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めめた
2025-12-01 18:38:54
1670文字
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20251201_種曲
確認してないので色々おかしいかもしれません。許してください。
黒い帽子の中学生が叫んだ。建物に囲まれているとはいえ、屋外でこれだけ響かせられる声とは凄まじいものだと感心しつつ、竜次は遠巻きにその震源地を眺める。
同室、兼ダブルスのパートナーが中学生をからかって楽しんでいる。三きょうだいの長男でもある修二は、歳下が可愛くて仕方がないのだろう。竜次は彼から、妹を可愛がっている話を何度か聞いたことがあった。
ドリンクを奪って口を付けた修二は、ひとしきり逃げた後で後方に投げた。飛距離が足りないということもなく、しっかりと追手の胸の真ん中に落ちてきたボトルは、ようやく持ち主の元へと返っていった。まだ憤りが収まらない、といった様子で修二の背を眺めている中学生は大きく深呼吸をして来た道を戻って行った。
その様子に、竜次はふと二年前のことを思い出す。崖の上の特訓を経て、平等院と共に革命を成し遂げた後だ。
自身を崖の上送りにした修二だったが、別れ際に言っていた事は嘘では無かったらしく、なんだかんだとちょっかいをかけてきた。単純に試合の誘いだったりもしたが、くだらない話をしてきたりのほうが多かった印象がある。
先程のからかい甲斐のある中学生のように、ドリンクを掠め取られた事も何度かあった。
修二のあれが、竜次に対して無くなったのは何時からだったか。記憶は定かではない。
最初の遠征の後だったか、その前からだったか。
竜次だって単純で実直な訳ではなく、次第に抵抗をしたりするようになったので、その頃から飽きたのかもしれない。
竜次は隣に置いてある二人分のドリンクを見下ろして、親指で顎髭を撫でた。
「はぁ〜やっぱおもろいわ、あいつ」
修二は遠回りをして、上機嫌で荷物の元に戻ってくる。お得意のセグウェイには乗らず走っていたから、額には汗が滲んでいた。
「あんまからかってやんなし。あいつ、本気になってんぞ」
「せやから、おもろいんやろ☆」
あのお硬い中学生には、修二のような柔軟さが必要なのだという気持ちも、竜次はわからなくもない。頼まれない限り庇ってやる義理も無く、しばらくは修二のしたいようにさせておくことを決めた。うるさいことには耳を塞いで。
「ほら」
タオルとドリンクを渡すと修二は素直に受け取って、空いた隣へと腰を下ろした。
「ありがと」
修二はタオルで額を拭い、手慣れたように首に掛ける。それから、ドリンクに口を付けた。飛び出した喉の一部が上下した。
「味、違うもんか?」
「真田のと? 一緒やで?」
唐突に聞いたが、修二は意図を読んで答える。中身が同じなのだ。余計なことをしていなければ、人によって味が変わることは無いのは承知している。
「いや、俺のと」
表情も声色も変えずに竜次が言えば、修二は取り繕う事も忘れて手にしたボトルを見た。
「竜次の
……
?」
「味、変わんねえんだろ。口もつけてねえし」
流石に、わざわざ自分の唾液の付いたボトルを差し出すのは気味が悪いだろう。騙し討ちのようなことをするなら尚更。
「竜次、嫌がってなかった?」
「二年前か? そりゃあ馬鹿にされたら腹立つだろ」
別に、回し飲みが嫌だったわけじゃない。知らない者相手でもなければ気にしない。けれど、イタズラが成功したように笑う修二を見て、うんざりしていたのは確かだ。
「馬鹿にはしてなかってんけど
……
そら悪い事したかもなぁ」
「なんだし今更、気にしてねえよ。お前も、俺のに手出さなくなったじゃねぇか」
「いやほんまに、嫌なんやろな、と思ってて」
「やっていいとは言わねえがな」
竜次はなんだかしおらしくなった修二の手からボトルを奪って、空いた手に正しく修二のボトルを渡した。
味の変わらないドリンクに口を付けて、竜次は腰を上げる。
「そろそろ休憩終わるし」
「あーあ。次もダブルス練なら良かったのに」
本当にそう思っているのか分からない態度で修二が言う。この後は筋トレとラリーだ。
追ってきて竜次の隣に並んだ修二を横目に見ると、拭いた筈の汗がまた額を濡らしていた。
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