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たもヤロウ
2025-11-27 17:12:45
4985文字
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サイテリ二人旅 人食い花編
サイテリで【SS:人さらい】の失敗TAKE
ヴィクターホロウ。
ウッドランド最大の町でありダスクバロウへ向かう途中に位置する。古の遺跡に眠る資料を求めて旅立ったものの魔物が強力で消耗を余儀なくされたテリオンとサイラスはこの町に休息を兼ねてしばらく滞在することを決めた。
だが、そんな折事件は訪れる。どうやらこの町で行方不明者が出ているらしいのだ。宿屋で”仕事”に出て行ったテリオンの帰りを待ちながらサイラスはこの案件について考えていた。
(ふむ・・・町の出入り口にいつもいる町民は犯人を見ていないらしい。ということはヴィクターホロウ森道には出ていないのだろう・・・あとは洞窟の方につながる道もあるらしいがそちらには教会があり酒場から近いこともあって人も24時間いる・・・ここの線も薄いな。となると町中に潜んでいるのだろうか?)
「サイラス、戻ったぞ」
「やあ、お帰りテリオン。収穫はあったかい?」
「ほどほどにな」
部屋の扉が開き、入ってきたテリオンの道具袋には少しジャムやザクロ等が増えているようだった。だが以前から狙っていた大聖火のローブはやはり今回も盗れなかった様だ。
むろん盗みを肯定するつもりは毛頭なかった。しかし彼の生きてきた軌跡を想うと否定する気にもなれなかった。それはこの旅の間ずっと考えていたことなので今更だろう。自分もしっかりその恩恵にあやかっているのだ。盗公子エベルとはこういった存在だったのだろうかと十二神の一柱である神が頭を過ぎった。
「それともう一つ情報があった。行方不明になったエリーとかいう女の父親から話を聞いたんだが・・・この町には還らずの森とかいう物騒な名前の森が隣接しているらしい。用事でたまたまその付近にいた娘が突然消えたんだと。だがこの森自体結構な強さの魔物がウロついているらしく地元民でも滅多に足を運ばないそうだ」
「なるほど・・・それはたしかに一番クロに近い。旅人は存在を知らない。地元民は足を向けない・・・格好の場所だが森自体が危険となると犯人にとってもリスクが高いね。それに人を攫って何をするつもりなのかもわからないな。特に要求が来ているとか重要人物が消えたとかではないのだろう?」
「特にそういった話は聞かないな。・・・まあ俺はあんたと違って探ったりはできないんでね。表面の情報しかわからん」
「いや、十分ありがたいさ・・・私がそもそもこの事件の謎を解きたいと言ったからキミは協力してくれてるんだしね」
「確かに俺だけならさっさと休んで目的地に発ってただろうな・・・とはいえ人が消えてるんだ。いつぞやのクオリークレストみたいなことが起こってても困るだろう?なら解決しておくに越したことはない。俺だってさすが人が死ぬことを黙って見過ごすのは良しとしないぞ」
十二神の試練が終わった後もテリオンはサイラスの元を離れてはいかなかった。今は細々とした雑用やこういった資料探しの護衛としての助手を立派に勤めてくれている。宣言通り、アトラスダム以外での盗みをやめることはなかったがサイラスにとってはテリオンが傍にいてくれるということが嬉しくてたまらなかった。
生来の人の良さがあったのだろう。彼は誠実であったし人助けなども積極的に行うようになっていっていった。そのためアトラスダムでもサイラスの助手としての信頼と実績を着実に重ねていっている。こうして人々に認められていけばこのままずっと共にあれるとサイラスは信じて疑っていなかったのだ。
