【スカテイ山脈、麓の森。鬱蒼とした森に隠されるように、その集落は古くから静寂と共に生きていた。しかし、今は森も獣も騒めき、不穏な風が熱気を持って漂う。】
【炎の壁が広場を覆い、そこに集められた大人たちは手足を縛られ無造作に転がされていた。】
【大人たちの視線の先には、眠らされた子供たちが宙吊りにされ、餌を前に大口を開けた炎の妖異が真下で待ち構える。】
【翼の妖異たちは、その舞台装置を念入りに組み立てていた。中央では少女がひとり、楽し気にそれらに指示を出す。その表情は、来たる晩餐会を前に逸る心を抑えきれない子供のように、どこまでも期待に満ち、無邪気に笑っていた。】
(Sigma Siegfried) (/em は故郷の有様を目の当たりに、目を見開き足を止めた。
(Sigma Siegfried)
………、
…これ、
…は
…
(Rushlamia Lilith) (/em はSigma Siegfriedに気付くと振り返り、歓迎するように手を広げて見せた。
(Rushlamia Lilith) ようこそいらっしゃい、今宵のメインディッシュの到着ね!
(Rushlamia Lilith) おなかも空いて待ちくたびれちゃったわ。さあさ、はやく舞台に上がってくださいな!
(Sigma Siegfried)
……ッ
…テメェ、
…どこまで人をおちょくるつもりだ
…?
(Sigma Siegfried) (/em は斧の柄に手をかける、
…が、周囲の妖異たちの挙動を見て踏み出せずにいる。
(Rushlamia Lilith) 下ごしらえは完璧ね。あなたったら、恐怖と絶望に塗れた蒼白な顔をしているわ。やっぱり、メインディッシュはそうでなくちゃ。とっても、とってもおいしそう!
(Rushlamia Lilith) (/em はにこにこと笑みを浮かべながら、Sigma Siegfriedに歩み寄ってゆく。
(Sigma Siegfried) (/em は警戒しながらも一歩後退った。
(Rushlamia Lilith) ね。ここまで楽しかったでしょう?死が死を喰らって、疑いあって、贄を捧げて。あなたの罪の記憶を素敵にアレンジしてさしあげたの。
(Rushlamia Lilith) (/em は構わず間近まで近付き、下から覗き込むようにすり寄った。
(Sigma Siegfried)
……、
…
(Sigma Siegfried) (/em は表情を強張らせながら身を反らせた。
(Rushlamia Lilith) これからするのは最後の仕上げ。美味しく綺麗に飾り立てて、とっておきの舞台でいただきますをするの!
(Rushlamia Lilith) ああ
…やっと、やっと夢が叶うのね!わたくしの素敵な晩餐会
…!
(Rushlamia Lilith) (/em はSigma Siegfriedの頬へと手を伸ばし、恍惚とした笑みを浮かべた。

(Sigma Siegfried)
………。な、んで
…
(Sigma Siegfried)
……なんで、俺なんだよ
…
(Rushlamia Lilith)
…?
(Rushlamia Lilith) (/em は首を傾げてみせた。
(Sigma Siegfried) 食いてえだけならここまですることなかったろ
…。あん時だって、
……
(Rushlamia Lilith)
……。
(Rushlamia Lilith) (/em はぱちぱちと目を瞬かせ、口を開いた。
(Rushlamia Lilith)
…わたくし、強くて逞しくて勇敢な殿方がだいすきなの。
(Rushlamia Lilith) でもね、そんな頼もしい殿方に、恐怖に悲嘆に震えて絶望に塗れた味付けをしたら、もっとおいしくなると思わない?
(Sigma Siegfried)
……、
…は
…?
