても、常々傍にいて話はしているじゃないかと。
「それとは、別の話」
 確かに、カルデアの中の話とか日常生活の方法とか、そういった話はよくしている。
 近藤が話したいのはそういった話ではなく──
「いいぜ。あんたの部屋に行こう」
「うん」
 いま使わせてもらっている部屋に入り、ロックをかける。
 大した家具はないので近藤が寝台に腰をかけると土方は備え付けの椅子を持ってきて近藤の向かいに座った。
「歳。私はずっとおまえに言ってなかったことがあるんだ」
「言ってなかったこと?」
「私はお前のことが好き──いや、違うな。そう、お前に恋をしている」
「えっ!?」
 その言葉を聞いて土方は呆気にとられた顔をした。
 あまりの突然の、しかも直球過ぎる告白。
 嬉しいだのそれ以外の感情だのの以前に、頭でも打ったか、変な状態異常に罹っていないか疑ってしまうくらいだったから。
「──こ い」
 一音一音区切って聞き返す。
「うん」
 近藤は土方の反応にちょっと唐突すぎたかと思いはしたが、もう口に出してしまったので引き返せないと頷いた。
「──近藤さん」
 少し考える顔をしたあと、土方は改めて呼びかけた。
「あんた、本気か?」
「私が伊達や酔狂で、そんなことを言うように思うかい?」
「いや……思わねぇけど……。その……話題が話題だけに……
 ふい、と土方が視線を逸らす。
 その顔はみるみるうちに頬から首、耳の上までほのかな桃色を帯びる。
 それを見て、近藤は内心ほっと息をついた。
──少なくとも嫌われてはいない。
………………
 土方はしばし黙って天を仰いだり床を見つめたりしていたが、やがて顔を近藤の方に向けた。
「それは、俺もだ、と言ったら信じてくれるか?」
 鬼とも恐れられる男が、乙女のように頬を染め、照れ臭そうに問いかける。
 それを聞いて、近藤は自分の表情が緩むのを抑えられなかった。
「歳!!」
 寝台の上から椅子の上の土方に飛びつくように抱きつく。
「近藤さん、あぶねぇ」
「だって、こんなに嬉しいことはないじゃないか! 私達は両思いだという事だよ!!」
 土方の首を抱え込み、その癖のある髪に頬をすり寄せる。
「そうだな……
 土方は口元に普段からは想像もつかないような笑みを浮かべ、近藤をそっと抱き返した。



──と、そんな一大大告白があったのが数日前だったらしい。
「距離、少しは近くなった気はするけど、元々が近いからわからないよ……
 食堂で二人を見かけた藤堂がぽつりと他の新選組の面々に洩らした。
「珍しいが、同感だぜ。もっとケダモノだと思ってたんだが、案外大人しいじゃねぇか」
 永倉も意外そうに言って茶を啜る。
「ケダモノって……。まぁ、たしかに同意。副長案外純情だったんですねぇ」
 何故か、新選組の仲間内には近藤が土方に告白し、土方もまた近藤に応えたということがバレバレになっていた。
「いまだにお手々繋いでも出来てないみたいですよー。鬼の副長が聞いて呆れちゃいますね」
 誰が知って持ってきたかはさておき、ここにいるメンツは誰もが呆れている。
 生前から二人の距離感で付き合っていなかったのは慣れているが、奇跡の巡り合わせでくっついたのだから、さっさと進展しろという感じなのである。
 永倉曰くケダモノ、な副長は未だに局長と性的な意味のない同衾も出来ていないようだ。
 別に、どっちが上だとか下だとか閨事情を根掘り葉掘り聞くつもりもないし、そんな趣味もないが、二人に対してはさっさとやっちまえ、が隊士たちの総意のようだ。



