けいじ
2024-03-28 11:15:00
764文字
Public 背骨とエメラルド
 

バッティングセンター

夏の話

金曜の夜から一緒にいる2人が食料を求めて土曜の夜に出かけて、帰りに見かけたバッティングセンターに入ってみることになって
まずはリンクが打席に立って1・2球は様子見で、3球目で芯を食って、4球目からはパカパカ飛ばすから、ゼルダさんの中で「運動はできるほう」がリンクの自称から事実に変わる夜

交代でゼルダさんもやってみることになって、一番左の75kmの打席に入ったんだけどリンクみたいにはいかなくて、助言を求めてみてもいまいちよく分からなくて、でも1回バットにあたるとタイミングが掴めて前に飛ぶようになる
そうやって楽しくなってきた頃に最後の球がきて、フライボール

「もう一回やる?」って聞いたら「やるより見たいです」って言われて、一番右の打席を所望されて高校生じゃないんだけどって言いながらも「見たいです」って言われたんだから頑張りたい
流石に速くてさっきみたいに最初からは飛ばせなくて、だけどそれなりに調子が上がってくる
後ろでゼルダさんがおっさんに話しかけられてるっぽくて気になるけど、絡まれてる感じではなさそうで途中で抜けていくほどではなくて、雑念と集中の間で飛ばした白球がぬるくて重たい夏の夜空を裂いて、緑のネットを揺らす

打ち終えて打席から出るとおっさんに「元球児か?!」って聞かれて「違います」って返す
おっさんは「はーすごいなぁ」って言いながらフェードアウトしていって、2人の間には(なんだったの?)(なんだったんでしょう)(野球好きなのかな)っていう空気だけが残って、リンクの手のひらは打ち返した50球弱でちょっと痺れてる
帰り道でゼルダさんにも「すごいですね」って褒められて、嬉しいんだけど、ぜんぜんすごくないんだよって思う
だけど言っても分からないだろうから「でしょ」って返した、付き合って最初の夏