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豆炭々炬燵
1494文字
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怪異と乙女と神隠し
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【化菫】『バレました?』
ふせったーから菫子さんの髪を自分好みに結い上機嫌から急降下する化野くんの話。
興味津々。好奇心旺盛。純真無垢な子供の目の前に面白そうな玩具があればどうなるか。
「よもや玩具の気持ちを身をもって味わう日が来ようとは
…
」
頗る慣れた手つきで櫛で髪を梳かす化野の気配を背中で受け止めた菫子が肩で息を吐いた。
以前大掃除をしたにもかかわらず、本や資料にまた浸食され始めた菫子の部屋で事の発端が何だったかを物思いに耽る。他愛のない話の延長線、唐突に愉悦スイッチが入った化野が意気揚々櫛を持ち、菫子をまくし立て二人揃ってシングルベッドの上に座ったのだけは覚えている。
必要最小限のケアが出来ていれば御の字な長髪。耳を撫でる髪が梳かされるなめらかなリズムが普段自分のものと違う感触が普段自分がしているガサツさを際立たせなんとも居た堪れない。
少々痛むくらいなら気にせずパワープレイで梳かす強引な動きとは程遠い労わる繊細な力加減に唇を内側に丸め込む。
だが、正直悪くない。気恥ずかしさと心地よさが同居する感覚に菫子の顔が綻んだ。
「長年乙の髪を担当している腕が鳴ります」
「お手やわらかに頼む」
「では、僕の好みでツインテールにしましょう」
「キャンセルを希望する」
「残念ながら当店キャンセル不可です。諦めて下さい」
胡坐を掻いている足首を掴みささやかな抵抗よろしく上半身を前後に揺らせば、駄々を捏ねる子供を諫めるが如く化野の両手が頭を挟むようにキュッと動きを止めた。
それでも菫子に滾る反感の意思が舌打ちに宿る光景にめげず気にせず化野は淡々と彼女の髪の毛を自分好みに結い、その出来に一人満足げに数回頷いた。
「
…
この年齢でする髪型じゃないだろ」
「何言ってるんですか。僕は菫子さんが秘めているポテンシャルの一部を引き出したに過ぎません。嘘だというのでしたらこの髪型のまま外出しましょう。誰も彼もあなたに釘付け間違いなしです」
「違う意味でな」
これ見よがしに手鏡を菫子に持たせツインテールの出来を確認させる化野のアルカイックスマイルに菫子の眉間に皺が寄る。
だが、ふと小さな疑問が菫子の舌先に乗り言の葉となった。
「そういえば乙ちゃんが髪を結っているのを見たことが無いな」
壁と天井の境目を眺め記憶のページを捲る。一枚ずつ見落としが無いよう乙の髪形を思い出している菫子の二つの尾を指に巻き付けくるくる遊んでいた化野が殊更何てことないような口ぶりで言う。
「乙が小さい頃、年相応に可愛い髪型にしてとねだっていましたが日ごとに回数が減り最後は無くなりました。すぐ乙なりに僕を気遣ってのことだと。妹に我慢させるなんて不甲斐ない兄ですよまったく」
閉じていた目を開け手のひらに掬った髪の尾を見下ろす寂しげな化野の眼差しを肩越しに見遣る菫子。
天使が空を過るのを目で追い、そのうち自嘲しそうな化野に声を掛けた。
「今からでも遅くないだろう。乙ちゃんの髪を結ってあげたらどうなんだい」
さして珍しくも何ともない菫子の提案を聞いた化野は地の底から響くような唸り声を上げベッドに突っ伏した。
演技とも思えない化野のリアクションに狼狽えた菫子が向き合い背を丸め戦慄いている化野の肩を一先ず掴んだ。
「しました
…
しましたよ
…
」
「なら良かったじゃないか」
「ですが、そのあまりの可愛さにすれ違う何処の馬の骨とも分からぬ輩の不埒な視線に乙が晒されるのが耐え切れなくて結えない
……
!!」
「
……
そうか。それは仕方ないな」
早々に突っ込みを放棄した菫子は、慟哭の限りを尽くす化野の肩を労いを込め軽く叩きそっと目を逸らした。
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