ちゃび
2025-11-25 15:02:59
1208文字
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まだ自機が地元にいる頃のフワフワ兄が弟について考えるSS

まだ自機が地元にいる頃のフワフワ兄が弟について考えるSS

小さなキャリッジの進路を塞いで武器を見せ、脅しの声をあげる。
それだけで荷車を引くチョコボが暴れ、手綱を千切り逃げ出した。
ろくに訓練もされていないのだろう。

それも当然、このキャリッジの中身は突発的な夜逃げを目的とした面識もない者同士の烏合の衆だと調べがついている。
まともなチョコボや護衛を雇える身の上でもないはずだ。

作戦どおり、逃げ腰の護衛を縛り上げ籠の中の者たちを拘束しながら、弟たちをはじめとする仲間には「殺すな」とだけ念を押しておく。
殺さない代わりに、狙う対象は馴染みの商人をとおして事前に調査し、被害を大ごとにできない事情を抱える人間を選んでいる。

種族がなんであれ、人間の命は存外重い。

何の変哲もない旅人たった一人を殺しただけで、集落の全てがグリダニアの法で罪に問われ最終的には子供たちに至るまで散り散りになり、結果的には消滅した集落を知っている。

その集落がまだあった頃、交流があった男がいた。

貧しいゆえに寝食や子供の世話などすべての生活を鍋や役割ごとに行う自分の集落とは異なり、男の集落は余裕があって家族や親戚単位で生活を行っていた。

彼は気のいい男で、たまに会うたび、喧嘩の仲裁の仕方や街での効果的な振る舞いまで様々を教えてくれた。
とある日、父に突然押しつけられた「半分フォレスターの弟」の世話をすることになったと、彼に愚痴をこぼした時は「いまにお前の後ばかりついてまわるようになるぞ。可愛くてたまらんだろうな」と笑われたのが理解できず、どういう意味だと嚙みついた記憶が懐かしい。

今になって、あの男は幼い自分にとっての兄貴分だったのだと思うことがある。
彼の言うとおり、オミローは自分の後ろをついて歩くようになった。
兄はなんでも知っていて、心身ともに強く、過ちは起こさないのだと、そう思いこんで理不尽な命令も当然のように受け入れながら笑顔を見せてくる。

あの男の集落やグリダニアでは、兄というのは対等な立場である場合が多いようだが、自分たちの集落では兄弟というのは仲間であると同時に上下の関係で、子供のうちから将来の立場に沿って世話役のもとで育つ。

自分が弟の世話をするのは、頭領の「従順にするため」という意向で始まったことであり、あの時、男に言われた言葉を自分は完全に理解することはできないのだと思う。

今、そう話したらあの男は何と言うのだろう。
彼は最初に集落に鬼哭隊が侵入した時、グリダニアに連行されたという。

この弟の、見返りをもとめない信頼に、何かを間違えているような胸騒ぎを感じる。
「これで本当にいいのか」と立ち止まりたくなるような気分になる。
オミローは多分、俺の「弟」だ。

なあ、あんたは知っているのか。
ともに同じ鍋を囲んでやりたいと、同じ寝床で眠ってやりたいと、
兄は、弟にそう思うものなのか。

その男の集落は、もう、ない。