今回の事件もサイラスが解決したいと申しだせば、テリオンは解決できるまで滞在することを了承し、積極的に情報収集もしてくれていた。そしてついに森という情報を掴んだのだった。
「とはいえあそこの魔物は強力らしいからな。行方不明者が心配とはいえ様子見も一人では厳しいと思ってあんたに知らせに来た。いけるか?」
「もちろんだ。可能な限りの物資を持っていこう。私は神官になっておこうか」
「俺は魔術師になっておくか。いざという時に属性は網羅できていたほうがいいからな」
「あれは・・・」
「行方不明だったエリーとかいう女か。特徴が一致する。ビンゴだな」
「よし・・・接触して・・・っ!魔物の気配!?しかも強大な!」
森での対処は順調だった。学者や魔術師の攻撃で怯みやすいものが多く油断さえしなければやられる心配は無さそうである。
こうして無事に最深部にたどり着いたサイラスたち。しかし行方不明者を発見したもののサイラスは魔物から発せられる殺気を感じ取った。
やがて現れた魔物は巨大な花であった。禍々しい生命力に溢れそんじょそこらの魔物とは格が違うことははっきりと見て取れた。共に現れた粘菌も花ほどではないが大きくて力強くこちらもまた強力な魔物と判断した。
(こいつは・・・うごめく大花だったか?しかしこんな禍々しい。しかもこの粘菌は・・・)
「うっ・・・うぅ・・・助けて・・・旅人さん・・・あの魔物に襲われて・・・周りの人達はだんだんと食べられて・・・あ・・・あぁ・・・」
「あんたがエリーとかいうやつだな?サイラス!こいつだ!人を攫っていた犯人は!」
「なんと・・・植物が人を食料として!?まさかうごめく大花の危険変異種!人食い花か!」
「取り巻きらしき粘菌もいる・・・くそっこいつは逃げられそうにないな・・」
気付けば周囲が蔦や根に囲まれ森から出る逃げ道は全て塞がっていた。どうやら人食い花が獲物を逃がさないために張った遮蔽物のようだ。内部にはよく見れば肉塊や動物の骨などが転がっている。飛べでもしなければとても出られそうになかった。
(思えば動物は鳥類しかいなかった・・・地上を歩く動物は皆こいつに食われちまって獲物がいなくなったから森の付近をうろつく人間をターゲットにしてきたってところか)
「こいつを倒すしかないか・・・!」
「しかしこれは私たちまでまずいかもしれないね。うごめく大花はかなり強力な魔物だ。それが蔓延るここが還らずの森なんて呼ばれる理由もよくわかる・・・そして人食い花はその大花がさらに強く凶暴になったものだ!油断してはいけないよテリオン!粘菌も相当に強いからね!」
「ライフスティールダガー!!本体に短剣は効くようだな」
「あとは火か・・・しかしこの花かなり俊敏だ!エリーさんは安全なところに隠れててくれ!」
「は・・・はい!でもその花は・・・弱点を変更します!気を付けて・・・!」
「思わぬところから有用な情報が来たね!ありがとうエリーさん!テリオン・・・テリオン!?どこだ!?」
「ぐぅっ・・・!」
サイラスは周辺からテリオンの姿が消えていることに気づいた。呻き声の方に意識を向けようとしたが魔物の猛攻に気を取られだんだんと追い詰められていく。
テリオンは人食い花の蔦に縛り上げられなすすべもなく宙に浮いていた。地上で猛攻を受け傷付いていくサイラスの姿を見ていることしかできない。助け出されるまで何もできない己に歯噛みした。
(くそ・・・っ致命傷にはならんが締め上げられて振りほどけない・・・!これじゃ何もできない・・・!なんとか隙を見つけて逃れなくてはあいつが・・・!あいつが傷つくのは嫌だ・・・!)
「よし・・・ここだ!火炎よ、焼き尽くせ!!」
(ここだ!)
