ふみかぜ@壁打ち
2025-11-28 22:59:19
4296文字
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【Δドラロナ】ハイ・ニード・ラブ【webオンリー再録】

「バナナケーキでつかまえて も〜っとおかわり!」ありがとうございました!/展示小説の再録です(中身は同一)/お疲れ気味のド隊長にロくんが「おっぱい揉む?」といった結果はいかに、という話/全年齢ですがちょっと背後注意、ゆるふわハッピーエンド/knead(捏ねる)とneed(必要)、rub(揉む)とlove(愛)をかけましたという蛇足を後出ししときます

 勤労を尊び日本国民が感謝し合う気持ちを、感じられたり感じられなかったりする新横浜の夜のこと。
「なぁドラ公、疲れてる?」
「んー?」
 今晩の吸血鬼案件を収拾し、パトカーに乗って戻る道中。助手席に座って流れゆく景色を眺めていた吸血鬼ロナルドは、ドライバーの方へ顔を向けて率直に尋ねてみた。
「そりゃあ疲れるに決まっているだろう。うじゃうじゃ出てきた下等吸血鬼の駆除にそれを増産していた高等吸血鬼の確保……オマケに、いざ撤収しようとしたところでロナルド君が半田君と唐突にバトルを始めるし。お陰で割れた道路と凹んだガードレールの始末書追加だ」
「う、それは悪かったよ。……言っとくけど、先に仕掛けてきたのは半田だぜ」
 しかめっ面で運転しているドラルク隊長へ謝罪と、思わず付け加えた言い訳を伝えれば、ため息と共に「分かっているよ」という言葉が返ってくる。
「まぁ君たちの因縁というか腐れ縁というか、そういうものに口出しする気はないが……町を壊すのは勘弁願いたいな。もっと広くて物がない、我々に責任が降ってこない場所でやりたまえ」
「それこそ半田に言ってくれよ。あいつ、何処にいようと生セロリ出してくるんだぞ?! こえーよ!」
「私が言ったところでなぁ。あのエセ昼行灯が諫めるならともかく、奴は面白がるだけだろうし。ま、今回の修繕費は連帯責任としてギルドにも支払わせてやるがね」
 そう言って引きつった笑い声を上げたドラルクはやっぱり、いつもより疲労の色が濃く見えた。今日は昼から警察の偉い人たち(勿論、彼が毛嫌いしている本部長も含む)とリモート会議により、四時間近く会議室に籠もってからの出動だったため、肉体が脆弱な男には余計に堪えたのだろう。
 そんなドラルクを眺めながら、ロナルドは両手を頭の後ろに回してどうしたものかと考えた。扱いはあくまでも吸血鬼対策課の備品とはいえ、彼には衣食住を保証された上に、対敵性吸血鬼の出動で退屈しない日々を送らせて貰っている。こんな風に疲弊している姿を見ると、ロナルドなりに何かを返した方がいいのではないかと思うのだ。
「んー……なぁ、ドラ公」
「うん?」
 警察署へ帰り着いたパトカーが、バックで駐車エリアへ入った後。運転席のシフトレバーがRからPへ切り替わったところで、ロナルドは右側へ身を乗り出した。
「ちょ、何だ急に近、」
「疲れてるなら――俺のおっぱい揉む?」
 ……沈黙。アルマジロのジョンが別ルートで戻る予定により不在だったのは運が良かったのか悪かったのか。
 補足すると、ロナルドの発言は半ば入れ知恵の結果に近い。馴染みの吸血鬼たちの間で開いた呑み会のことだった。
 勤労感謝の日が近いこともあって、ロナルドは「日頃世話になっている相手を元気づけるにはどうすればいいか」と仲間に尋ねたのである。尚、その時ドラルクの名は伏せたが、彼の落ち着き無い挙動からして概ねバレていたに違いない。
 酔った面々から出される、本気とも悪ふざけとも取れるアイデア――肉を腹一杯食べさせる、四八時間熟睡させる、疲労がポンと飛ぶ薬を飲ませる、ショットさん直伝の渾身一発ギャグを披露する――は、自分がドラルクへ実践するには随分ハードルが高いものが殆どで。その中でいけそうと思ってしまったのが、よりにもよって熊の生き血ワインをラッパ飲みしていたマリアの「おっぱい揉む? とか言えばいいんじゃね~か」という提案だったのである。それってセクハラでは、と考えなくもなかったが、棺桶をドラルクの部屋に置いている今は言うだけならセーフだと判断してしまっていた。
 で、ロナルドが実際に言ってみた結果である。ドラルクはシフトレバーを左手で掴んだまま、真顔でたっぷり十秒黙り込んでいた。
「なっ、何か言えよ」
 思わず弱々しい声が出る。呆れでも怒りでもいいから、ツッコミなり何なり反応が欲しい。黙殺が一番堪えてしまう。
 ドラルクが次に唇を開いたのは、更に五秒が経過した後のこと。
……ロナルド君」
「お、おう」
「二時間後に予約取れる?」
「へ」
「君の騎士はスリープモードにしておくように。よろしく」
「うん?」
 金色の眼を細めて吸血鬼を見据えるダンピールの顔は、やはり作戦開始直前の時みたいに真顔のままだった。

