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望月 鏡翠
2025-11-24 01:42:36
959文字
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日課
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#1916 ジョアンの耐えがたい主人について6
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
酒場が立ち並ぶ繁華街を離れれば、夜の街は鎮まり帰っている。
市民にとって、夜の明かりはまだまだ高価な代物だ。
だから堅実な生活をしているものは、陽が落ちれば生活を終えるのだ。家の鍵をしっかりとかけて、暗くなってから街を蠢くような危険な住民に目をつけられないようにしながら、翌朝を待つ。
背中を刺される心当たりがあるものは、夜に出歩こうなどとは思わない。懐に金を入れて歩けばごろつきの餌食になる。貴族は大抵、夜に出歩くとくは、護衛をつけるか馬車を使う。
それすらもできないような人目を憚る外出をする貴族の顔などは、見ない方がいい。
その晩、主人が不在のリュネストの使用人口が開いた。
裏口に用意された馬車は、中に乗る人間の血筋がわからないように、簡素な一頭立てで、中が見えないように窓には布がかけられていた。ジョアン・リュネストは一通の書状を携えて馬車に乗り込んだ。
中にはリュネスト家の当主からの書状が入っている。
トルガが不在の間、家のことは家令に任せられる。代理であるという部分を伏せたとして当主という肩書きも、間違いではない。家を出たあとに書かれたものならば、辛うじて筋は通る。これを使って特例を設置し、トルガが独断で強いた令を一部なりとも解除することが目的だった。
同時に本国に手紙を出して、あの男の権力を制限してもらわなければいけない。
夜まで待ったのは、形だけのものであっても主人の決定に従うべきということなかれ主義も屋敷の中にいるからだ。彼らが屋敷を出発したばかりのトルガに連絡を取る手段もゼロではない。
しかし早く動かねば、根回しの方が間に合わなくなる。
フードを目深に被り、顔を隠して馬車に乗り込んだジョアンは、そのまま外に飛び出すことになった。馬車の中に、いるはずのない先客が待ち受けていたのだ。
明かりはなく顔は見えずとも、狭い馬車の中で男物の品のない香水の匂いが香った。同行者など許した覚えはないのだ。
馬車から転がり出て、外套の裾を踏みそうになりながら振り返る。
「よう」
軽く片手を上げて、馬車から降りてくる。夜空の幽けき明かりと屋敷から漏れ出る灯に照らされても、その浅黒い肌と黒髪は闇に溶けていきそうだ。
トルガ・ミノーフィッシュが、そこにいた。
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