トウヤくんと夜中に散歩に行く

ネームレス|近いうちに続き書きたい

「あのさ、ちょっと出かけない?」
 
 深いブラウンの瞳を楽しそうに細め、トウヤは軽い調子でそう言った。
 意味がわからず顔を上げると、彼の腕の中にはしっかり二人分のアウターが抱えられていて、私が断るかもなんて事は微塵も考えていなさそうなことがよく分かる。

「一応聞くけど……どこに?」
「着いたら教えてやるよ」
 
 こちらの怪訝な顔なんて気にする様子もなく、トウヤが言った。
 それって結局、目的地不明のミステリツアーに誘われているようなものなんだけど。ポケセンに行くテンションでなんだかとんでも無い所に連れていかれそう……
 そんな疑念が、私の口から煮え切らない唸り声となり漏れていく。
 部屋の時計は丁度夜の九時を過ぎたあたり。昼間ならまだしも、こんな時間にあまりにも非現実的な提案で、眉間にしわくらい寄るというものだ。
 文句のひとつくらいぶつけてやろうと思ったけれど、部屋の入口で「早く」と手招きするトウヤを見たら、その文句はため息ごと胸の奥に沈んでいった。
 
「出かけたいなら一人で行ってきたらいいじゃん」
「どうせ暇だろ?まあ、騙されたと思ってさ」
 
 絶対後悔させないから。なんていうダメ押しのようなその言葉を合図に、トウヤはテキパキと戸締りを済ませていく。
 私がのそのそと身支度を整えていた短時間で、あっという間にリビングの電気を消すだけになっており、さっさと行くぞと強引に連れ出されてしまった。
 外に出ると過ごしやすい秋の空気が肌を撫でた。ずっとこんな季節が続けばいいのに。ぼやくような私の独り言は、暗闇の空へと吸い込まれていった。