 署に戻ってジョンを迎え、早々にドラルク宅――市街地の中でも目立つマンションへ帰着。「ヌッヌヌッヌ」と、ドラルクへサムズアップしたジョンが数枚のDVDを抱えて書斎へ入っていくのを見送り。
 パトカー内の質問からきっかり二時間後、無駄に彩度の高いルームウェアに着替えたロナルドは、常夜灯のみが点いた寝室のベッドで体育座りをしていた。目の前には隊服を脱いでラフなシャツとチノパン姿になったドラルクがあぐらをかいており、膝上に肘を突いてこちらをじっと眺めている。居心地が悪い。
「ねぇ、ロナルド君」
 仕事の時と打って変わった柔らかい調子で、ドラルクが声をかけてくる。
「手と足、どけてくれるかね」
「う……なぁ、ほんとにやる気かよ」
「君が言い出したことだろう。まさか、私を弄ぶつもりだったの?」
「んなっ、別にそんなつもりじゃ」
「だったら、触らせてくれるよね?」
「ぅ……うん……
 軽い気持ちで自分が言ったことを早速後悔しつつ、ロナルドは膝を抱えていた腕を後ろの枕へ回し、股をぴったり合わせていた足も上半身が見えるように崩した。するとすかさず詰め寄ったドラルクの骨張った両手がこちらの膝頭を押さえるように乗せられ、その冷たい体温にどきりとする。
「そう硬くなるな、ロナルド君。優しくするから」
「ぉう……んっ」
 トップスの布越しに胸部を触れられ、意図しない声が漏れる。発達した胸筋をドラルクの骨張った掌でぐにぐにと、クッションの弾力を確かめるように押されるのは何ともいえない感覚だった。
「ほう、やはり中々の厚みだな。筋トレとかしてるのかね?」
……んー、なんもしてねーけど。暇な時は一晩中適当に走り回ってたぐらいで」
「なるほど、総運動量がそもそもバカなんだな」
 言いながら、ドラルクがウェアの中へ両手を突っ込み、動きを大胆なものへ変化させていく。指で両胸をしっかりと鷲掴みし、円を描くように手首を動かして捏ね回されると、腹の方へ向かってじんわりとした熱が広がっていくようだった。
「っ、く……
「ふむ……揉まれて気持ち悪いところとかある? 避けるよう善処するが」
「んっ? んー……
 お菓子の生地を練るように胸を揉み続けるドラルクに今更すぎることを問われ、刺激に翻弄されながらも首を捻って考える。ここで真偽はどうあれ「やだ」とか「キモい」の一言が出れば行為を止められたかもしれないが、素直に答えてしまうのがロナルドであるゆえんだった。
「気持ちわりぃとかは、ない……多分。むずむずして、変な感じはするけど」
「ふぅん? ……ここは?」
「っひ?!」
 不意に右側の胸の尖りを指の腹で押され、ぞくぞくとした感覚が背筋を走っていった。急な刺激に腰が跳ね、手が枕を力一杯掴んでいなければうっかり拳が飛んでいたに違いない。
「気持ちいい? それとも逆?」
「ん、なの……わかんねぇ、よ……!」
「へぇ。こうするのは」
「んんっ……?!」
 今度は左の乳首を指で挟まれながら捏ねられ、痺れるような刺激が腰まで響く。もし、ロナルドの足を開かせた間に身体を割り込ませているドラルクが、その細い脚をこちらへ密着させてきたら。既に顔を真っ赤にさせて震えているロナルドは、間違いなくキャパオーバーを迎えていたことだろう。
「どう?」
「どーって、言われても……! つか、お前はどうなんだよ」
「私?」
 逆に問われたドラルクは、虚を突かれたように手を止める。白目が広い金眼をぱちぱちと瞬きした男は、ロナルドの赤い眼と視線を合わせると――息を呑むくらい甘ったるい笑みを浮かべた。
「私はねぇ、楽しいよ。とても楽しい」
「っ、ほんとに……?」
「もちろんだとも」
「そっ、か」
 ドラルクが喜んでいるなら、それでいいか。身体を張った甲斐がある。
「ふふふ。……ねぇ、ロナルド君。キスしてもいい?」
「へ、」
 胸を執拗に捏ねていた両手が首筋をわざとらしく擽り、ロナルドの火照った頬を包み込む。耳元に流し込まれる、熱っぽい囁き。青白い手は逆にひやっとするぐらい冷たいのが、やけに心地好く感じてしまう。
「駄目?」
「って、いうか……えっと」
 どう言えばいいのか暫し口をもごもごさせた後、迷った末に思ったそのままを言葉にした。
「ドラ公って、俺のこと好きなの?」
「うん? そりゃあ、好きに決まっているではないか」
「ふーん……へへ」
 あっさりと返ってきたのは、何ともロナルドにとっては都合のいい言葉で。締まりのない笑い声が出てしまうのは仕方ないことだ。
「じゃーいいぜ。来いよ、ドラこー」
 身体の力を抜き、背中をベッドへすっかり預けてドラルクを待ち構える。初めて重ねた唇は思ったより甘くはなくて、ロナルドが好きな血が仄かに広がる味だった。