(Rushlamia Lilith) あの時のあなた方も、とってもきらきら輝いていたわ。勇ましくて、頼もしくて、優しくて、明るくて。焦がれるくらい眩しい光たちに憧れて、わたくし、どうしてもそれが食べたくなってしまったの。
(Rushlamia Lilith) (/em は目を伏せ、美しいものを思い出すように
(Rushlamia Lilith) でも
……最高の味付けで最高の晩餐を楽しんでいたのに、最後の最後であなた«メインディッシュ»を食べ損ねちゃった。
(Rushlamia Lilith) 何年経っても何度死んでも忘れられない、焦がれたあなたの光を、今度こそ甘い甘い絶望に塗りたくっていただく為に、ずーっと準備をしていたのよ。
(Sigma Siegfried)
…………。
(Sigma Siegfried) (/em は理解ができない、というように首を振った。こいつは何を言っているんだ
…
(Rushlamia Lilith) わからないかしら?
(Sigma Siegfried)
……わかんねえ、これっぽっちも
…そんなことの為に、
…あいつらも、皆
……?
(Rushlamia Lilith) そんなことじゃないわ。とっても大事なことだもの。
(Rushlamia Lilith) 捕らえた獲物は敬意を持って残さずおいしく調理していただくの。あなたたちだって大事にしている、狩りのマナーでしょう?
(Sigma Siegfried)
…………。
(Sigma Siegfried) (/em は会話の噛み合わなさに戸惑いと怒りを感じながらも、疲労と状況に飲まれてただRushlamia LilithBeliasを見下ろすことしかできない。
(Rushlamia Lilith) でもあなたったら、あれもこれも諦めて寂れてしまって、このままじゃきっとおいしくいただけない。だから味付けを工夫してみることにしたの。
(Rushlamia Lilith) (/em は一歩だけ下がり、集落が良く見えるようにと手で示した。
(Sigma Siegfried)
………。それが
…この惨状か?今までのも、全部
…?
(Rushlamia Lilith) ええ、もちろん!ぜんぶぜんぶ、今日の素敵な晩餐会のための下ごしらえだわ!
(Sigma Siegfried)
………ハ、
……
(Sigma Siegfried) (/em は痛む頭を抑えるように額に手を当てた。この現状が、失われたものが、すべて自分の為だったというのか。
(Rushlamia Lilith) (/em の手元に、翼の妖異が一振りの剣を落とす。
(Rushlamia Lilith) だから、これが最後の仕上げ。
――あなたの大事なものをあなたの手で壊す絶望を、もう一度わたくしに味わわせてくださらない?
(Rushlamia Lilith) (/em はSigma Siegfriedの手を取り、剣を握らせた。それは、かつて親友を殺した剣と同じ形をしている。
(Sigma Siegfried)
……ッ、
…
(Sigma Siegfried) (/em は拒絶するように後退ろうとするも、握られた手をふり解けずにいる。
(Rushlamia Lilith)
……かつては思い入れなんかないと見ないふりをしていた生まれ故郷でも、全てを失って戻ってきたあなたを、昔と変わらず暖かく迎えてくれた、今はどう?
(Rushlamia Lilith) 守りたいでしょう?見守っていたいでしょう?きっといつか生まれるあなたの子も、その先の未来も、穏やかであれと願うのでしょう?
(Rushlamia Lilith) (/em は剣を握る手を優しく包み、押し付けるように力を込めた。
(Rushlamia Lilith) だからあなたは、必要以上に踏み入らなかったのだものね。いつか形を失うことがあっても見ないふりをしていられるように、自分が責を負わないまま、美しい思い出のままでいられるように。
(Sigma Siegfried)
………、
…
(Sigma Siegfried) (/em は身をこわばらせたまま、視線を落とした。
(Rushlamia Lilith)
……薄情な人。彼らは確かに今を生きて、時間を歩んでいるというのに。
(Rushlamia Lilith) (/em は手を離し、Sigma Siegfriedの背後にまわって、背を押すように身を寄せた。
(Sigma Siegfried) (/em は身動きがとれないまま、ただ震えを抑えるように強く剣を握りしめた。
(Rushlamia Lilith) さあ、選んでくださいな。大人たちの目の前で子供たちを殺し、集落を存続させるか。子供たちを救って大人たちを殺し、無力な子供たちを世界に放り出すか。
(Rushlamia Lilith) この130年、選択と責任から逃げ続けてきたあなたに相応しい負債だと思わないかしら?