ジャムにより体勢を立て直したサイラスの放った炎が人食い花に一瞬の隙を作る。その隙を見逃さなかったテリオンは蔦を引きちぎり無事に脱出することができた。
「助かった。この隙に立て直すぞ!」
「ああ・・・キミもジャムを食べておくといい。戦況はまだまだ厳しいからね。そして弱点は・・風だ!任せたよ!聖火神エルフリックよ!」
「ああ・・・サルター・ウェントス!」
テリオンの放つ風塵魔法はサイラスの足元にも及ばない威力である。しかし隙を作るには十分な効果を発揮した。
相変わらず周りの蔦や根は健在であり、魔物と同等の耐久性があると考えると壊して逃げることは不可能である。二人は迷わず粘菌目掛けて最大火力を繰り出した。まずは戦況を有利にしようと数を減らすことを狙ったのである。
「よし!ここで畳みかける・・・!マジックスティールダガー!」
「雷鳴よ!轟き響け!」
魔術師で使い果たした魔力を盗賊の技で補給し、サイラスは学者の技能を駆使してダメージを与えていった。しかし粘菌も非常に耐久力が高いのかいまだ倒せる気配を見せなかった。そして人食い花が体勢を立て直し再び戦況が悪化していく。
テリオンは特大光明魔法を習得できていなかった。経験が足りなかったのである。
「弱点は・・・・・・剣と光!」
「コングレアー・・・くそっ!やはり無理か!俺の力ではまだ光魔法が使えない!」
「私が光明魔法で削る!キミは周りを風塵魔法で怯ませていってくれ!」
幸い粘菌の数は集中攻撃の甲斐もありなんとか減っていった。いよいよ人食い花本体だけになり、テリオンは剣、サイラスは聖なる光を駆使しザクロやジャムを食べながらどちらかが攫われたときにすぐさま怯ませるという戦法によりいつ終わるかわからない戦いに身を投じていった。
だが人食い花が奇声を上げ様子が一変したことによりこの均衡は崩れ去ることになってしまった
「煩っ・・・なんだ・・・?様子が変わった?おいサイラス!辺りの様子がおかしくないか!?」
「この気配は・・・まさか粘菌の増援が来るのか!?テリオン!風塵魔法の準備を!」
「わか・・・・・・!?」
サイラスの読み通り粘菌は現れた。しかし人食い花は消耗した体力を回復するため食事をとることにしたようだった。攫ってきた女・・・の姿が無いことに気づいた人食い花はターゲットを改めた。若い 引き締まった 青年の 肉を
ぐちゃ
「サイっ・・・あ?・・・ひっ・・・あぐ・・・ああ・・・ぐああああああ!!!!!!!!・・・・・・ぁ」
「・・・・・・・・・え?」
一瞬であった。その巨体からは考えられない俊敏さで人食い花はテリオンの下半身を食い破り、咀嚼し飲み込んでいく。
破れた腹から内臓が出てくる。旅で鍛えた引き締まった筋肉がぐちゃぐちゃになっていく。花の口から赤い液体が滴り落ちる。ぶちぶちという繊維がちぎれる嫌な音がサイラスの耳に残った。現実とは思えないぐらいふわふわと視界が揺れる。頭が何も考えらえれなくなる。目の前の青年をどうにかして助けたいのに凍り付いたサイラスの頭脳は何の答えも出してくれなかった。
やがて下半身がちぎれ飛び、上半身だけになったテリオンが口から逃れサイラスの目の前にべちゃりと落ちた。反動で真っ白い神官服に血飛沫が跳ね、サイラスを赤黒く染める。地面に赤い血だまりが広がる。どこからどうみても手遅れ
――
死ぬ寸前の様態だった。サイラスの頭は動かない。
「か・・・ひゅ・・・ヒュウ・・・ゴボッ・・・ぁ・・・さ・・・ら・・・たすけ・・・にげ・・・」
そして間もなく目から光は消え、息を引き取り、物言わぬ骸と化した。
(たすけ・・・・・・?今助けてって言ったかいテリオン?もちろんだ。キミを助けないなんて選択肢があるわけないだろう?ああ!キミから助けを求められる日が来るなんて!)
「ほらテリオン・・・特大オリーブだよ。食べるんだ」
骸は口を開かない
「聖火神の御業で救いたまえ!」
死んだ者は戻らない
「治してあげよう」
失った肉体も魂も修復できない
「は・・・はは・・・あ・・・うあ・・・ぁあああ・・・・・・!」
サイラスに少し理性が戻った。戻ってしまった。そして理解した。愛しい者を目の前で永遠に失ったのだと。
そしてその発端はこの事件を解決したいなんて言い出した自分にあるのだと。
後悔した。希望を失った。こんな何の役にも立たない自分なんていらなかった。
人食い花と人食い粘菌の凶刃が呆然としたサイラスに迫る。が、絶望したサイラスにとってはもはやどうでもよかった。
流れに身を任せ自分の身体が引き裂かれる感覚を味わいながらテリオンとまた会えることを願っていた
痛みは何故か無かった
―――
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