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墨色
2025-11-30 20:54:15
4024文字
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はじめて愛を知った日
本命童貞れめしし
なんとかお付き合い始めた後、手を出せない叶さん
男前に受け止める獅子神さん
……なお話
※朝チュン程度の描写有り(これが夜のお話の精一杯だよ)
「好きです。お付き合いしましょう」
さすがにそんな言葉はなかったけど、成人男性二人の関係として見れば、きちんと段階を踏んで関係を進めた
……
結果的にそうなった。
叶黎明は振り返る。
いつも5人で集まってるところから、敬一君と2人で遊ぶようになって。みんなとじゃ行かない(そもそも誰かの家で集まってばかりだし)高級レストランに、雰囲気のいいバーにも行ってみた。思い返してみれば、バカみたいにマニュアル通り。
ユミピコに『初めて恋を知った高校生のようだな』って揶揄われて、情けなくも初めて気付いた。
オレが、敬一君に恋していたってことに。
「えぇぇっ?!」
情けない声を出して、敬一君の方に視線をやれば、
「つーか、オレはとっくに口説かれてるつもりだったんたけどな」
頭を掻きつつも、ニヤリと笑みを向けられた。
まさかまさか、敬一君の方が先に気付いていたなんて?
「そ
……
それじゃ
……
どうすれば?」
オレの経験によるお手軽な恋愛(つーか、体の関係)なら、この先は決まってる。ホテル行って、隙見てオレの痕跡を消して、サヨナラ。
思い至って、ブンブンと頭を振る。サヨナラなんてするもんか。
股下1メートルの歩幅で距離を詰めて、敬一君の手を握る。
「幸せにするからっ!!」
「
……
ハッ。よろしくな」
拍子抜けするほどアッサリと、敬一君から返事が返ってきた。
あとから「十分過ぎるくらい、考える時間があったからな」などと言われた。そんなにオレの態度は、オレ以外にバレバレだったのか。
『診断するまでもなかったな』とは、礼二君の言葉だ。
そんな、どこに出しても初々し過ぎて恥ずか死ぬエピソードから、一ヶ月。
敬一君の家で手料理を振る舞われ、二人でまったり映画を観ている現在。
ソファに二人並んだら、時折肩が触れる。それだけで自分の半身が熱を帯びる。
『この前読んだ、少女漫画の主人公みたいだ』とキラキラした瞳で見てきた、晨君の言葉が頭を過る。
全く笑えないけど、ホントにその通りだ。
「叶?どうかしたか?」
ひょいと覗き込まれたオレの顔は、きっと情けないくらい真っ赤だったろう。
「ちょ
……
待って。タンマ!」
敬一君から離れようとして、バランスを崩した。
「うわっ?!」
「おぉっ?!」
二人一緒に倒れ込む。なんとか床に落ちることを回避して、気付けばオレは敬一君の身体の上に乗っかかっていた。
「
……
敬一君」
名前を口にして、強張る身体をなんとか退かせようと頭を働かせる。
けれど、腕を掴まれ叶わない。
「叶
……
ヤッても、オメーの気持ちは否定されねえよ」
射抜かれる瞳に、心臓が跳ねる。
「敬一君は、いつからそんなに鋭くなったんだよ」
ヤベェ、なんで分かんだろう。
今までの
……
恋愛って呼んでいいのか分からない関係は、ヤることヤッたら終了だった。
だから、心の何処かで恐れてたんだ。敬一君と〝そう〟なったら、終わりだって。
「オレも分かんねえけど、恋愛だったら
……
それは愛の確認行為なんじゃないのか?」
「愛?」
「クソッ、オレだって恥ずかしいんだよ!!」
赤くなる敬一君を見下ろして、オレの心に何かが広がっていく。きっとこれはーーー
「愛だな」
「
……
テメーが言ってたことだろ」
「そうだよな、オレは敬一君に愛されたいし、愛したいんだ」
掴まれた腕を引き寄せて、オレは初めて敬一君の唇に自分のそれを触れさせた。
「オレの初めてのホンキ、お前にやるよ」
「上等だ
……
んっ?!」
触れてしまえば、触れるだけで満足出来るわけない。貪るように口腔に侵入していくことにした。
邪魔な洋服を脱ぎ捨てて、敬一君のも剥ぎ取った。
「流石、叶黎明。キメたら早えんだよ」
「だいじょーぶ、アッチは早くないから」
「
……
初々しい方が可愛かったな」
不満そうな敬一君だけど、実は余裕なんてない。だけど、もうオレは隠さない。
「ヤバい、オレの心臓
……
どんなペナルティのときよりも速いんだけど」
組み敷いた敬一君に、ポタリと汗が一滴落ちた。
伸ばされた手が、オレの左胸を包むと、
「ははっ、ホントだ。ヤベーな」
眉を下げて敬一君が笑った。
世界一幸せだと、敬一君の瞳に映るオレを確認する。
左胸から、鎖骨と首筋へとなぞりながら頬に触れた手が、オレの右目を隠す前髪を掻き分けた。
「もっとオレを見ろよ」
思わずパチクリと目を見開いてしまった。
「オレの台詞取らないでよ」
汗ばむ身体を抱き締めた。
