桜崎
2020-05-20 12:49:55
2601文字
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紅と蒼

ドラスツ。pixivにあるドラスツ小話の赤い瞳をした猫のおまけ的な。団長帰ったあとの話。
他者からみると普通に見えるけどスツルム殿からみるとなんかおかしいって分かられてるドランクいいよね…

 手に収まるほどの小さな包みを受け取ったドランクは思案していた。あまり見ていたいものでもないのでポケットに早々しまったが本心では彼女の目に触れる前に処分してしまいたいくらいだった。しかしいくらなんでもこの程度で大人気ない。年端もいかない少年相手に心が狭すぎる。
 先ほど、彼女が根を上げるまでずっと仲良くしていたわけで、惚けたスツルムから滅多に言われない好きだ、なんて言葉に舞い上がっていたくらいなので向けられるその感情に何の疑いも持たないのだが、それはそれ、噛み砕きにくい黒々とした嫉妬をどうしても持て余す。
スツルムもあんな子供を誑かさないでほしい。彼女は恰好いいから仕方ないけれど。
 少年が懸想している可能性は否定出来ないが単純に何かのお礼でもおかしくない。しかしこの包装は有名な装飾品の店でドランクもよく知っている。スツルムのことだ、貰ったものを無碍にはしないだろうから必然的にドランクは他の男からの飾りをつけた彼女を常に見なければならなくなる。それはなんだか面白くない。視界にちらつくたびにドランクは悋気と戦わなければならなくなるだろう。
想像に表情が消えた。
……ドランク、誰だったんだ?」
不意にかけられたかすれ気味の声色にドランクはいつものような微笑を飾り、大きめのシャツを羽織る彼女に視線を合わせるためすこし屈む。
「もぉ〜スツルム殿、だめじゃない、ベッドからでちゃあ」
「っおい! 離せっ!」
抱き上げれば手足をばたつかせ逃げようとするが未だ気怠さが残っているのだろう、抵抗はすぐに収まる。寝台まで運んでそのまま彼女を膝の上で横に抱えながら縁に座った。スツルムは、諦めたのか気力がないのか大人しくドランクに身を預け、耳を傾ける。
「ほらぁ、よろず屋さんから伝言があったでしょ〜お仕事の話を団長さんがしにきたんだよ」
「ああ、そういえばそうだったな……
「受けたけど大丈夫だよねぇ〜?」
前髪に触れて軽く口付けると鬱陶しそうに睨まれた。
「別に構わない。あそこの騎空団で何か問題が起こることもないだろ」
赤い髪の毛を梳いては指を通して、往復。薄ら濡れていてその冷たさが気持ちいい。
……なんだ、さっきから」
「ああいうことした後、いちゃいちゃしたくならない?」
「ならない。あんまりべたべたするな。鬱陶しい」
「つれないなあ〜お風呂まで一緒に入ったのにぃ〜」
「あれはお前が勝手にっ!」
叫んで咳き込むスツルムにごめんごめんと繰り返して宥める。あんまりからかいすぎると触らせてもらえなくなるのである程度で引き下がらなければならない。何発か拳を振るわれたが彼女は膝から下りる様子はないのでそれで怒りは鎮火されたらしくほっとする。もうすこし、触れていたい。
 耳を指でなぞる。小さな金属音。
「これ、ずっとつけてくれてるの嬉しいなあ」
……貰い物をそんな簡単に捨てるわけないだろ」
……スツルム殿はそうだよねぇ〜」
ならばこのポケットに入っている贈り物も大切にされるだろう。
 つけて欲しくない、だとか我儘を言えば叶えてくれそうな気がしたけれどそんな子供っぽい真似も蟠る醜い想いもあまり彼女に晒したくない。
諦念にポケットに手を入れる。
「そういえばこれ団長さんからだよ〜スツルム殿にって」
包みを渡す。彼女は緩慢な動作でそれを一瞥し、再びドランクに押し付ける。開けろということだろうか。
あまり気が進まない中、包みを開くとやはり入っていたの装飾品であった。紅い石のピアスに彼女の色だと思う。それが並ぶのが想像以上に厭で笑みが崩れそうになる。
……つけた方がいいよねぇ〜?」
他の男からの贈り物をつけてあげるなんて馬鹿みたいだ。だけどドランクはいつもみたいに可愛いよって笑わなければならない。
……気が進まないなら別にいい」
……そんなことないよぉ〜似合うと思うし」
見透かされたようでどきりとする。誤魔化しに心にもない言葉を重ねれば、引ったくるように奪われる。
……もういい、離せ、寝る」
硬い音は有無を言わせない。緩めた腕からスツルムは抜け出して一人寝台に潜り込む。もそもそとドランクも隣に横たわったが背中を向けられて空いた一人分が寒々しい。
……いらないならはっきり言え、ばか」
掛布でくぐもっていたがたしかに聞こえた。耳はいいので。
距離を詰めて顔を覗く。眉間に皺。
……え、もしかしてそれ、僕のだったりする?」
………お前以外ここに誰がいる」
「そりゃあ僕しかいないけど、それ団長さんからスツルム殿へのプレゼントじゃないのぉ〜!?」
「何を言ってるんだ、お前は。引き取ってきてもらっただけだ」
「え、え? じゃあ、本当に僕の!?」
「お前に渡しただろ! 気に入らないみたいだしもういいだろ、喚くな、あたしは寝るんだ、うるさい」
「やだやだぁ〜僕のでしょ〜ちょうだい〜!」
彼女の体を後ろからまさぐれば悲鳴が上がった。なんだか柔らかいとこに触れた気もするが不可抗力だ。
「おいっ!やめろ!」
「あ! あったぁ〜」
取り返されぬ内にドランクは手早く耳に飾る。振り返って真っ赤な顔で睨め付けるスツルムにすねを蹴られて痛いがその程度、我慢出来ないわけがない。嬉しさでとっくに相殺されている。
……いらないんじゃなかったのか、お前、変だっただろ」
「ううん、いいの。全部勘違いだったからぁ〜ごめんねぇ〜スツルム殿大好き〜」
その体躯を腕で囲うと余計、小さく思える。密着すれば逃げ出そうと身じろく彼女の口を塞ぐ。好き勝手蹂躙して、唇を舐めれば彼女はあまり上手でないので酸欠でぐったりしていた。涙目で睨まれたってなんにも怖くない。ずっと下手くそのままでいい。
「これ僕がこのお店、話してたからでしょ? つれないけどちゃあんと話聞いててくれてるんだよねぇ〜」
……うるさい、だまれ」
「やだあ、だまらないぃ〜好き、スツルム殿〜」
隙間なく胸元に抱きしめる。彼女はもう抵抗しない。面倒になったのだろう。頭を撫でる。耳、に唇を寄せればさすがにはたかれた。
「ねぇねぇ、スツルム殿にもおんなじの買ってきていいかなぁ? 蒼いの、つけてほしいなぁ〜」
返事はない。けれど否定ははっきりと彼女は口にすることを知っているのでドランクは大きく耳を振ってその紅を煌めかせた。