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めめた
2025-11-25 20:22:19
2630文字
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種曲(年齢操作/同棲)
バレキスおめでとう。ありがとう。
5000億回書かれてそうな話を書きました。すみません。
ふわり、と香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、記憶の手前の方を引っ掻いた。
汗ばんだ肌を撫でる風が来る方へ向かい、修二は辺りを見渡す。思い描いていたその姿は、目を凝らさずともあっさりと見つけることができた。
『たい焼き』
そう書かれた幟の立ったそこは、スペースを借りて期間限定で出店しているらしい。
好物を両手に持つ相棒の姿は記憶に新しい。冷え込んでくる季節はこうしてたい焼きの屋台が出ることも増えてくるが、この季節に出ているのは少し珍しいかもしれない。少なくとも、ここ数年で見たことは無かった。
相棒はいつも、お気に入りの店でたい焼きをたくさん買ってくるのだが、別の店の物も気に入るのだろうか。少しの好奇心と、相棒の喜ぶ顔への期待から、修二は店先を覗くことにした。
味の指定と、個数を伝えて袋に詰めてもらう。ご丁寧に温め方の書かれた紙も同封してもらって、修二はにこやかに礼を告げた。
相棒ほど甘い物を好かない修二だったが、味見はしておくべきかと早速袋から一つ取り出して口へ運ぶ。ザク、とした食感から、温かなあんこが口内に広がる。不味くはない。と修二は思った。あんこは滑らかで、生地の食感も嫌いじゃない。けれど、やはり修二がたい焼きの批評をするには、食べてきた母数が足りなかった。
「ただいまぁ」
玄関ドアが閉じると同時に、修二は部屋の奥に向かって声を出す。相棒と折半して借りている部屋は、もう住み慣れた場所だった。東京の家賃相場に驚きを通り越して引いていた相棒の姿ももう懐かしい。
「おかえり」
ランニングに行くと言って出た修二の戻りに気が付いて、相棒はドリンクを入れてくれていた。
「竜次、たい焼き売ってたから買って来たで」
早速、と言わんばかりに茶色の紙袋を差し出して、修二は代わりにドリンクの入ったコップを受け取った。
「ありがとよ
……
これ、いつもんとこじゃねぇな?」
「せやねん。なんか期間限定で出してるみたいで、あのスーパーのとこ」
「どのスーパーだし」
いつも買い物にいくスーパーはあるが、ランニング帰りに買ったならそこでは無いと思ったらしい。事実その通りで、家からは少し離れた場所にあるスーパーのため、修二は雑に方角を指差した。
「あっち☆」
「あー、あのデカいとこ」
竜次はそれだけで理解したらしい。同じくランニングに出ることがあるし、この周辺の事ならもう把握してしまっている。
「待ってるから、汗流して来い。身体冷えるし」
受け取った紙袋をテーブルに置いて、竜次はわざとらしく追い払う仕草を見せる。
真冬の冷たい空気の中、汗ばむほどに走ってきたのだ。室内は温かいとはいえサッパリしたいのも事実。
待ってる、と言う竜次の言葉に甘えて、修二は風呂場へと向かった。渡したものなのだから先に食べていても良いのにそう告げられたということは、修二がなにを期待して買ってきたのかまで見透かされているようで、少し照れくさい。しかし、期待に応えようとしてくれるその心遣いに愛しさが込み上げた。
汗を流すだけのほんの数分を空けて、修二は再びリビングへと赴く。
「あ」
「あー!!」
思わず大きな声と共に指を指した先では、竜次の手に齧られたたい焼きが居る。
「待ってるって言うたのに
……
」
「
……
熱いうちに食わねえと、もったいねえし」
「それはご尤も
……
やけど!」
冷めるし蒸気で濡れてしまう。それは修二も理解している。けれど、期待した瞬間は既に過ぎてしまっている事実も変わらない。
「美味い」
「そら良かったわ」
「おい、そんなに拗ねんなし」
「分かってて待ってるって言うたんやろ
……
?」
「まあ
……
さっきはそうだったな」
修二はわざとらしく口を尖らせて、竜次の前に座る。
そんな様子もさして気にすることも無く、竜次は手にしたたい焼きを腹の中に消してしまった。僅かに緩む口元が、上機嫌であることを表していた。
「ま、ええわ☆ ほらこれとか、あんこじゃないやつも食べてや」
修二はパッと表情を切り替えると、袋からもう一つを取り出して、頭を向けて竜次に差し出した。
「おう」
竜次は一度、修二と目を合わせてから手を伸ばさずに口元を近付けた。これが修二の意趣返しであることを理解したらしい。それに素直に従ってくれる姿も可愛らしいなと思える程には、修二は竜次に甘かった。
「ん、チョコか?」
「当たり!」
あんこ、チョコ、カスタード、抹茶、などなど。さまざまな種類のたい焼きが売られており、あんこを二つと、チョコとカスタードを一つずつが紙袋には入っていた。
「美味い、が
……
」
「ん?」
たい焼きはあんこ以外認めない、という事でも無かったはずだと修二は少しだけ思考を巡らせる。
「まだ早いんじゃねえか?」
「
……
流石竜次
……
バレてもーた」
壁にかかった二月のカレンダーには、ちょうど一週間後が例のチョコレートの日だと示されている。
修二も、今日はあんこだけにしようかと思ったのだが、たい焼き屋の出店期間は一週間で、バレンタインの二日前には撤収されている。ならば今日も、一週間後の当日も渡せば良いだろうと決めて勝ってきたのだ。竜次も一週間前ならそう考えないだろうと思ったのだが、お見通しだったようだ。
「当日も用意しとるから、期待しててな?」
大人しく己の手からたい焼きに齧りつく竜次を眺めながら、修二は言う。どちらかと言えば、竜次の手から修二が貰う事のほうが多いが、これもこれで、僅かな背徳感があり癖になりそうだと、邪な気持ちを押し隠しながら。
「
……
返しは期待すんなし」
「竜次が喜んでくれたら、お返しはそれでええねんで? 俺がやりたいのに付き合うてもろてるし」
修二は本当にそう思っていて、事ある毎にそう伝えてはいるが、竜次にもプライドがある。だから受け取ってばかりでは居られないことも、修二は理解していた。
「でも、竜次がお返しどうしよ〜、て考えてくれんのも嬉しいなぁ」
修二の手にあったたい焼きは、既に無くなってしまった。まだ咀嚼を続ける竜次の口元を見て、修二は多幸感に包まれた。
「まあ
……
一ヶ月後もその顔が見られるようには、考えてやんよ」
言いながら、竜次は顔を綻ばせる。対照的に、修二はそんなに緩んでいたかと両手で頬を押さえたが、結局のところ、竜次が幸せそうなら修二はそれで満足なのだった。
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