敬一君を抱いている間、ずっと隅々まで見ていた。オレの手で唇で表情を変えるのが、愛しくて仕方ない。
二人で果てた後、そのまま寝ようとするオレを、敬一君は風呂場に連れて行ってくれた。
知らぬ間に湯を張っているのが彼らしい。
そこでまた隅々まで綺麗にしてあげていたら「今日はこれ以上はヤらねえからな」って釘を差された。
男(それも規格外にデカいヤツ)二人には狭い湯船に浸かって、また肌が密着する。
「ねえ」って声掛けたら、「あがる!!」って言って立ち上がるから、キレーなケツが目の前にきた。
続けてオレも風呂を出て、二人で髪を乾かし合いっこした。敬一君の、いつもは上げてある前髪が、無造作に額へと落ちている。これもオレだけのものだ。
それから、いつものゲストルームと違う、主寝室に向かう。一人では持て余すデカいベッドの真ん中で、少しのお喋りの後、オレたちは眠りについた。
夜中に目を開けると、目の前に端正な敬一君の顔。それに安心して、瞼を再び降ろす。誰かの体温を感じながら眠るなんて、いつ振りだろう。
「
……
んっ」
カーテンの隙間から差す朝の光に刺激され、薄っすら瞼を持ち上げる。昨日の余韻の残る身体と幸せな記憶を噛み締めながら、隣にいる敬一君へと腕を伸ばした。
しかし、その腕は空を切り、少し乱れたシーツへと着地した。
「けー
……
いち君?」
一気に意識が覚醒する。
ガバリと上半身を起こし、ベッドから部屋へと視線を移す。陽は昇っているはずなのに、薄暗い室内に不安が高まる。遮光カーテンの優秀な働きに舌打ちして、一気に左右に開け放つ。
眩しい朝日にクラクラしながら、もう一度室内を見回した。
部屋の中央に鎮座するキングサイズのベッドには誰もおらず、辛うじてシーツの皺だけがその名残を表している。
「敬一君?!」
いないと分かっているのに、名を呼んでしまう。返ってこない返事に、足元がグラグラする。嫌な汗が背中を伝う。
落ち着け、と自分に言い聞かせる。ここは敬一君の家なんだ、何処かへ行ってしまう筈はない。そう、きっとトイレか水でも飲みに行ってるんだ。たから、部屋を出て探しに行けば
……
。
漸く思考が働いてきて、冷静に考えればすぐに行き着く可能性を弾き出した。
それでも、足が動かない。
そうしていた時間がどれほどか。10分にも満たない、もしかしたら数十秒かもしれない。ただオレにとっては何時間にも感じられた時間の後、
「あれ?叶、起きたのか?」
音を立てないようにして、敬一君が扉を開けた。
「
……
敬一君?」
足元を見つめていた顔をそちらに向けると、敬一君の顔が強張った。でもそれはホントに一瞬で、すぐに柔らかい笑みに変わると、オレを抱き締めてくれた。
「悪りぃ、一人にした」
耳元で囁かれた言葉に、漸く緊張が緩んだ。
「ドン引きだろ。たかだか恋人が翌朝ベッドにいなかったくらいで、こんなに狼狽えて」
「珍しいもんが見れた。早起きは三文の徳だな」
オレの中で、羞恥心という貴重な感情が湧き立つ。
「
……
サイアクの目覚めなんだけど」
「うん、悪かった」
優しい声とともに、グシャグシャの髪を梳かれる。
「いなくなったりしねえから」
頬にキスされた。
「オレも。離してなんかやらないからね」
敬一君の背中に腕を回して、ギュウッとしがみつく様に抱き締めた。
「後悔しても遅いぞ」
「はっ、後悔するくれえなら、端から惚れねえよ」
「
……
痛っ!」
首筋に噛みつくように口付けてきた敬一君。マジで薄っすら血が滲んでない?
「敬一君って、意外と肉食なんだな」
「オメーは案外清純派だな」
笑い声を上げる敬一君の額に、頬に、瞼にキスの花を降らせる。
「しょーがないじゃん。好きなヤツとするのは初めてだったんだから」
視線を絡ませながら、名前を呼びながら、手を繋ぎながらいたすことが、こんなにサイコーだったとは知らなかった。
それに、あんなに優しくできるとは、オレの知らない一面てのもまだあるもんだな。
でも、と唇にキスして、ペロリと舐め上げる。
「2回目からは本気でイクからな」
「はっ?!ちょっと待て
……
んっ!」
スルリと部屋着の裾から右手を滑り込ませ、敬一君の肌を撫で上げた。
「朝から盛んなっ!!」
「ムリムリ、その気にさせたのは敬一君の方でしょ」
ゾワリと肌が粟立ちながらも、敬一君が抵抗する。
「今日はあいつら来るんだよ!!」
必死の叫びに、オレの瞳が半月へと形を変える。
「あー
……
つーか、もう来てるね」
不法侵入常習犯(オレを含む)の友人たちの気配を扉越しに察知した。
「まあイイでしょ」
「良くねえっ!!」
「
……
いぃ
……
それは反則だよ
……
敬一君
……
」
上半身はガッチリガードしていたものの、下半身は自由にさせていたため、鋭い膝蹴りがオレの急所に命中した。
それを合図にするように、雪崩込む友人三人。
オレはなんとも情けない姿で、友人に恋の成就を報告する運びとなった。
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