三毛田
2025-11-26 22:20:25
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88 088. つぎはぎになった思い出

88日目
思い出せないけど、君は大切な気が

 思い出そうとすると、ひどく頭が痛む。
「どうして戻ってきたの? 君の居場所はここじゃない。聞いて」
 必死に逃げてたどり着いたはずの場所は、ループの始め。
 でも、先と違うのは、傘を持った女が一人。
 彼女は驚いたような声を出した後、俺の耳元で何かを呟いた。
「ここ、は……
 見慣れぬ場所。でも、地獄のようなループからは抜け出せたのだと、はっきり分かる。
 周囲を警戒しながら、ゆっくり歩く。
「っ」
 不意に目の前に槍先が現れ、半歩下がる。明らかに目を狙っていた。
「お前か。何処に行っていた」
……
 黒髪の青年は、軽く眉を寄せながら問いかけてくる。
 明らかに俺を知っているのに、警戒の色は消えておらず。手にした槍を下げない。
「あの……
「なんだ」
「俺って、誰?」
 目の前の青年は、驚いたように目を丸くして。
 それから、槍先がゆっくり下ろされる。
「そうか。そんな状態なのか……
「あの~」
「ああ、すまない。とりあえず、一緒に来てもらおうか」
「は、はい」
 温度のない声色に、体に力が入って。自然と姿勢が伸び。
「あの……
「なんだ」
「名前、教えてもらえ……ますか」
 言葉も敬語になってしまう。
「丹恒だ」
「丹恒」
 なんとなく、懐かしい気持ちになって復唱。
「丹恒」
「どうした」
「呼んだだけ、です」
……
 俺が名前を呼ぶとどうしてか、泣きそうな表情。
 途端、頭が痛んで。あまりにも痛くて、しゃがみ込む。
「おい」
「うう……
 痛くて痛くて、意識を失った。
……ここ、は」
 痛みが和らぎ目を開くと、見慣れぬ天井。
「お前の部屋だ」
「俺の、部屋?」
「ああ。気分はどうだ」
 ゆっくり体を起こすと、額の上から何かが滑り落ち。
 触れると、濡れたタオル。
「なんで?」
「ああ、それか。倒れて熱を出していたからな。どうだ。熱は引いたか」
 そっと前髪を上げ、冷たい手が俺の額に触れて。
 彼の気持ち良くて、目を細める。
 これ、何だか覚えがある。どこでだろうか。
「お前は、どうしてあそこにいた」
「ずっと、知らない場所をループしてたんだ。そしたら、傘を持った人と会って」
「それで?」
「その人に会ったら、ループを抜けられた。で、その後、丹恒に会った」
「なるほど。記憶喪失の原因は?」
「わからない」
 そう呟くと、彼は泣きそうな表情になって。
 そんな顔させたくないのに。という感情がこみあげて。
「丹恒、泣くなよ」
 自然と手が伸びて、彼の頬をそっと撫でる。
「お前に泣かれると、困る」
「泣いてないっ」
「ええ?」