白殊皎(しらよし こう)
2025-11-25 20:00:00
2075文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

愛を召しませ

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
この作品はぐだ鯖WEBオンリー『ボイラー室横より愛をこめてW 』に連動した(白殊が勝手に考えた)【白殊に歳勇小説リクエストを投げつけよう】企画にてリクエストいただいたものになります。

◆リクエスト内容
「大きな口でいっぱい食べる第二再臨のイサミンと、それを笑顔で見ているヒッジの土近」
テーマ「いっぱい食べる君が好き」

二臨のあのたおやかさで拳骨が口に入るのは三臨よりギャップがあっていいですね!
カルデアにはいっぱい美味しいものがあるので、いっぱい食べてほしい!
もちろん、スプーンの場合は一番おっきいの山盛りで!

 いつもは脱いでいる片袖を通し、帯をきゅと締め直す。
 黒の羽織もきちんと纏い身支度を整える。
 近藤勇はどこかうきうきとした様子で部屋を後にした。
「気合い入ってんな、近藤さん」
 部屋の外では土方が待っていた。
「あぁ、今日はエミヤ殿の新作のお披露目の日だからね。楽しみだよ」
 にこにこと微笑みながら土方と言葉を交わし、歩を進める先はカルデアの食堂だ。
 近藤は食事が好きだ。
 サーヴァントに食事は必要ないといわれはするが、ここでは魔力供給の一手段として存在するし、なにより調理を担当するサーヴァントたちの腕が確かなのだから純粋に美味である。
 生前からの嗜好も手伝って、それを味わうのは近藤にとって楽しみの一つであった。
「歳も沢庵だけじゃなく、いろいろ味わいなさい。食堂の皆に失礼だろう?」
「俺はいいんだよ」
 ストームボーダー内は広いので、二人の部屋からは少し距離があるが、大人の足並みだし楽しみを前にしては大した距離ではない。
 程なく食堂に到着する。
 昼食時なのも手伝って、結構な数のサーヴァントでごった返していた。
「やぁ、いらっしゃい。今日のご注文は?」
 厨房の守護者・赤のアーチャーは二人の姿を認めるとにこりと微笑んだ。
 いつも食事に対して率直で誠実な感想を述べてくれる近藤には彼も好意を寄せているようだ。
「まず、新作を二つ。私と歳の分を頼もうかな。それから──以前出してくれた卵がふわふわした……おむらいす、だったかな? それも一つ。あとは追々頼ませてもらうよ」
 細身に見えるその身体のどこに入るのかという気もするが、近藤の食欲は旺盛だ。
 いつも3~4人前はペロリと片付ける。
「俺の分はよかったのに」
 本日のおすすめにもなっている新作と、近藤の注文したオムライスを持ち、土方が呟く。
 自分で持つと言い張ったが、ほぼ強引に取り上げた。
「素直に食べなさい。局長命令だよ」
 軽く片目をつぶり、念を押す。
「ずりぃよ、あんたは」
 土方はフッと微笑んで答えた。
 こういうときばかり必要のない権限を振りかざす近藤を可愛いと思った。
 席を確保し向かい合わせで座る。
「いただきます」
 生真面目に手を合わせ、近藤は皿に向き直った。

 新作はビーマと共同開発をしたという大きなナンのついたバターチキンカレー。
 もちろん、近藤にとって初めての食べ物だ。
「これは、素手でいいのかな?」
「いいんじゃねぇか?」
 わくわくした表情で、かなり大きめにナンをちぎり、カレーにつける。
 そして、大きな口を開けてぱくりとそれを収めた。
「ぅん、これふぁ、なかなか」
 近藤の口は見かけによらず非常に大きい、というか大きく広がる。
 自分の拳骨がすっぽり入ってしまうのは生前から変わらない。
 着流しのたおやかに見える姿で、それをやってしまうのはなかなかに差異があって見物である。
「前に食べたカレーライスに比べて、口当たりが柔らかくていいね。鶏肉の食感もいい。このナン? も表面は香ばしくて、でも中身はしっかりと弾力がある。合うね、これは」
 ライブラリで見た食通のレポーターのように、感想もしっかりと、さも嬉しそうに言う近藤を土方は頬杖をついてニコニコと見守る。
「歳。食べないと私が食べてしまうぞ?」
 そんな土方に茶目っ気のある笑顔を見せて近藤はどんどん食べ進める。
 ナンもカレーも、あっという間に平らげてしまった。
「局長命令だ、いただくかな」
 土方は自分もナンをちぎり口に運ぶ。
 当然普段の米と沢庵とは全く違う味だが、近藤の笑顔があればそれに問題はない。
 次に近藤が取りかかったのはオムライス。
 当然、一口は大きめのスプーンに山盛りだ。
 子供サーヴァントたちの前でやるとものすごく盛り上がるそれは、見ていて気持ちがいい。
「美味しい。この卵がなんともいえないよね」
 厨房は心得たもので、近藤のためにと結構盛りを多めにしてくれているのだが、それも瞬く間に消えていく。
「追加、頼んでくる」
「転ばねぇようにな」
 重ねた食器を持ち、いそいそと立ち上がる近藤を暖かい目で見送る。
 なじみのある食べ物や訪れたこともないような遠い異国の料理、それを楽しむ近藤は本当に愛おしい。
 戦いに身を置く中で不謹慎かもしれないが、この穏やかな時が少しでも長く続くように土方はなにものかに祈らずにはいられない。
 いさかいではなく平穏を願うのだから、少しくらいは許されよう。
「歳、見てくれ、今日のデザートはこんなに可愛いケーキだそうだ」
 しばらくして戻ってきた近藤の両手には、大盛りのメイン料理が三つ、ケーキが二つ、ついでにコーヒーが二つ。
 デザートとコーヒーの一つは土方の前に置いた。
 よく持てたなと思ったが、近藤のバランス感覚は並ではないので不思議ではないな、と思いなおす。
「こりゃ、いい」
 あんたがそんなに喜んでくれるのなら──。
 そう心の内で思いつつ、土方はフォークを手に取った。