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望月 鏡翠
2025-12-04 22:45:03
1012文字
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日課
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#1925 ミノーフィッシュの男たち3
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
馬車の小さい扉を開き、もう少し親しく話してみたかった。
トルガは有象無象の中からエリセオを選び取って、侍従に選んでくれた。それと同じように、エリセオも彼のことを気に入っていたのだ。平民から貴族になった彼に学べば、同じように貴族になることができるかもしれない。
他の貴族の家で働いていたら、絶対に抱くことができないであろう夢を、ここでなら見ることができるのだ。
もし、貴族になったら。そうやって妄想をして遊んでいると、リュネストの屋敷の裏門が開いた。
静かな夜だったので、閂を外す音は少し離れたところに留めていた馬車にも届いたのだ。どうやって声をかけたら気に入ってもらえるのか、考えながらトルガが戻ってくるのを待った。
想像の中では、彼は戻ってくると待たせて悪かったと一声かけて、労を労ってくれる。そして少し話したいというと、にこやかにそれに応じてくれるのだ。馬車の中か、あるいはもっと親しげに御者席の隣に座る。そして宿に戻るまでの長旅で、平民だった頃の辛い生活をして互いに共感をし、そこから抜け出した貴族としての生活を羨むのだ。
トルガは足早に帰ってきた。
しかし、そこから先は一つだって頭の中で思い描いた風にはならなかった。彼は一言も発さず慌ただしげに、馬車に乗り込んだ。足をかける場所を用意する必要すらなく、飛び込むように中に入っていった。
馬車が内側からノックされる。
二人の間に生じたコミュニケーションはそれだけで、一度も扉は開かなかった。
物足りなく感じたものの、これが仕事だ。仕方がなく馬車を出した。
始まりから、奇妙な外出だった。屋敷を出発したのは今朝方。そして、宿に到着したと思ったら、トルガは宿を抜け出してすぐに馬車を借りてくるように命じた。それなら乗ってきた馬車で戻るか。辻馬車でも呼べば良いのにそうはしなかった。
これは何か事情があるのだろうと、ピンときた。
また女のところにこっそりといくか、仕事を抜け出して何かをしにいくに違いない。貴族というのはこんなことばかりしているのだ。
だが黙っておけば、この間の酒場のような、素敵な経験を分け与えてもらうことができるかもしれない。
夜通し馬車を操って宿まで往復するのは辛かったが、仕方がないと耐えられた。
「トルガ様、今日はどなたと楽しまれたんですか」
声をかけてみたが、聞こえなかったのか返事は戻ってこなかった。
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