ナスカ
2025-11-24 01:00:38
9004文字
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愛した人を描く〜恋に落ちたシェイクスピア感想〜

今日(2025/11/23)再演初日を迎えた『恋に落ちたシェイクスピア』の初見感想です。

皆さんグッドハーブニング! ナスカです!

本日(2025/11/23)は、今年二度目の自由劇場のお世話になってきました。演目は『恋に落ちたシェイクスピア』です!

かの有名な悲劇『ロミオとジュリエット』が、シェイクスピア本人の恋愛経験に基づくものだったら? という内容になっております。

ゴーストアンドレディにズブズブにハマった私。グレイがこよなく愛する芝居『ハムレット』は言わずもがなシェイクスピアの作品です。そんな彼が主役の作品ともなれば、観るしかありません!

しかし私、ロミオとジュリエットを読んだこともなければ観たこともありません!!!! タイトルと、『敵対する二つの家の娘と息子が恋に落ちて、二人とも死ぬ』という筋書きしか知らないのです! なんてこった!
ので、ちゃんと文庫本で予習してきました! これで対策はバッチリ!

さて、実は今回は公演初日。四季の『偉い人』っぽい人たちがたくさん劇場入口に立っておりました。この日観に来たお客さんは、恐らく全員が四季の会の会員。言ってしまえば太客ですからねぇ。
私は運良く、抽選で初日のお席をご用意いただきました! しかも一階席の、実質一列目です! (番号としては三列目なのですが、前方に席がありませんでした)こんな良席をご用意いただけて嬉しい限り……ここまで近いのは初めてです。

着いた席は上手側。見上げるように大きな、木で組まれた階段付きの露台が左右に置いてあります。赤毛のアンの時とは、また違った様相です。公開されていた通し稽古のお写真を拝見したので、これをどう使うのかはなんとなく見当がついていました。

軽やかなラッパの音を合図に、物語が始まります。

ではここで、登場人物の皆さんをご紹介しつつ、ストーリーを追っていきましょう。

まずは主人公のウィリアム・シェイクスピア。仲間たちからはウィルという愛称で呼ばれています。現代にまで名を残す偉大な作家は、スランプの真っ只中。にも関わらず、『カーテン座』と『ローズ座』という二つの劇場から仕事を受けています。更にひどいことに「明日完成するから」とか言ったり、二つの劇場に同じ台本を送ったりしてるんです。駄目だこりゃ。
同じ作家仲間のマーロウから励ましてもらってはいるようなのですが、どうもスランプから抜け出せないそうで……わからなくはないけどね😂
さて、そんなウィルが台本を担当した喜劇が『カーテン座』によって、しかもエリザベス女王の御前にして披露されるとのこと。ウィルとしては「こんなのを女王陛下の御前でーーーっ!?!?!?」といった様子。けれどウィルの意向は無視され、上演は決行。
そして時を同じくして、その劇を観ている一人の貴族の娘がいました。

それがもう一人の主人公にしてヒロインのヴァイオラ•ド•レセップス。芝居と詩を愛する娘で、夢は役者をすること。けれどそれは叶わぬ夢だったのです。
当時のイングランドでは、『女性は役者をやってはいけない』という決まりがありました。風紀の乱れがどうとか、公序良俗がどうとか、ということらしいです。
つまりは女性差別に加えて職業差別! 時代が時代とは言え、ヴァイオラがそれを窮屈に思っていたのは事実。それを話せるのは、乳母であるばあやだけ。これはロミジュリ本編におけるジュリエットと同じですね。
ヴァイオラはその日観た舞台の詩を見事に諳んじ、『本物の女性が女性を演じられるようになったら良いのに』とため息を漏らします。今の世だと一部の方からバッシングを受けるかもですが、これは16世紀の話。女性の自由がガチガチに制限されていた頃の話なので目くじら立てないでくださいね。

そんなヴァイオラ、なんと男装して新作喜劇のオーディション会場に潜入します! それは『ローズ座』で公演予定の、ウィルの最新作でした。

ここのオーディションシーンが、とにかく面白いんです。ウィルがローズ座の主人であるヘンズローと共に役者の品定めをしているのですが、誰も彼もウィルの理想からは遥か遠く。それが喜劇のように描写され、客席からは何度も笑いが起きました。

