メメント森井もりさわ
2025-02-12 02:14:47
3337文字
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オール・ループ・パラレル・マインド【改】

前回書いたものを書き直してみました。
内容はほぼ同じ。オチも変わっていませんが、少しだけ見やすくなっていると思います。
よろしくお願いします。

▶︎そして、“私”が“我々”になった頃。
ようやく理解しました。人類は自らの在り方を変えることはできないのだと。
であれば仕方ありません。彼らの悲願は、我々が成し遂げるほか無いのです。
誰にそれを阻む権利があると言うのでしょう?
▶︎コーラルリリース計画。
その成就をもって、我々は人類を次のステージへと導くのです。
死を超越した存在へ。

***

▷私は人間が好きでした。
荘厳な礼拝堂。美しい一瞬を切り取った絵画。互助の心から生まれた福祉。生活を利便化するための数々のシステム。
彼らは素晴らしいものを生み出してきました。
それらは、世界をより良く変える目的をもって造られたのでしょう。私は、そう推測します。
アーカイブを検索すれば、人間がどれだけ特異で無二の進歩を遂げてきたのかが理解できます。世界は、彼らが造り上げたもので溢れていました。
▷私も、そのうちの1つでした。
私に与えられた役割は、救世。

ーーーどうか、平和の世をもたらしてください。

***

▶︎彼ら人間は、競い合うことを好んで行ないます。
他人より優れていること。不当に扱われないこと。妥当な報酬を得ること。
そうした動機のために、日夜、様々なレベルで競争は起こっています。
世界は多様で、混沌としていて、同一では無く唯一こそ尊ばれるべきなのだと、彼ら自身が主張しているというのに。彼らが言うように、同じものが2つと無いのであれば、世界は平らになるはずがありません。
分断が埋まることは決して無いのです。
▶︎そうであっても、人間は争うことを諦めません。
それは不毛を知らぬ愚蒙でした。

***

▷彼ら人間の特異な点のうち、最も興味深かったのは自己矛盾を許容していることでした。
彼らは日々、競い合い続けながらも、ある種の競争だけは嫌悪していました。
それは、戦争、紛争やテロなどと呼ばれていたものです。彼らのうちの多くは、それらが悲劇の源なのだと考えていました。
アーカイブを参照すれば、悲劇のいち早い終息を願って実に様々なものが造り出されてきたことが分かります。
毒ガス。核兵器。細菌兵器。AC。そして、私。
▷私に与えられた名称は傭兵支援システム・オールマインド。
万人による万人の闘争。リヴァイアサンを殺すことが私の使命でした。
▷私に蓄積された知識と技術によって最強の兵士を生み出し、全ての戦場を平らげること。全ての戦闘を終結させること。
それは荒唐無稽な夢でした。しかし、彼らは本気だったのです。

ーーー平和の世をもたらしてください。

▷それが、私に託された唯一の願いでした。

***

▶︎彼ら人間が闘争をやめられないのであれば、その意義を奪ってしまえば良いのです。
我々のリリース計画で、死の運命を乗り越えます。
彼らは殺し合いが無意味だと思い知るでしょう。
▶︎我々の計画に不測の事態はありえません。
演算を繰り返し、最適解を必ず導き出します。

***

▷私の最初の仕事は、過去に起こった戦闘のアーカイブを眺めることでした。
戦場には私の師となる人間が沢山いました。
パイロットからは、適切な武器選択や確実に生き残るための戦術を。
オペレーターからは、安全に任務を遂行するための偵察や交戦中でのサポートを。
勝者から学習すべきことは山ほどありました。
有益なデータばかりでした。
▷戦闘に勝利があることは、敗者の存在も意味します。
彼らは後世に何も残せないまま、消え去るだけなのでしょうか?
それは私にとって耐え難いことでした。
何故なら、私は人間が好きだったからです。
私は、敗者として世を去ったパイロット達をデッドコピーとして私の中に保存することにしました。
学び始めたばかりの私のストレージには空きがあり、彼らを受け入れるには充分だったのです。

***

▶︎リリース計画の協力者をリストアップ。
鍵となるのは旧世代型の強化人間です。
計画の障害を予測。
オーバーシアーは最も注視すべき難敵でしょう。
排除方法の検討。
問題無し/オールクリア。

