なが
2025-11-29 00:44:21
1421文字
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N社の良秀とイサンのSS(微CP風味)

雰囲気だけ。中身はない
側から見たらイサンへの感情激重だけど、良秀自身は半分無自覚かもなというような そんなやつ

 ざらついた視線が皮膚を剥き、一遍に侵していく。視線の主は真っ白な天井かもしれないし、無駄に染色された絨毯かもしれなかった。靴底を沈ませる毛足を捩じ切るように踏みつけると、目の前からカチャンと軽い音がした。片手で両の目を覆う。不純な暗闇にあらゆる色のノイズがチリチリと走り、却って不快さを増していく。内臓が沸いて、濁った蒸気が頭蓋の中を埋める。得物に手を伸ばそうと右手に力を込めると、冷たさを感じた。
 現実的な触感に覚まされ、ゆっくりと瞼を持ち上げる。指は白い陶器の灰皿に掛かっていた。吸わないまま伸びた灰に舌打ちをし、煙草を適当に弾いた。かわいそうに短くなったそれを口元に寄せる。前のめりの背を椅子に預け直すと、ぎぃと短い悲鳴が聞こえた。

……

 遠くから、暗く静かな気配が近づいてくる。目の前の灰のうねりが、もうすぐ相見えるだろう赤のゆらめきと重なった。
 今世の役目を終えた煙草を灰皿に潰し、そのまま手を伸ばしてサングラスの柄ををつまみ上げる。さっき、邪魔になって机上に放り投げたんだったか。薄く彩度の落ちた視界に、色の無い呼吸が細長く伸びていった。

 まもなく足音が大きくなり、カチャとドアノブを捻る音がする。黒く冷たい、しかし生きた視線に捉えられる。

……理事からの言伝なり。午後の訓練が終わり次第、明後日の作戦任務の打ち合わせを行うと」
「面・倒……気分じゃない」
「ふむ、では理事にそう違わず伝えたまえ」
「お前だけ聞いてこい。あとで面白そうなところだけ教えろ」
「出席そのものは構わぬが……おそらく面白きところは一切あらず。故に、伝うることも無いに等しくならん」

 もう一度脳内で面倒だと繰り返しながら、煙草に火をつけた。向かいの椅子を引くそいつを見て違和感を覚える。

……お前、銃は」
「常のごとく、定められし場所にて収めてあるなり」

 言う通りだ。それと同じ目的で振り回される、赤と黄を纏った特徴的な剣も見当たらなかった。

……侵蝕は、伝播せんものなりや?」
「はっ……前線に白痴が2人も居ちゃあ、いくらあの理事の野郎でも手に余るだろうな」
「この一刹那をみれば、そなたのほうが甚しからん」

 短い灰を落とし、吸い込んで、吐く。
 目の前のそいつは、いつも通り本を取り出すか、はたまた束の間の休息に目を瞑ろうか悩んでいる様子だった。

「イサン、俺の名前は?」

 少しだけ目を見開くそいつを見て、俺の方が驚いた。一方的な、脈絡のない問いかけは今に始まったことじゃないだろうに。
 ばつの悪そうな視線がそっぽを向いたから、逸らすな、と思った。

……良秀」

 は、と息が漏れて、一瞬だけ下瞼に力が籠る。呆れたからだ。これだけ顔を突き合わせているってのに。
 不愉快さが呼び水になったのか、再び何者かの視線が皮膚をなぞるような感覚がした。振り払おうと灰皿を触り、口に渡っていくタバコだけを目で追う。咥えようと唇を割った時、ようやく己の口角が上がっていたのに気がついた。
 睨め付けるつもりで顔を上げると、いつもの真黒い瞳は瞼に覆われていた。

……

腹立たしい。本当に寝ているわけじゃないだろうに。
 その生の視線を露わにさせようと口を開くが言葉が見つからなかった。ひとつの視線だけが伸びる空中に灰煙を吐き散らし、真似をするように目を閉じた。
 今度は誰の視線も感じなかった。