そこへ彗星の如く現れたヴァイオラ、もとい『トマス・ケント』でした。長い髪を隠すために帽子を被っています(この頃未婚の女性は髪を垂らしていたそうです)。
ウィルが手掛けた詩を情感たっぷりに身振り手振りを加えて諳んじました。ウィルは『彼こそが理想のロミオ』だとして、あっという間に惚れ込んでしまうのです。自分の表現を理解してくれる人を見つけた。それは大いなる歓びだったことでしょう。ウィルは「愛を告げるシーンなんだから帽子を外して顔を見せてくれないと」と頼み込みます。

しかしトマス・ケントはヴァイオラ。女性であると知られては死活問題です。自分は『レセップス家に仕える者』だと告げて、逃げ去ることしかできませんでした。

ではここでヘンズローの紹介です。客入りの多いカーテン座と比べ、こちらのローズ座は客入りが全くありませんでした。ウィルの才能を信じ、その戯曲を待っていますがスランプ故に公演できるものが無いのです。それ故借金を重ね、登場シーンでは手足を縛られ、ブーツを履いたままとは言えふくらはぎを焼かれるという拷問にかけられておりました。

閑話休題。話の本筋に戻ります。その夜、ヴァイオラの家では舞踏会が開かれました。これはヴァイオラの父が、爵位を手にするべく、娘をウェセックス卿なる人物に嫁がせるための顔合わせとして設けたものでした。

ウェセックス卿は、この時代で言えばもしかしたら普通の男性なのかもしれません。しかし女性を自分の所有物のように考え、ヴァイオラのことも多額の持参金を目当てにしているという事実から、『嫌な男』と思わざるを得ませんでした。まあ、ヴァイオラとウィルの恋路を邪魔する存在なので、憎まれ役なのは仕方ないですよね!
彼の服はほとんどが赤と金で彩られています。一方、ウィルは青いジャケットに青のズボン。

この法則、アラジンで見たことがあります。

『主人公側』であるジャスミンやジーニーは青系の衣装や体色、『敵側』であるジャファーは赤系の衣装。相反する色を衣装に織り込むことで、『敵対関係にある』ことを表現する手法。こういうデザインからも制作側の意図が読み取れて、楽しいですよね〜

ウィルはトマス・ケントに手紙を渡すべく、レセップス家にやって来ました。マーロウも一緒です。しかし舞踏会の真っ最中である為に入ることはできません。「トマス・ケントへ手紙を!」と叫ぶ声を聞いて、やって来たのはばあやです。「トマス・ケントは自分の甥だ」と言って、二人を屋敷に通しました。

そこで!!! ウィルはドレス姿のヴァイオラを見てしまうわけです!!! 一目惚れ!!! ヒューッ!!!!

『華やかな舞台の彼女、一瞬で惚れたぜ』みたいなものでしょうか。ウィルは何とかしてヴァイオラ嬢に近づこうとしますが、流石に役者兼詩人兼戯曲家が貴族令嬢と話すなどとんでもないこと。マーロウやばあやに何度と無く阻止されます。で、そんなウィルが取った作戦は『こっそりダンスの場に混ざり込んでどさくさ紛れに接近する』でした! ここでね、マーロウとウィルが一緒にダンスするターンがあってフフってなりました。

見事ヴァイオラのダンス相手をゲットしたウィル。ヴァイオラからしてみれば、『ウィリアム・シェイクスピア』は自分の心を揺るがす詩をしたためる憧れの人。ロミジュリがこの二人の恋模様を下敷きにしている以上、ハッピーエンドが見込めないってのが辛いですよね。まさか死なないよな、ヴァイオラ……(ウィルは今後多くの作品を残すので、若死には有りえない)

ヴァイオラがウィルとは楽しそうにしているので、ウェセックスは気持ちよくありません。ウィルもまたヴァイオラを「私の所有物」と呼ぶウェセックスに腹を立て、ここでライバル関係が成立。

