三毛田
2025-12-03 21:26:30
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95 095. 言葉がなくても

95日目
伝わる時もある

 言葉を交わさずとも、視線だけで何を伝えたいのかわかる。
 そんな関係に憧れる。憧れていた。
「難しいよな〜」
「言葉を交わし、コミュニケーションを取れるのが人だからな。相手にわかってもらおうだなんて考えは、傲慢だ」
「ですよね〜」
「だが」
 言葉を区切り、丹恒は俺の頭を撫でる。そんな彼の表情は優しく、慈愛に満ちていて。
 胸がキュンキュンする。
 俺の恋人最高。
「戦闘時は、視線だけで会話ができるといいとは思う」
 でも、こういうところは武人だ。
 もうちょっと甘い展開を期待した俺が悪かったよ。反省する。
「なんだ?」
 俺の視線を感じたのか、頭を撫でる手を止めてしまう。ので、グイグイ頭を押し付けると、再開してくれた。
「今のは分かりやすいな」
「だろ〜?」
「俺がお前を好きだからわかったのであって、他の人間に同じことを求めるな」
「丹恒にしかやらないから、大丈夫」
 ドヤッとしながら告げるけど、疑うような視線を向けられてしまう。なんでだよ。
 俺をこうやって甘やかしてくれるのは丹恒だけだし、甘える相手も丹恒だけだ。
 それを伝えても、あんまり伝わらない。
 でも、それに関して不満はない。だって、丹恒だから。
『穹。それは、説明になってないよ……
 なのに説明したら、そんなことを言われたのはつい最近。
 本当のことなのに、理解してもらえない。
 けど、それでいいのだ。
「丹恒のことは、俺だけが知っていればいいんだから」
「またお前は……
 ちょっとだけ呆れているけれど、馬鹿にしたり突き放したりしない。
 それが丹恒の優しさだ。
「丹恒、好きだ」
……ああ」
 小さく頷いた後。
「俺も、お前が好きだ」
 やっと聞き取れる声で。
 ゆっくり両手を広げると、恐る恐る腕の中に入ってくれる。
 言葉がなくても、これくらいなら伝わる。
 そして伝わった後、体を預けてくれて。
 嬉しいので、ぎゅーって抱きしめる。
「丹恒、ぎゅー!」
「ふふ。お前の抱きしめる強さは、気持ちがいいな」
 嬉しそうに笑い、俺の肩に顔を埋めてきて。
 うわ~。可愛い。可愛すぎるだろ。
「キスしていい?」
「いいぞ」
 俺が問いかけると、目をつぶって唇をこちらへ突き出す。
 可愛い。可愛い!
 我慢できずに、勢いよく彼にキス。
 このままベッドに連れ込んで、でろでろに甘やかしてお互い気持ちよくなる行為を。
 でも、そんなことしたら丹恒に負担をかけてしまう。
 それは本意ではないので、グッと我慢。
「丹恒、一緒に風呂入ろ」
「ああ。俺も提案しようと思っていた」