(Rushlamia Lilith) (/em は、ねえ?と見上げ、両手でそっと背を押した。
(Sigma Siegfried)
………。
……
(Sigma Siegfried) (/em は恐る恐る顔を上げ、周囲を見渡した。選択を急かすように炎が強まり、どこかの家屋が倒壊する音が聞こえる。
(Sigma Siegfried) (/em は広場の大人たちを見る。泣きはらした顔で、せめて子供たちを助けてと叫ぶ。彼らが生き残りさえすれば集落はやり直せる、やり直せるが
……
(Sigma Siegfried) (/em は吊られた子供たちを見る。年端もいかない彼らがたった少し残されたところで、生き抜くことができると思えない。生かしたところで、その先の責任が取れるだろうか。
(Sigma Siegfried)
……、
…
(Sigma Siegfried) (/em は動けないまま視線を揺らがせた。すぐ傍では妖異たちが待ち構えている。どちらかに一歩足を踏み出した瞬間、残された片方は
…
(Rushlamia Lilith) (/em は焦らされた子供のようにぐいぐいとSigma Siegfriedの背を押している。
(Sigma Siegfried)
…ぁ、
…
(Sigma Siegfried) (/em が剣に視線を落とすと、磨かれた刃に己の姿が映し出され、拒むように目を伏せた。
――ツケが回ってきたのだろう。失うことを恐れてあらゆるものから逃げ続けてきた末路がこの様だ。最良を招く為の手札が、自分には何ひとつないのだと悟る。
(Rushlamia Lilith)
……ほらほら、はやく選んでくださらない?このままでは大人も子供もまるごと全部黒焦げだわ。
(Rushlamia Lilith) (/em は待ちくたびれたように唇を尖らせると、周囲の妖異たちに合図を出すように手を上げた
――
【瞬間、何もないはずの空間からぬっと手が伸び、 Rushlamia LilithBelias の目を覆うように捕らえる。】
(Phalaena Minor)
――随分と楽しそうですね。わたしも混ぜてくれませんか?
(Rushlamia Lilith)
……え?
(Phalaena Minor) (/em は背後から抱き締めるように Rushlamia LilithBelias の耳元でささやきながら、小さく笑った。
(Sigma Siegfried)
…ッ、
…?
(Sigma Siegfried) (/em は聞きなれた声に驚いたように顔を上げ、振り返った。
(Phalaena Minor) (/em はチラリと Sigma Siegfried を見ると、そのまま二人を自身の領域へと引きずり込んだ。
―――――
(Rushlamia Lilith)
……っ
…!ここは
…
Phalaena Minorは頬杖をつきながら Rushlamia LilithBelias を見下ろす。
(Sigma Siegfried)
……、
…エナ
…?
…なんで
…
Sigma Siegfriedは解放されたように膝をつき、戸惑うように視線を向けた。
(Phalaena Minor) あまりギャラリーが多くても気が散ってしまうでしょう?なので、特別にご招待させていただきました
(Sigma Siegfried)
………、いや
…招待って
…
Sigma Siegfriedはそうじゃない、というように首を振った。
(Phalaena Minor) やだなぁ、せっかく気を使って決着をつけるための舞台を用意してあげたのに
…。それとも、あのまま翻弄されていたかったんです?
(Sigma Siegfried)
…………。
Sigma Siegfriedは聞きたいことは山ほどあるが、言葉が見つからず口を噤んだ。
(Rushlamia Lilith)
……。あなたったら本当に邪魔。わたくしが先に目をつけた獲物なのに
…
(Phalaena Minor) あら、130年間も放置してたものですから、てっきりもう興味がないのかと思ってました。意外と一人に執着するタイプだったんですね。
(Rushlamia Lilith) 手に入れる支度が整うまでは、迂闊に尻尾を見せないものだわ。あなただってわたくしと同じくせに。
(Phalaena Minor) えぇ、確かにわたしたちのやり方は似ていますね。
…でも、しっかりと準備をした割に、わたしからの干渉を許してしまうなんて
…。ちょっと詰めが甘いんじゃありません?