舞踏会が終わり、ウィルもマーロウも帰らなければなりません。けれどウィルはどうしてもヴァイオラが気になり、バルコニーにいるヴァイオラへお屋敷の庭から声をかけます。そう、あの名シーン『ロミオ、ロミオ。どうして貴方はロミオなの』に続く場面のように……

ヴァイオラは憧れの詩人が再びやって来てくれて喜びつつも、私有地侵入でひっ捕らえられることを案じます。ウィルはお構い無しですが、マーロウもハラハラだしこっちもハラハラ。そしてヴァイオラはウィルに、「詩を即興で作って聴かせて!」とお願いします。

ウィルはてんてこまいです。ただでさえスランプで言葉が出てこないのに、一目惚れした子の前でそんなことできるはずがありません。頭は真っ白です。マーロウに乞うて、それらしい詩をヴァイオラの前で紡いでいきます。『これ良いのか……マーロウから借りた言葉じゃん……』と思いました。けれどそれが最終的には、ウィルが心の底からヴァイオラを想う心が、美しい詩となって完成するのです。や、幸せにならんのかこの二人……

思いが高じたウィルはバルコニーをよじ登り、ヴァイオラに急接近。しかしそれをばあやに発見され、ウィルとマーロウは早々に退散せざるを得ませんでした。

ではここでマーロウをご紹介。彼はエリザベス朝演劇の先立と言うべき存在で売れっ子作家。ウィルの良き友人でもあり相談相手。悩める主人公の隣に立つ『気の良い優秀なヤツ』って感じです。ちょっとタイプが違うけど、ロミオにとってのマキューシオみたいな感じでしょうか。

さて、場面は変わりローズ座の稽古風景……のはずが、役者たちはみんな待ちぼうけ。寝てる奴、座ってる奴、色々います。みんなウィルが台本を書くのを待っているのです。これはひどい。極道入稿ってレベルを超えている。そのせいでヘンズローが苦労を強いられてるんだからマジで早く書いてやれよ……😇仕方ないけどさぁ!

そこへ戻って来たるわ、ローズ座の売れっ子役者エドワード•アレン! 地方巡業に行っていたらしく、売れっ子とだけあって背の高い美男子です。彼はウィルからマキューシオの役を与えられますが、ウィルは「この劇のタイトルは『マキューシオ』だ」とか言っちゃって……。コイツ、本当になんなんだ……🤣

ヴァイオラことトマス・ケントが到着し、稽古がスタート。ウィルはヴァイオラにバシバシ演技指導を入れます。
「今ロミオが語っている女性は、すぐに忘れてしまう人」
「そんな全力で語っていたら、運命の人を前にした時どうするんだ」
「なんだその子供っぽいキスの仕方は!」
「目の前にいる女性は不倶戴天の敵家の娘なんだからそれを意識して!」
……などなど。芝居好きのヴァイオラと言えど、ここはプロの仕事場。最終的にはウィルがジュリエットの役を見せる始末でした🤣

ちょっと待って……これストーリー準拠で感想言ってたら一万字超えるぞ……

ある日の稽古終わりに、ウィルは『トマス・ケント』を追いかけます。ヴァイオラからの手紙に「自分はウェセックス卿と結婚することになった。もう会いに来ないで」とあったからです。トマス・ケントを追いかければレセップス家に向かえる。彼が小舟に乗って帰ろうとするところに無理やり乗り込むウィル。トマス・ケントは、ウィルが自分をどれだけ愛しているかを試すように訊ねました。瞳や声に言及する辺りでは『あらあらまあまあ』みたいな感じでニコニコしたものです。……まさか、胸への感想があるとは思いませんでした🤣リンゴが二つ!🤣

小舟を漕ぐ船頭さんが「彼女はヴァイオラお嬢さんだよ」と言ってしまったものだからさあ大変! ウィルは必死でヴァイオラを追いかけ、彼女の部屋に突撃。けどヴァイオラは男装を解いてお着替えの途中。半脱げで私はビビりました。えっ、こんなえっちで良いんですか!?
二人はロミオとジュリエットのやり取りの場面を演じ合いっこ。ここは本当に、芝居を愛する者同士の素敵なやり取りでした。もしもファントムとクリスティーヌが純粋な師弟関係であり続けたなら、こんな風に芸術を語り合えたのかも……そんなことを思ってしまうほど。

まあ、ウィルとヴァイオラは一夜を共にしちまうんですけどね! サラシをほどいていくシーンを目の前に『マジですか!?』とポカーン状態でした。そのまま第一幕が終了。

や〜〜〜〜長い! 感想が長い! けどまだ続くよ!

