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桜崎
2023-03-13 00:34:30
2073文字
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そのあと
事後、いちゃいちゃしながら他愛もなく会話してるだけのドラスツ。
「明日のお仕事は隣街までの護衛だけだったよね〜」
赤い髪に指を通しながら、耳元で話すドランクにああ、と気怠げに返答する。
「お昼ご飯はこないだ行ったところにする〜? 美味しかったよね? スツルム殿何回もおかわりしてたし〜」
「
…
そうだな」
「あ、帰りに魔法具のお店、寄っていい? こないだ買うか迷ってたんだけどやっぱり欲しくなっちゃって
……
」
「
……
好きにしろ」
頭から耳へ指先が動き首をくすぐる。戯れにこめかみへと口づけが落ちた。
「そういえば次の依頼、色々あるけど、どれにしよっか? すぐに終わるのから長期のまでより取り見取りだよ〜」
「報酬が高いのにしろ、最近、使いすぎだ」
「この間の島、物価が高かったんだもん。仕方ないと思うけどなぁ」
「おまえ余計なものに使うからだろ」
「あれ、便利なんだよ〜機能性だけじゃなくってえ、見た目もいいし、高かったけど買わないと売り切れちゃったかもしれないし〜他じゃ見たことなかったからつい
……
」
言い訳を並べながら胸元に沈む頭を睨んだ。肌に触れる髪がくすぐったい。
「重い」
「んん〜ちょっとだけ
…
ねえ、知ってる? これすっごく疲れが取れるんだよ〜」
「
……
おい、嘘つくな」
感触を確かめるように顔が擦り寄る。この脂肪の塊が随分と好きなドランクは最中もやたら触っている気がしてならない。
「スツルム殿が知らないだけで彼女がいる人みんなしてもらってるって
…
普通だよ〜スツルム殿も毎日してくれたら僕、もっと頑張れるんだけど〜」
本当だろうか。いや、嘘に決まっている。しかし、スツルムが男女関係に疎いのは確かで経験の豊富なドランクが言うならもしかしてなんて思ってしまった。
傾く思考を振り払うように肩口から背中へ視線を飛ばし、つい舌打ちした。
「
…
ドランク、さっさとそれ治せ」
「え〜それって?」
わかっているくせに胸の合間から覗く金色の瞳が愉しげに歪められるのが腹立たしい。目前の耳が揺れている様も癇に障り鷲掴みすると悲鳴が上がった。
「いたい、いたいっ! ひどいよ、スツルム殿〜」
「次は捻り潰すからな」
「もお、乱暴なんだから
…
後でちゃんと治すよ、スツルム殿が〜泣きながら必死にしがみついてきた
……
ごめんなさい、潰さないで!」
ぺたりと頭についた耳を解放するとようやくかけられていた体重も退いた。
「わかったらさっさと、んっ
…
」
重なった唇に言葉が消える。
軽く触れるだけのそれが何度か繰り返され、腰を掴んでいたはずの指が背筋をなぞった。
「
……
おい、っ
……
んん、誤魔化すな
…
!」
「誤魔化してないよぉ〜ちゅーしたくなっただけだもん」
長く続けられるとどうしてもスツルムの呼吸が短くなって息苦しい。睨むとようやく唇は離れる。
「あ〜またしたくなっちゃいそ
……
」
「
……
離れろ、馬鹿」
「じゃあそんな可愛い顔もしないで欲しいな〜」
ひどく嫌そうに表情を歪めたつもりである。
伸びてくる両手につい身構えた体を抱き寄せられたがそれ以外の他意はないようで腕の中に大人しく収まる。密着して伝う温もりは不快ではなく、馴染みのある香りと混じり合う汗の匂いすら厭ではないことが胸を騒がせる。同時に自身の体臭がちらりと過り、すこし隙間を開けようとしたが回った腕は太く想像以上に強固であった。
「スツルム殿、どうかした?」
「
…
別に」
仕事に大いに貢献する鋭さが厄介だと思った。
その洞察力は敵や魔物だけに発揮されていればいいのだ。胸元に額を当ててドランクの視線を避ける。
「あ、そうだ、ピアスピアス、また混ざっちゃってるね〜」
片腕を伸ばしたドランクはピアスを引き寄せたらしい。重なり合う金属音は聞き慣れたものだった。いつの間に外されたのか覚えがない。あの時はまだいつもみたいに耳元で鳴っていた。高くあげられた腰。枕にしがみついて。後ろから。
思わず記憶を辿りかけてやめた。体が暑い、気がする。ドランクがひっつくからだ。
そのドランクは何処か触っていないと気が済まないのか臀部に指を這わせては感触を確かめるようにゆるゆると手先を動かしていた。制止を込めて甲を抓ると腿に変わっただけで懲りる様子はない。諦めて手の中のピアスに目線を変えた。ドランクはわかるらしいがスツルムには同じものにしか見えない。
「
……
別にどっちでもいいだろ」
「でも一応、ね
…
多分、スツルム殿のこっちかなぁ
……
これ、一回磨いてもらったりしない? 金具のとこもガタがきてるかもしれないし」
「
……
ああ」
摘まれたピアスが耳につけられていくのぼんやり待ちながら小さな欠伸を噛み殺す。
「スツルム殿、眠い? 疲れちゃったもんね、お風呂は起きてからにする?」
「ん
…
」
「今、入るの? じゃあお湯張ってくるから待っててね」
広い掌が頭を撫でた。額に口づけを落とし寝台から降りた背中が遠ざかる。眠気と疲労を自覚すると嘘つきを糾弾する気力が削がれて、嘆息だけが敷布に沈んだ。
戻ってきたら一緒に入ると言い張るに違いないドランクを退けるのすら億劫な気がした。
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