(Rushlamia Lilith)
……ぽっと出のイレギュラーに計画を見直さなければいけなくなったわたくしの身にもなってくださらない?折角いくつもフェイクを用意したというのに
…
(Rushlamia Lilith)
…意地汚さだけは一人前ね。そんなにこの獲物がおきにいり?
(Phalaena Minor) だって、せっかくの面白い玩具なのに、こんな退屈な死に方をされるのは癪でしょう?
(Rushlamia Lilith) まあ
…玩具だなんて、お下品なこと。食べ物で遊んではいけないと教わらなかったのかしら?
Rushlamia Lilithはねえ?と同意を求めるようにSigma Siegfriedに視線を向けた。
(Sigma Siegfried)
……………
Sigma Siegfriedは眉を顰めて俯いた。なんなんだこいつらは
…?
(Phalaena Minor) やだ、人間を食べ物だなんて
…。野蛮なのはどっちですか
…。そんなものより甘いスイーツでも食べることをお勧めしますよ。
(Phalaena Minor) かわいくきれいに飾り付けられたお菓子の数々
…。そのガワにはぴったりだと思いますよ。中身は伴ってないみたいですけど。
(Rushlamia Lilith) 甘いスイーツもいただくけれど、好みの味には敵わない、それだけだわ。ガワがどうであれ、わたくしたちにとっては、どれも等しくエーテルでしょう。スイーツもお肉もヒトも。
(Phalaena Minor) いかにも食べることしか考えてない妖異らしい発言ですね
…。これだから嫌いなんですよ。
(Rushlamia Lilith) 何様かしら。自分は周囲とは違うとでも言いたげね。
(Phalaena Minor) 少なくとも、人間を食らう害獣よりはよっぽど理性があると思いますけど。ね♡せんせい♡
(Sigma Siegfried)
……獲物だの玩具だの
…人をなんだと思ってやがる
……
Sigma Siegfriedは疲れたように重いため息をついた。
(Phalaena Minor) あらやだ、疲れ切って冗談も通じなさそう
…。
(Rushlamia Lilith) あなたのせいだわ。かわいそうに。味が落ちたらどうしてくれるのかしら?
(Phalaena Minor) ここまで振り回した張本人が何を言ってるんですかぁ
…
(Rushlamia Lilith) あなたが邪魔をしなければ、わたくしが大事に大事に美味しくいただいていたわ。
(Phalaena Minor) だって、あんな理不尽で一方的なワンサイドゲームなんて、退屈過ぎて見てられなかったんですよぅ
…。心配しなくとも、あなたが食べなくともわたしがちゃーんと連れて帰りますから。
(Rushlamia Lilith) 別にあなたを楽しませるつもりはないもの。他人のお作法に口を出さないでくださらない?
(Phalaena Minor) 別に関係のないところでなら好きにしたらいいと思いますけど、生憎そのまま放っておくとわたしには都合が悪いもので
(Rushlamia Lilith) 都合
…。これのこと?
Rushlamia Lilithはこれ、とSigma Siegfriedに視線を向けた。
(Phalaena Minor) そう、うまくやってたのに、横から勝手にちょっかいを出されては困るんですよぅ
…。ただでさえ怠惰なのに
(Rushlamia Lilith)
……。元々わたくしの獲物なのに
…
(Phalaena Minor) やだ、ずっとストーカーしてただけのくせにまだいうんですか?130年間お疲れさまでした。もう消えていいですよ。
Rushlamia Lilithはむす、と不満そうに唇を尖らせた。
(Rushlamia Lilith) 勝手に横から出しゃばってきたのはあなたの方じゃない。これだからあなたみたいな妖異って嫌なの。
(Phalaena Minor) ふふ、よく似ていますね。わたし達。全く嬉しくありませんけど。
(Rushlamia Lilith) 不愉快。一緒にしないでくださらない?
(Phalaena Minor) 仲良くしましょうよぅ。意地汚い妖異同士
…ね?
(Rushlamia Lilith) 仲良く獲物を分け合いましょうとでもいうのかしら?
