三毛田
2025-12-05 23:03:29
1062文字
Public アドベント25
 

05. 笑顔の裏側

5日目
胡散臭い笑顔

 誰にでも向けるその笑顔と、俺や仲間へと向ける笑顔が違うと気づいたのはいつだったか。
 買い物中の三月を待つ間、俺と穹は近くの店で買った飲み物と軽くつまめるものを手にベントに座っていた。
「ん。これ美味い」
「追加で買ってくるか?」
「出来立てがいいから、なのが戻ってきてからにする」
 その言葉で、彼女にも食べさせたいのだと悟る。少し前の俺だったら、勝手にしろとバッサリ切り捨てていただろう。
 しかし、彼の優しさに触れてから、二人にはなるべく優しくしようと心がけるようになり。
「丹恒、後一口だけど食べるか?」
「お前がくれると言うのであれば、貰おう」
 口を開けると、入れてくれて。
 意外と美味かったので、俺も買おうと咀嚼しながら考える。
「女子の買い物って時間がかかるんだな」
「選ぶものが多いからだろう」
「丹恒は、ないのか?」
「書店では、気づくと時間が過ぎていることはある」
「女子にとっての服屋が、丹恒には書店ってことか」
「そうだな」
 幽囚獄を出て、列車に乗るまではどこかに寄ったりなどの余裕などなく。
 列車に乗ってからも、心の余裕がなかったから滅多に外に出なかった。外に出る時は、姫子さんの付き添いか依頼の時ばかり。
「ふ」
「ん? 何かいいことあったか?」
「お前のお勧めに、外れはないと思ったんだ」
「そりゃあ、丹恒に美味しいものを食べて欲しいからさ』
 ついてる。と言いながら、俺の唇を指で撫でて。
 ドキッとした。特に真剣な表情をしていたわけじゃないのに。
「あー! 外なのにイチャイチャしてる」
 少々大きな声で、俺たちを指差す三月。視線が向けられるからやめてほしい。
「丹恒。なのと待ってて。さっきのご飯買って来る」
「わかった。三月、ここに座れ。荷物は、俺の隣に。ほら、貸せ」
 穹が席を立つと同時に腰を上げ、三月から荷物を預かる。そして、彼女を座らせ。
「さっきのって?」
「穹が、お前が買い物をしている間に買って食べていたものだ。美味だったから、お前にも食べてもらいたいんだろう」
「丹恒も食べた?」
「一口だけ」
「へー」
 普段ならば、自分も食べたいと騒ぐはずなのに。
「なに? ウチの顔に何かついてる?」
「何もしていないのであれば、それはない」
「そっか。あー……見てよ。穹、捕まってる」
「うさん臭さが表に出ているな」
「ね。裏があるように見えるよ。作り笑いなのに」
 俺もそれは思った。どうやら、彼女も同意見のよう。
「ウチらの前であの笑顔にならないだけいいよ」