 翌日の昼。寝室のベッドには、パンツ一丁で血液パックを飲む吸血鬼ロナルドと、シーツに包まったまま出てこようとしないドラルク隊長の姿があった。
「ドラ公、大丈夫か?」
「しにたい」
「えー、俺が死ぬより早く死ぬなよー」
「無茶言うんじゃないよ生命力バカ吸血鬼……
 もぞもぞとシーツから顔を出しながらドラルクが悪態を吐く。昨晩のみなぎり具合の反動が来たのか、寝起きの顔はすっかり悄気てしまっている。
「あああ完全にやらかした……クソ勤労明けでハイになったからってセクハラかました上に、かっっるい告白でそのまま致すとか……
「俺は嬉しかったけどな。両思いだって分かったし」
「幸福閾値アホ低ロナ造は黙っとれ! そうぽやぽやされると開き直っちゃいそうだろうが!」
「開き直ればいいじゃん」
「うるっさい、君がよくても私のプライドが許さんわ! ……ああもう、何としてでも休暇をもぎ取ってリベンジするからな。覚悟しておきたまえ、ロナルド君」
「リベンジ……揉み足りなかったか? なんかごめん」
「全然違う! 告白の方に決まってるだろうが肝心肝要抜け落ちバカ造!」

 後日、デートして告白の仕切り直しをして無事バカップルと化した二人がいたとか何とか。
 尚、ドラルク隊長は何とは言わないが揉み癖が付いたそうな。