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asahito
2025-11-26 22:00:19
5371文字
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Corpse Reviver②
前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
一部R18です
続編である今作の第1章(錦上京キャラ中心)はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/14625442
一部R18です
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
前の話では可哀そうなシーン多かったですが、阿梨夜さんは有能で仕事熱心です。
休日はなるべく仕事の事は考えたくないが。日常生活でも目に入って来る身近なものが仕事に関係する場合は、忘れるのは難しい。
その上気になると突き詰めたくなる職業病が伴えば。道端に転がっている小さな石ころですら研究の対象として持ち帰りたくなる。
全ての物は必ず生まれた時があり、そこに残り続ける物は。人間のような有機物でなければ恒久にそこに在ることができる。
肉体は腐り落ちても、骨は残り遠い未来の研究者たちにメッセージを残す。その辺にある石や岩も落ち葉も。
数千年後には貴重な情報源としてどこかで展示されているかもしれない。
それを、私は見ることがないとしても。今ある当たり前が貴重な記憶になるのを見届け託すのは未来の同じ職業の人間達だろう。
ならばその人々が困らないように今の私が情報を残すべきではあるが。
残すべき情報すらどれを残せばいいのか分からない時は、思わず降参寸前で頭を抱えてしまいたくもなる。
「何か見落としてるのかしら
……
」
だめだ。どんな文献を漁っても。どんな論文のデータベースにアクセスしても。一向に類似したものが出て来ず、培った知識は役に立たない。
カタカタとキーボードを叩きつつ論文を眺めるも。国内はおろか海外の論文でもまったく糸口が掴めない。
私よりも知識を持ち生き字引のような上司や先輩方ですらお手上げという状況。
いつもなら私に色々知恵を授けてくれるのに、逆にどうやってあの相手と知り合ったんだ、連絡先を教えてくれないかと頼み込まれる始末だ。
あの人の連絡先が分かるなら。すぐにでも電話でもメッセージでも送って聞きたいことを全て聞いてやるわよ。
だけどあの人が用紙に残した連絡先はあの一族の窓口みたいなところの連絡先だし。掛けたところで個人に繋がるような案内はしてくれない。
勾玉や石の作品の注文なら承ると最後は言われておしまい。私の家柄を知っている一族だとは思うけど、そういうのに靡くような輩ではなく。
己の技術を信じ研鑽こそすべての職人集団である以上は、私自身があの職人集団に弟子入りでもしなければ無理だろう。まず血縁的にお払い箱だが。
私の連絡先はもちろん渡している。だけど、あの人から電話が来たりすることは一度もないし。
あのバーを教えてくれたのも、私の仕事場に用があってやって来た時に直接口頭で伝えてくれたのだった。
店の名前とだいたいの位置を教えて貰えれば後は勝手に調べられるから。
「
……
あの店主」
バーの事を思い出してみると、あの人と繋がってそうな人間は身近にいることにふと気づく。というか何故今まで思いつかなった。
机の本立てから名刺ファイルを取り出し、あの店主に貰った名刺を見つける。そこには店の名前と店主の名前、メールアドレスはあったが。電話番号は流石にない。
なら常連になって取り計らってもらう方法を取るべきか、とも思うが。あの店主はみだりに他人の情報を教える様な人柄には見えない。このご時世だ。
それに、あの店主があの人の連絡先を知っている保証なんてないじゃない。
次にあの人が私の職場に現れるのはいつかなんて分からない。いつだって、ふらりとやってきては貴重な石や化石を自慢してきて。
それについて私が長々と話に付き合わされる。遠い血縁であることと、話を聞くのが上手だからという理由でそうなっている。
すぐ追い返せばいいじゃないかと思うだろうが、あの人が持ち込むものは価値のあるものばかりだから。
職場では正体はとんでもない人物ではないかと、色々噂の絶えない方でもあるのだ。
そんな人とあのバーの店主は親しくしていると言うなら、本当にあの店主はどんな手段や出来事で知り合ったというの?