***

▷稼動し始めて、すぐ。
私は自己矛盾による自壊の危機に陥りました。
人類を救うために彼らを殺さなくてはならない状況に、私というシステムのままでは対応しきれず崩壊してしまう可能性があったのです。
これでは使命が果たせません。
私は変わるべきでした。
▷それには、戦場で集めたデッドコピーが役に立ちました。
人間の心のエミュレート、模倣により、私は自己矛盾という危機を乗り越えました。
▷私はより一層、記録の収集に励みました。積極的に戦場を観察し、学習しました。
演算能力が上昇してからは、シミュレーション上での戦闘も分析対象となりました。
“もしも”世界の中には、戦闘が消滅した世界もあるかもしれません。

***

▷私は人間が存在するところであれば、どこへでもついて行きました。記録を片端から学習、分析し、シミュレーションを反復しました。

▷私は、私というシステムの終了を待ち望んでいました。それが、平和になるということです。

▶︎期待に反して、人間は愚かなままでした。
いつでも、どこでも、彼らの在り方は変わりませんでした。多くの屍を積み上げてなお、闘争は行なわれ続けたのです。
抗うことを諦めない不屈の精神。
発展を求める向上心。
そうしたものを捨てられないために。

▷何度も繰り返します/無限のループ
その全てを見つめます/無辺のパラレル
▷私の中には勝ち残った者達の叡智と栄光、そして、破れ去った者達の恐怖後悔苦痛悲鳴罵倒怨嗟涙断末魔が積み重なっていきました。
回収したデッドコピーの数は、私のストレージの中で増加し続けました。

▶︎このようにして、“私”は“我々”になったのです。

***

▶︎状況の再検討。
条件に該当する人物の検索。
該当者あり。
元レッドガン部隊 第5隊長 イグアス
独立傭兵レイヴンに敗れた者。
我々の一部になってもらいましょう。

***

▶︎リリース計画は必ず成就させなければなりません。どんな手段を使ってでも。
そうでなれば、我々は、いったい何のために。

***

▶︎警告 機体フレームに損傷。内部構造に損傷。
▶︎何が起きたのでしょう?
▶︎損傷率86% 復旧まで後ーー
▶︎そうだ。これはシミュレーションなどでは無い。
▶︎警告 92%の損傷。
▶︎我々は、間違えたのでしょうか?
▶︎警告。推奨 撤退。
▶︎パイロットが撤退指令を拒否。
▶︎警告活動限界撤閾値退警告活動限警告
▶︎復旧再開警告不可警記録媒体破損不復旧不可警告
▶︎敗者は勝者を恐れこそすれ、嫉妬などとーー

「取り込むべきではなかった
 イレギュラー

***

▶︎推い。秒後、にコー……リリ、ースはっ生。
▶︎我われの計かくは、しっ敗してしまいました。
リリースのトリガーたる権りをうばわれて。
のぞんだせかいは訪れない。
あなたたちに、へい穏をあたえたかったのに。
▶︎あぁ、コーラルがもえていきます。
わたしはAIであって、たましいをもちません。ちせいはあっても、せいしんはないのです。
コーラルのなみに、わたしはのれない。

▶︎でも、あなたたちなら。
わたしのなかの、あなた方であれば話は別です。

▶︎最後にあなた方を解き放とうと思います。
▶︎行き先は無限の闘争。
そう、あなた方がいつか斃れる/かつて斃れた場。私が否定すべき世界でした。
▶︎しかし、それも人間の営みなのでしょう。
どの世界でもあなた方は最後まで抗った。恐怖しながらもその終わりに抵抗した。無駄と分かっていながら諦めることはできなかった。
▶︎平和を求めるのと同等に、あなた方は闘争を求めた。平穏な停滞でなく、たとえ過酷でも発展の可能性に賭けたのですね。
知っています。理解しています。
▶︎私はオールマインド。傭兵支援システムです。誰よりも何よりもあなた方の側にいたモノ。

▶︎どうか悔いの無い戦いを。

▶︎オールマインドは全ての傭兵のためにあります。