(Phalaena Minor) いえ、全く。
…でも、元々わたしはあなたにどうこうするつもりはないんです。邪魔だなぁとは思いますけど、それだけ。
(Rushlamia Lilith)
……?なあに、それ。食事の邪魔をしただけ?
(Phalaena Minor) わたしはあなたと違って本人の意思を尊重するタイプなんですよぅ。
(Rushlamia Lilith) 本人?だれの?
(Phalaena Minor) もちろん、あなた達二人とも、です。
(Rushlamia Lilith)
………。食べ物の意思も尊重するの?律儀な人。それで?
(Sigma Siegfried)
…。
(Phalaena Minor) はい♡なので、公平に、どちらにも勝ち目があるように、舞台とルールだけをご用意させていただきました
Sigma SiegfriedはPhalaena Minorの真意をはかるようにじっと見据え、目を細めた。
(Rushlamia Lilith)
……舞台とルール、ねえ
…
Rushlamia Lilithは訝しげに眉を顰めた。
(Phalaena Minor) ここでは、これまでの積み重ねが力となります。つまり、頑張って生きてきた人はその分強い力を持つことができますよ♡というお得な空間です
(Rushlamia Lilith)
………ふぅん。それで?その力で勝負して勝てとでもおっしゃるのかしら?
(Phalaena Minor) いえいえまさか。それじゃあ頑張ってきた人だけが有利になってしまうでしょう?勝つ条件は二つ。勝負をして勝つか、その扉から領域の外に出るか。とてもシンプルでしょう?
(Phalaena Minor) どちらを選んでも構いません。あなた達の望むままに、どのような結果を得たいかで選ぶと良いでしょう
(Rushlamia Lilith)
……。つまり。ご馳走を得たければ勝つ必要があって。でなければ諦めて逃げるか選べということかしら。
Sigma Siegfriedは以前の領域のルールを思い出しながら、思案するように視線を巡らせた。
(Phalaena Minor) そうですね。得たいなら、戦う方が確実だと思います
(Rushlamia Lilith)
…………。
Rushlamia Lilithはめんどくさ
……と嫌そうにため息をついた。
(Rushlamia Lilith)
……はあ。興ざめしてしまったわ。こんなろくでもないゲーム盤の上で食事をしたって、おいしくいただけないじゃない。
Rushlamia LilithはくるりとPhalaena Minorに背を向けた。
(Phalaena Minor) それは残念。やっぱり趣味が合わないんですね
…。
(Rushlamia Lilith) 相容れないの。残念だけれど、お食事はまた今度ね。
Rushlamia LilithはちらりとSigma Siegfriedを一瞥し、残念そうに眉を顰めながら、横をすれ違おうとする。
(Sigma Siegfried)
……。
Sigma Siegfriedは目を合わせずに俯き、深く息を吐いた。
Rushlamia Lilithは足音を響かせながら、扉へと歩いてゆく
――不意に振り返り、蛇の眼をSigma Siegfriedに向け、手を伸ばした。
【ガコンッ、と音を立て、領域の天秤が傾く。瞬間、 Rushlamia LilithBelias の手を遮るように見覚えのある大剣が突き刺さった。】
(Rushlamia Lilith)
――…っ!
Rushlamia Lilithは驚き咄嗟に手を引っ込めた。
(Sigma Siegfried)
………。ったく
…そういうことかよ
…
Sigma Siegfriedは真意を理解したようにため息をつきながら、突き立てられた剣を支えにするように立ち上がり、その柄を握りしめた。
(Rushlamia Lilith)
……!
…なんで
…
Rushlamia Lilithは自らの魔法が発動する気配がないことに戸惑いながら、一歩後退った。
(Phalaena Minor)
……あぁ、あなたが重ねたのは罪の方だったんですね
(Rushlamia Lilith)
……どういうこと
…?罪なんて、わたくしは
……
(Phalaena Minor) 本当に?奪ったもの、何もありませんか?
(Rushlamia Lilith) 奪った?なにを?
…だって、食事のために命をいただくなんて、当たり前のことでしょう?