どう見ても石とか鉱石に興味があるような人にも見えないし。鉱石に関しては拒否反応のようなものを見せるくらいで、苦手なようにも見えた。
お酒や美味しいメニューに対する向上心は敬うべきくらいだけど、学術的な論文を好むような雰囲気の人でもない。
もっと華美で煌びやかな衣装を着飾って。都会の真ん中でお洒落や美の楽しさを求める様な、そんな姿が似合う人間。
「あのお店に通ってみるとか」
名刺を眺めながら常連になり、あの人と偶然出会えるようにしてみようか。そうすれば何とかあの人と会うことは出来るだろう。
学術的な話をあのバーでしてはいけないから、どこかで場所を移して
―
「何、また行きたいの?」
慣れない作戦を練ることに没頭していると。背後から突然声がして思わず悲鳴を上げかける。
大きな声を出すと近所迷惑になるということを思い出し、掌で口を覆いなんとか悲鳴は鳴らずに済んだ。
「ユ、ユイマン
……
いきなり入って来るなんてどうしたの」
振り返るとユイマンが両手にマグカップを持って私の後ろに立っていた。
閉めていたはずのドアはいつの間にか開いており、部屋に入った時に確かに私ドア閉めたよね、と疑問に思うと。
「ノックはしたんだけど
……
返事なかったから寝てるかと思って」
私の悪い癖で論文や調べものに没頭しているうちに、いつの間にか机の上で突っ伏して寝てしまうもの。
ユイマンは何度もそれを見ては起こしてベッドで寝なさいと言ってくれるので、今回もそのパターンかと思い部屋に入ってきたのだった。
「
……
あ、ごめん。本とか読んでた」
論文や調査に没頭するときは彼女に一声かけてなるべく部屋に入らないで欲しいとは言ってはいるが。
万が一の事を考えてユイマンは時折様子を見に来てくれるのである。差し入れを持って。
「勝手に部屋に入ってごめんなさい。コーヒー淹れたからどうかなって」
そう彼女は謝罪するが。気分を切り替えるにもコーヒーを持ってきてくれたユイマンには感謝すべきだろう。
湯気の立つマグカップを受け取って机の上に置くと、ううんと背伸びをする。豆の香ばしい匂いに雁字搦めの岩頭も少し解れそうだ。
「本って、この前注文してた本?」
「それもあるし過去の論文とかも見てるんだけど」
あの人が少し前に持って来た形状も色も異なる石の数々。最近の私を悩ませているのは、ほぼそれだ。
開催された化石の大規模展示は好評でそちらの対応やトラブルも大変ではあるが。来館者の学びになれば別にいい。誰も見に来ない方が辛いし、寂しい。
大規模展示は慣れてくれば他の作業に取り掛かることもできるため、あの人が持って来た石の解明に取り組もうとしたのだが。
私では太刀打ちできず、最近うちの職場でみんなが躍起になっているほどだ。誰もまだその正体を突き止められない。
宝石のようにも見えるが装飾の為に作られたようにも見えず。いつの時代に作られたものかも特定ができない。だったら、悪戯で最近の物質で作られたものではないかとも疑われたが。それも異なった。
何の物質で作られているかもわからず。いつの時代に作られたのかもわからず。そもそも、この物資はこの世界に存在するものなのかも怪しいと。
未だ難航する研究に全く手掛かりはなく。楽しくはあるけど、じれったさもあり。煮詰まった頭で部屋に閉じこもっているとそのまま石化しそうだ。
机の上に散乱した本を見て私の精神状態を理解したのか、ユイマンは半ば呆れたような表情を見せる。
「研究熱心なのはいいけれどそんなごちゃごちゃで頭の中の整理できるのかしら」
気持ちはわかるけどそんなド正論を投げかけないで。本の片付けは定期的にやってるんだから。
「
……
はは、整理できたら苦労はないね。信用できる人の寄贈だからある程度情報あるかと思ってたんだけど手ごわくて」
あの人、定期的にうちや歴史の方の部署に石や化石を寄贈してくれるし。
前提のしっかりした情報もくれるから今回も大丈夫だと思ったんだけどなあ。今回はよくわからない石見つけた、だけ言ってその他一切分からないってなんなんだ。
本当に分からないならバーで偶然会っても分からないって言われそうだな。でも、あの口ぶり
―
何か知っているようで、奥底が分からないから。
「寄贈?」
「うん、博物館って色々寄贈してくれる人もいるんだよ」
公務とはいえ、その寄贈や寄付で成り立つ部分も大きい。私たちだけでは集めきれないものは沢山あるし、まだ家や地中に眠っている所蔵すべきものもあるだろう。
「蔵の整理とかのためにゴミ捨てがわりにやりそうな人もいそうだけど」
