【可惜夜廻*爾】其の弐-2

『「すみません、よくわかりません。」』
現行未通過×
※夜廻パロ

 カンジは今日もまた、異常なことに目が覚める。眠気が残る意識を揺らしながら、身体を起き上がらせた。すぐ傍には、手を握るソウゲツ。どうやら今は深い夜のようで、彼の目は閉じられていた。目元に僅かな腫れが見えて、酷い心配をかけたことに罪悪感を持つ。


……?」


 ソウゲツの手をゆっくりと解けば、玄関の方向から呼ばれるような気配を感じた。具体的な言葉を聴いたわけではない。例えるなら、夜の呼び声に誘われるような錯覚。酷く異質な体験だが、身体はゆるゆると玄関へ向かっていた。

 玄関前に立つ。静かに靴を履き、ドアノブに手を伸ばす。そこで漸く、自分が強制的に導かれていたことを知覚した。途端に溢れる、眼前に迫る大いなる恐怖。


……


 それでも、扉前から伝わる呼び声は止まない。無視できるほど弱くないその強制力に抗いつつ、それを見ようとドアスコープを覗き込んだ。少しでも未知を和らげ、畏怖を薄めるために。

 立っていたのは、一人の男だった。薄暗い中で光る彼の赤い瞳が、ドアスコープを越してこちらを見ている。また、大きな何かを背負っているのが分かった。その巨大ななにかに、カンジは強い嫌悪と好意を抱く。相反する強烈な衝動で、喉から引きつった声が漏れた。

 声に気付いた男が、言葉を紡ぐ。


「夜分遅くにごめんなさい。タイショウさんはいらっしゃいますか」


 分かりきった問いかけは、表面だけは優しいものだ。けれどカンジはそれに言いようのない違和感を得る。穏やかなだけではない、かと言って悍ましくもない。異様なことに、それの内側が何一つ得られなかった。


「もし、貴方がタイショウさんなら……お願いがあります。
 明日の夜二時、一人で駅に来てください。日中は動けないでしょうから」


 一方的な言葉だけを置いて、気配は消える。はたと気が付けば、いつの間にか玄関口にへたり込んでいたらしい。生まれた恐怖は、けれど真実へ近付く歓喜が混じっていた。正しい意味で気味が悪く、胸の内側がぐずぐずと疼く。