三毛田
2025-11-27 22:16:54
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89 089. 振り子のように不安が揺れる

89日目
でもそれもなくなる

 揺れる揺れる。
 不安と安堵の間で。
 本当に俺でいいのか。彼が好きなのは、別の人間なのではないかと。
 疑ったところで、聡い人だから直ぐにバレてしまうだろう。
 ああ、でも。
 あの時、あの瞬間。
 出会っていなかったら、こんな気持ちを抱くこともなく。美しい景色を共に見ることもなかったし、秘密も知ることはなかった。
 男は度胸!
「丹恒先生。今時間あるか?」
「改まってどうした」
「って。何やってるんだよ」
 善は急げとやってきて資料室へ入ると、丹恒はコンソールの前に立っていた。
「休めって言われてるだろ」
「だが。護衛の仕事がないのなら、アーカイブの整理くらいなら……
「それも駄目〜!」
 わかってない、わかってなさすぎるだろ!
 列車のみんなから、仕事禁止と言われたので別の言い訳になる言葉を並べようとしているのが、手に取るようにわかる。
 俺なら部屋から出るなと追われたら、部屋の中でゴロゴロしたりコソッとゲームするくらいに留める。けど。
「丹恒。アーカイブの整理も、俺から見たら仕事だぞ」
「うっ」
 指摘すると、気まずそうに肩を揺らして。
 やっぱりその自覚があったんだな。
 丹恒に、本当に俺でいいのか訊ねようと思ったのにこれじゃあ駄目だ。何を聞いてもはぐらかされてしまいそう。
「俺の部屋に閉じ込めます。姫子たちにはこれから許可貰うけど、絶対許してくれるね」
 コンソールをスリープモードにして、手を取って資料室を出る。
 ラウンジで掃除をしていたパムに、丹恒が休んでなかったから数日俺の部屋に閉じ込める旨を離すと、耳を浮かせながらお説教。
 その間に、姫子とヨウおじちゃんにも同じことを伝えると、二人とも困ったような表情。
「そうね。あんたが様子を見てくれるなら、安心出来るわ」
「そうだな。それがいい。お前が依頼に出る時は、俺が様子を見に行こう。資料を渡しておけば暫くは、部屋から出る気もなくなるだろう」
 眼鏡を光らせながら、ヨウおじちゃんはそんなことを。
「穹」
 ラウンジでは我慢していたみたいだが、部屋に着くと恨めし気な声で俺を呼び。
「なに?」
……恋人に、ひどい仕打ちをしたと思わないのか」
「こっ」
 恋人!? 本当に恋人でいいんですか!?
「ひっ」
 ギラギラした目を向けると、丹恒は悲鳴を上げて一歩後ずさる。
「本当に恋人ってことでいいんだな?」
 肩を掴むと、視線をあちこちに動かした後に頷く。
「お前だから、思いを告げたんだ」
「嬉しい……
 与えられた幸せを一人噛みしめた。