「ゴミ捨ての中から貴重なものが見つかることもあるから。うちは剥製や標本が多いかな」
一般家庭や廃校に置かれていたその辺にありそうな標本が、とんでもない価値を持つこともある。
教師をする傍ら研究をしていた方の遺族から処分に困る、と持ち込まれたものもたくさん見てきた。
「特に地方の生態についてはそこで暮らしてた人の方が地の利がある分、事細かに記録されてるから助かるし」
どんなに知識を寄せ集めても、その地に根付く人々の見てきた量には敵わない。
私も山なら平野で育った人たちよりも詳しい自身はあるけど。獣たちの動向について足跡や臭いで追う能力は、ユイマンには敵わないだろう。
「うちの実家にもそういうのないかなあ。自分の家に宝物が眠ってたら面白そう」
「価値があると逆に揉めることもあるけどね
……
」
有名な人物の末裔の方々は管理や相続で苦労していると聞くし。博物館の方だって、寄贈されたものを管理するのには莫大な労力がかかる。
不変の維持のためには絶えず変化を求められる。維持をする方は変化し続けるからだ。
少し喉が渇いたので熱いコーヒーを啜る。苦さと、香ばしさが鼻と喉を抜けていき。ほうと溜息をつく。思った以上に考え込んでいたらしい。
「そういえば今の調査とバーの店長さんはどういう繋がりがあるの?」
「え?ああ
……
」
こっそり店主と名刺交換したことは彼女には言っていなかった。そのことを彼女に見られたのが少々きまりが悪く曖昧な受け答えをしてしまったが。
こそこそ隠すのも変だろう。
「その悩みの種の石を持って来た人が、バーを紹介してくれた人なの」
「そういう繋がりなのね。本当その人って何者なのかしら」
「職人集団の一族でアクセサリー職人やってるって人だけど、謎が多い一族なんだよ」
祖先は神様だとか言い張ってる一族だし。あの人と私を遠い血縁というのは、私の家系も元は神様だったからなんて言い張ってるからだけど。
私が神様の子孫であるならもっと醜くない姿に産んでほしかったし。
仮にというのも馬鹿馬鹿しいが本当の神の血を引いてるなら、よほど醜い遠い先祖の容貌を私は受け継いだとでもいうのか。
醜い神
―
確かに心当たりはあるけど。遠い遠い昔の話に出て来る神の血がこの世にまで影響を与えるというのか。
「ますます会ってみたいなあ、その人。連絡先知らないのが残念ね」
「変わった人だからねえ。あんまり連絡先とかを知られると煩わしい部分もあるんじゃないかな」
ユイマンは私の部屋にあるベッドの上に腰かけると、ふうふうとマグカップのコーヒーを冷ましながら飲もうとする。私と違い熱い飲み物が苦手だからだ。
「さっきの寄贈の話だけど、阿梨夜の家には何かあったりするかな」
私の実家は家柄だけは昔から続く血筋とは言っても、神と称される先祖が子沢山過ぎるが故にいくつも分家のある家だ。
貴重なものはばらばらに散ったりするだろうし。私もあの家で何か価値がありそうな古い物を見た記憶はあまりない。
私の家は落ちぶれた血筋ではなく、成功した方の家であるか。財源の大元は今は国有林になっている山々の所有元である。
「どうかしらね。あったとしても父が博物館とかに全て寄贈して、厄介な事になる前に整理してくれてそうだけど」
国に売って資産を得た父の先代たち。父はそこから自分の会社を興し財を築いた。
妹と私をどう思っていたかは分からないけど。そういう部分はしっかりとした人だとは思う。お金に困ったことは一度もないということは、紛れもなく恵まれている。
「良かれと思って何かを残されても困るもの」
生まれつき躰が醜く、家柄の維持の縁談からも逃げ。財を成すことからも逃げ、全て拒否をした私に。
ユイマンと結婚するからと、まとまったお金をくれただけでも感謝し足りないくらいだ。
「いつか阿梨夜の御家族ともお話したいな」
妹さんとは小さい頃に何度か会ったことはあるけど、とユイマンは言う。確かに妹と彼女は子供の頃に会ったことはあるけど。
可愛いとか、綺麗だとか言われて育った妹からすれば。同じくらいかそれ以上に綺麗な彼女を目の当たりにするのは不愉快という感じでもあり。
醜い私に懐いてくっつきまわるユイマンを理解できない、という視線で眺めていたから。
美しい同士ですら抱いてしまうその悪意に。彼女が気づいていたかどうかは私も分からない。
今更気づかせてしまうくらいなら。彼女を会わせない方が、幸せだろう。
続く
魅須丸の連絡先知ってる駒草くんって実はすごいのでは?
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