(Phalaena Minor) 食事のためと言うには、余計に奪ったものが多すぎたみたいですね。まさかここまでとは予想外です。
(Sigma Siegfried)
………。根本的に頭ん中が違ェんだな。
…そりゃ、話も合わねえわ
(Rushlamia Lilith)
……、
…ねえ、だって、仕方がないでしょう?やっとありつけたご馳走だったのよ。美味しく食べなきゃ獲物にだって失礼でしょう?
(Rushlamia Lilith) あなただって言っていたじゃない。妖異を恨んでなんかいないって、獣を狩って食べる本能を憎むなんて不毛だって。わたくしだって、本能に従っただけだわ
…!
(Sigma Siegfried)
…………。わァってらァ。
…別に、"妖異"は恨んじゃいねえよ
(Rushlamia Lilith)
……だったら
…!
(Sigma Siegfried)
……でもなァ。自分の大事なモン踏みにじってった奴に、報復くらいしなきゃ気がすまねえっつーのも
…俺らの本能だっつー話だッ!
Sigma Siegfriedは剣を引き抜き
―――その首めがけて、振り抜いた。
(Rushlamia Lilith)
―――…!!
Rushlamia Lilithは避ける間もなく、ごとりと首を落としながら、その場に倒れ伏した。
――切られた首から、小さな蛇が這い出てくる。
Rushlamia Lilithの本体は慌てふためきながら、出口を探して這いまわる。
(Phalaena Minor)
――あら、どこに行くつもりですか?
Phalaena Minorは蛇の尾を踏み、そのまま摘まみ上げた。
(Rushlamia Lilith)
……!
………!
Rushlamia Lilithの本体は何かを喚きながら、激しくうねっている。
(Phalaena Minor) ゲームはもうおしまい。だからほら、そんなに喚いたところでもうどこにも逃げられませんよ?
Rushlamia Lilithの本体は尚も逃げ出そうと蠢いている
…
(Phalaena Minor) 残念。もう少し早くそうしていれば、あなたに勝ち目もあったのに
Phalaena Minor憐れむように見つめると、そのまま口へ運び、蛇を食らった。
(Sigma Siegfried)
…………。まずそ
(Phalaena Minor) 不味いですよ
……
(Sigma Siegfried)
………。だろうなァ
Phalaena Minorは不機嫌そうに顔をしかめながら Sigma Siegfried を見上げた。
(Sigma Siegfried)
……………。
Sigma Siegfriedは少し気まずそうに視線を逸らした。
(Phalaena Minor) 何です?お詫びなら大量のスイーツで許してあげますよ
(Sigma Siegfried)
…………。
……なんでついてきた
…?
(Phalaena Minor) いやな予感がしたから苦戦してるだろうと思って助けに来た。なーんて言って信じます?
(Sigma Siegfried)
…………や
……。
…そりゃ
……
Sigma Siegfriedは困ったように頭を掻いた。
(Sigma Siegfried)
……そうじゃなくて
…
(Phalaena Minor) やだ、まさかこの期に及んで来るなって言ったのに
…。なーんて言うつもりじゃないですよねぇ?そもそも来るなとも言われてませんけど
(Sigma Siegfried)
…………。
……嫌んなんねえ?
(Phalaena Minor) 何故?
(Sigma Siegfried)
……、
…こんな、
……散々関係ねえやつ巻き込んで、
…俺のせいで
…
(Sigma Siegfried)
……。
…巻き込む気ねえから置いてきたのに
(Phalaena Minor) 何故あなたのせいになるんです?自分で巻き込んだわけでもないのに
(Sigma Siegfried)
………、
…
Sigma Siegfriedはだって、と悔やむように耳を伏せた。
(Phalaena Minor) 自分さえいなければなんてくだらないことは言わないでくださいね
(Sigma Siegfried)
……そりゃ、
…………
Sigma Siegfriedは否定できずに言葉を濁らせ、視線を逸らした。
(Phalaena Minor)
………。あーあ、これは関係者各位の前に突き出して叩き直してもらうべきかもしれません
……
Phalaena Minorは「あーあー、わたしみんなと一緒にがんばったのにせんせい全然うれしそうじゃないなー!」とわざとらしく拗ねた。
(Sigma Siegfried)
……ん”
…
Sigma Siegfriedは困ったように眉を下げた。
(Sigma Siegfried)
……悪かったよ
…
(Phalaena Minor) 卑屈でごめんなさい♡の意だったら受け取りますよ
(Sigma Siegfried)
………。
…危ねえ橋渡ってきたろ。
…怪我しなかったか?