「歳……私はいつでも心の準備は出来てるぞ?」
 ある夜、その日も近藤を部屋まで送っていった土方が自分の部屋(隣)に戻ろうとすると近藤がそう言って引き留めた。
「近藤さん……
 いやその、といった表情で土方は目を逸らす。
 告白をして、互いの想いを確かめたその日のうちに、いろいろ話はした。
 それにはどっちがどっちを抱くか、という話題もあったし、ちゃんと決めた。
──結論は、土方が近藤を抱くと。
 別に殴り合いをして決めたわけではない。
 殴り合いだったらおそらく土方が負けている。
 近藤がそうしてくれと言ったのだ。
 土方の百五十年分の想いを受け止めるから、その証を身に刻んでくれ、と。
「何度も言うが……それだけが想いを交わす方法じゃないだろう? もちろん、嫌なわけじゃねぇ。でもな?」
 土方は近藤と額を合わせてその瞳を見つめる。
「俺は、あんたを何よりも大切に思ってる。そう簡単に……手は出せねぇ」
「そうなのか……
 表向きはしゅん、とした表情をした近藤だったが、内心は嬉しくて仕方がなかった。
 自分の事をこんなにも大切に思ってくれる人間がここにいる。
 しかもそれは、自分の可愛い可愛い弟分兼恋人。
 許されるのならカルデア中に言いふらして歩きたいくらい──。
「わかった……。でも、本当に私はいつでも準備は出来てるから」
 近藤は自分から土方の鼻先に唇が触れるか触れないかの距離まで口を近づける。
「おやすみ、歳」
 土方が夜闇にもわかるくらい真っ赤になって顔を伏せたのを確認して部屋に入っていった。



「あぁ……ッ。くそ……情けねぇ……
 近藤の部屋の扉が閉まると、土方は一人嘆息した。
 ずっと抱いてきた想いが成就したのだ、もうちょっといろいろとスマートに出来ないものかと。
 あの状況なら、むしろ自分の方が近藤に口吸いの一つでもして納得させるべきだったのに、結局近藤に先を越されてしまった。
 欲も人一倍ある。
 男同士のアレソレを知らないわけではない。
 でも、本当の本当に大切にしたいのだ。
 なし崩しに事に及ぶようなことはせず、しかるべき時にしかるべき手順を踏んで、怖い思いも痛い思いもさせずに愛おしみたい。
 ただ、行動に踏み切れないだけで頭の中ではいろいろ考えているのだ。
 すこし凹んだあと、土方は自分の部屋に戻った。



「またですかぁ……
「そうみたいだね……
 なんで自分はこんなことをしているんだろう、といった表情の山南は沖田の言葉に深ーく溜息をついた。
「あ、山南さん。もういやだ、とか思ってるでしょう。だめですよ、これが今の新選組の出歯亀しにばんです!」
……行動に移す移さないは土方くんの心一つでいいじゃないか……
「だーめーでーすー。やっとくっついたんですから、せめてカルデア内をお手々繋いで歩くくらいしてもらわないと、惚れた者同士くっつけることも出来ないのかと新選組の名が廃ります!!」
「なんでそこまで……
 しんなり、と音がしそうな顔で山南は再び溜息をつく。
「山南さんは、近藤さんの幸せな顔、見たくないんですか?」
 沖田は唇をとがらせて山南に詰め寄る。
「そんなことはないよ。近藤さんには生前むかしの分も幸せになって欲しいからね」
 思いが通じただけで、それは幸せなんじゃないかな? と目で訴えてみたりもするが、沖田は許してくれなかった。
「私達が見守って応援しないと、土方さん今生でも手を出さないまま終わりますよ!」
「そうかなぁ……納得してるなら別にいいんじゃ……
「よくないんです!」
 夜なので声を潜めつつ二人並んでカルデアの廊下を歩く。
「よ、沖田ちゃん。ご収穫は?」
 廊下の先では明日の当番の斎藤と藤堂が待っていた。
「ゼロです! 今日も別々のおねんねでした!!」
「ありゃりゃ、本当に副長、大丈夫かねぇ」
 果たして、このデバガメはいつまで続くのか。
 できるだけ早く終わって欲しい、と沖田と斎藤のやりとりを聞きながら山南は切実に思った。
「べつに、僕は土方さんのことなんかどうでも……
「はいはい、明日も頑張りましょう。んでもって、副長にも頑張ってもらいましょう」
 山南とは別の方向で遠い目をしている藤堂の肩を斎藤がぽんぽんと叩いた。


 新選組の戦いは、始まったばかり──かも?