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望月 鏡翠
2025-11-30 00:16:40
979文字
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日課
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#1921 ジョアンの耐えがたい主人について11
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
剣で肩を打つ。その作法が意味することですら、この男は理解してはいないだろう。だが、ジョアンの方はその意味を心得ていたし、理解をした上でその振る舞いに意を唱えなかった。
トルガは満足したように、剣を納めた。
「私が貴様のものになると確信して、殺す必要はないと言ったのか」
「まさか。美しい花ならともかく、男心を掴むのは不得手でな。ただ俺はお前を殺せないし、俺もお前を殺せない。今それをすると、リュネストの害になるからな」
それがトルガが言った、周りがどう見るかという視点に欠けるという話であるらしかった。トルガが平民の出身であることは、周りの家にも知られている。公にはしていなくとも、ミノーフィッシュという特定の家を指さない家名を見れば容易に察せられる。
バンデイアの歴史ある貴族の出身でないなら、血筋に関してはいずれにしろとやかく言われる。であれば、正当な血筋から出さずとも変わらないというレシーの判断だ。
しかし平民の出であるだけで、風当たりが強いことに変わりはない。
その上で家令と当主が揉めて、殺し合ったという醜聞を立てるわけにはいかないのだ。このタイミングでお家騒動など起こしたら、好機とみて他の家が付け入ってくるかもしれない。
「だから、私を殺さず家令の役目も奪わないと」
「そうだ。お前は自分を不明と言ったが、俺の言ったことを理解したはずだ。リュネストとレシーに対する忠義があれば、ここで自分の体面を守るためだけに、俺を潰すようなことはしない。ジョアン、お前の貴族としての誇り高さとレシーへの忠誠心を信じている。俺が不在の間、任せたぞ。形だけでいいから、上手くやってくれ」
「
……
わかりました。何が望みですか」
「諸国が間諜を放ってくるだろう。ネズミが入り込まないように、屋敷には目を光らせてくれ。あとは海路の監視を強化してくれ。あとは、この書状を処分して、今日会う予定だった人間の耳に吹き込む新しい策を考えろ」
トルガは懐に入れた書状を無造作に投げ捨てると、踵を返した。
「どこに、いくのですか」
「俺はこの家を今朝出発したことになってるんだよ。部屋で寝てから出発するわけにはいかんだろう」
ひらひらと手を振って、トルガは裏口から外に出る。馬車を待たせてあったのか、蹄と車輪が石畳を転がる音が、少しずつ遠ざかっていった。
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