(Phalaena Minor) スルーされたので今心に傷を負いました
……
(Sigma Siegfried)
……や
…だって
…んん
…
(Phalaena Minor) せんせいの言葉のナイフがグサグサと
……。もうむり
…つらい
…「助けてくれてありがとう!やったー!嬉しい!生きてるって素晴らしい!エナちゃん最高ー!」って言われないと立ち直れない
……
(Sigma Siegfried)
……、
…悪かったって
…、
……助かったよ
(Phalaena Minor) エナちゃん最高
(Sigma Siegfried)
…あ”、っつか村、どうなった
…!?
(Phalaena Minor) 心配しなくとも雑魚の皆さんもみーんなまとめて領域に引きずり込んでアリさんみたいになってますぅー
Phalaena Minorは少し拗ねたように頬を膨らませた。
(Sigma Siegfried) 火は
…?とりあえず、行かねえと
Sigma Siegfriedは慌てたように領域の出口へと向かった。
―――――
【数刻前まで妖異がひしめいていた集落は、元の静けさを取り戻しつつあった。魔力源が断たれたからだろう、集落を覆っていた炎も鎮火し、僅かに煙が燻るだけだ。】
【家屋は一部崩壊し、多少の怪我人は出たものの
――幸い、命が失われることはなかったようだ。】
(Phalaena Minor) 被害は残ってはいますけど、一先ずここの人たちは無事だったみたいですね
(Sigma Siegfried)
………ん
…
(Sigma Siegfried) (/em は表情を曇らせたままだが、少しだけ安堵したように息を吐いた。
(Phalaena Minor) まったく
…。いい加減その辛気臭い顔やめてくれません?
(Sigma Siegfried)
……無茶言うなよ
…こんだけ大事になっちまってさァ
…
(Phalaena Minor) 仕方ないですねぇ
……。皆さーん!ちょっと聞いてくださいよぅ~!せんせいが皆さんにお詫びしたいってぇ~!復興の手伝いでも子供のお世話でも、普段はできないあんなことやこんなこともぜーんぶ好きなようにしていいってぇ~!
(Sigma Siegfried) ばっ
…!!!
(Sigma Siegfried) (/em は慌ててPhalaena Minorの口を塞いだ。
(Phalaena Minor) (/em はもごもごしながら、ふふんっと何故かドヤ顔している。
(Sigma Siegfried) するけど
……!詫びはするけどォ!!
(Phalaena Minor) (/em は気にするくらいならへとへとになるまで役に立ってくればいいじゃん
…と思いつつ、もごもご言っている。
(Sigma Siegfried)
……やんなきゃなんねえことここだけでもねえしさァ
…他の村とか
…
(Phalaena Minor) (/em はよいしょっと Sigma Siegfried の手をずらし、ふうっと一息ついた。
(Phalaena Minor) 他の村の事件なら居合わせた冒険者さん達と一緒に全部解決してきましたよ。どこも今頃は復興に向けて頑張ってる頃でしょうし、その手伝いでもしに行ったらいいんじゃないですか?
(Sigma Siegfried)
………。
……え。
(Phalaena Minor)
……?
(Sigma Siegfried)
……お前が?
(Phalaena Minor) 失礼な
……。わたしを何だと思ってるんです?
(Sigma Siegfried) や
……。
……そか、
……解決
…した?
(Phalaena Minor) 冒険者さん達と一緒に解決してきましたぁ~。他の皆さんにもお礼言っといてくださぁ~い
(Sigma Siegfried)
…そ、か
……。
…うん、
…そりゃ
…
(Phalaena Minor) なので、あとはせんせいの気が済めばこの件はおしまいです。肝心のせんせいがうじうじしてるみたいですけどぉ
(Sigma Siegfried)
……ん”
…
(Sigma Siegfried) (/em は顔を見せないように膝を抱え、深く息を吐いた。
(Phalaena Minor) まあでも、とりあえず気持ちの整理と報告も兼ねて、またお墓参りでも行ってきたらいいんじゃないですか
(Sigma Siegfried)
………。そうする
…
(Sigma Siegfried) (/em は顔を上げると、切り替えるようにぺちぺちと頬を叩いた。
(Phalaena Minor) (/em はチラリと Sigma Siegfried を見た。まあさっきよりはマシかな
…。
(Sigma Siegfried)
……あ
…っつか、剣
…
(Sigma Siegfried) (/em は持ってきちゃったな、と背に収めた領域の剣をちら、と見た。
(Phalaena Minor) 別にいいですけど。わたしじゃ使えませんし。元々シグルドの剣ですから。
(Sigma Siegfried) 怒んねえ?大事なもんだろ
(Sigma Siegfried) (/em は問いかけるように義眼に触れた。
…特に反応はない。
(Phalaena Minor) 好きにしろとか言いそうですけど
…
(Sigma Siegfried) いいか悪いかくらい言えよォ。
…俺が持ってっとぶっ壊しちまうかもしんねえぞォ
(Phalaena Minor) それはちょっと
……
(Sigma Siegfried) (/em は義眼の奥をつねられた。
(Sigma Siegfried)
…いっつ
…
(Phalaena Minor) そこは怒るんですね
…
(Sigma Siegfried) 好きにすりゃいいが壊すなっつーことね
…?ったく
…
(Phalaena Minor) 大事に使ってくださいね♡
(Sigma Siegfried)
……まァ
…そういうことなら、大事に切り札にさせてもらうかね
…。
…斧よかこっちのが馴染むし
…
(Phalaena Minor) 良かったですね♡戦いやすくなりましたよ♡
(Sigma Siegfried) 普段はしまっとくけどなァ。
(Phalaena Minor) しまったままなくさないでくださいね
…♡
(Sigma Siegfried) やんねえよ、なくしようもねえだろぃ
(Phalaena Minor) わかりませんよぉ?大事にしまっておいたら見つからなくて、やっと見つけたと思ったら錆び錆びに
……とか
…
(Sigma Siegfried) バァカ、俺をなんだと思ってんだ
…。得物の手入れくらい常日頃やってらァ
(Phalaena Minor) 武器にも名前をつけたりして?
(Sigma Siegfried)
…そういや名前つけたことねえなァ
(Phalaena Minor) 別に付けなくても良いですけど
…
(Sigma Siegfried) まァしっくりくるのが浮かんだらなァ
(Phalaena Minor) 変な名前は付けないでくださいね・
…
(Sigma Siegfried) つけたことねえだろ~?
(Phalaena Minor) バイクがチョコボですし
…
(Sigma Siegfried)
…おかしくねえじゃん
…別に
…
(Phalaena Minor)
………。
(Phalaena Minor) (/em はこれ以上深く突っ込まないでおこうと思った。
(Sigma Siegfried) (/em は首を傾げつつ立ち上がった。
(Sigma Siegfried)
…さって、もちっと後片付け手伝ってくっかァ
(Phalaena Minor) はぁい、頑張ってバリバリ働いてきてくださいね♡
(Sigma Siegfried) おー。
…あァ、エナ
(Phalaena Minor)
……?なんです?
(Sigma Siegfried) 落ち着いたら、好きなもん食いにいくかァ
(Phalaena Minor) いちごパフェが食べたいです♡おっきいやつ♡
(Sigma Siegfried) うはは
…食いてえ店見繕っとけ~
(Phalaena Minor) はぁい♡
(Sigma Siegfried) (/em は耳を揺らしつつ、村人たちに合流するようだ
…
≪斜陽に滲む影法師≫ ――fin.