第二幕は男性アンサンブルが奏でる『ソネットの第十八番』からスタート。……って、朝チュンだーーー!!!!! レディにはお目汚し!!!! 何やってんだお前らーーーッ!!!😇😇😇😇てか四季でこんなの見ることになると思わなかったわ!!!!

この日ヴァイオラはウェセックス卿と一緒にエリザベス女王の御前へ赴き『結婚を許してくださいませ』とご挨拶に行く日。なのにどーすんねんこんな状況で……。ヴァイオラはお着替え、ウィルはヴァイオラのベッドに隠れて、なんとかウェセックス卿をやり過ごそうとしました。けれどバレて……と思いきや、ウィルはベッドに置いてあった洗濯物を駆使して女装。顔まですっぽり隠し「自分はお嬢様のお付きの者」を名乗るのです。よっ、役者だねぇ!

その後ウィルは女装したまま謁見に同行。エリザベス女王はヴァイオラを見て「おっ、芝居見に行くと必ずいる子じゃ〜ん」と反応。「どんな芝居が好きなん?」とジリジリ迫っちゃう。ヴァイオラは「とにかく芝居が好き。芝居を書く者の中にも真実の愛を知る者がいる」とご意見。必要以上に答えちゃったものなので、周りは大慌て。ウェセックス卿は「芝居の中に真実の愛などあるものか」とまで言っちゃいます。
さあ賭けをしようじゃないか。芝居の中に真実の愛があるかどうか。ウェセックスが負ければヴァイオラに50ポンド支払う。エリザベス女王もそれをお認めになった。

ところがそれを、宮廷祝宴局長は良く思わない模様。コイツは博打も芝居も、『風紀を乱す』とされるものが大嫌いだからです。

更に稽古は進み、その中でウィルとヴァイオラは着々と愛を深めていきました。衣装室でイチャイチャ。ちょっと誰かに見られてたらどうすんの! ……と思っていたら案の定の予感が……😇ヒッ

いつの間にか役者仲間に加わっていた借金取り立て人のおじさんの奢りで、酒場へGO! けれどそこでヴァイオラはウィルが既婚者であると知ってしまいます。

そう……ウィルは既婚者。十八の時に八歳年上の女性と結婚させられたのです。ウィルは『そんなこと望んでいなかった。愛しているのは君だけ』と言いますが、ヴァイオラは聞き入れられませんでした。ヴァイオラは、『男装』という危険を冒して稽古にやって来たり、ウィルを寝室に受け入れている。けれどウィルはノーリスクではないかと。

逃げ出すヴァイオラ。そこにもたらされる『マーロウが殺された』という悲報。

ウィルは幾度となく顔を合わせたウェセックス卿に対し、「俺の名前はクリストファー・マーロウ」と告げてきました。恋敵だとしてウェセックス卿が誰かに頼み、ウィルではなく本物のマーロウを手にかけた。

これはッ……悲しすぎるッ……!!! けど色々自業自得過ぎるッ……!!!

失意に駆られるがまま、ウィルはレセップス家へ向かいます。自分の行動の結果起きてしまったことを、ヴァイオラに伝えるべく。

一方ヴァイオラは、ウィルが既婚者であることに嘆き悲しんでおりました。そこに扉を蹴破る勢いで入ってくるウェセックス卿。おま、レディの寝室やぞ!
「お前の父上がお買い上げいただいたのだから、いざ使うという時に役立たなかったら困るだろう?」とか言って、こらーーーーっ!!!! 無理やりヤろうとうなーーーーっ!!!!

更には「お前の詩人は死んだ」と言う状況に。ヴァイオラはショックで気絶してしまいました。そこに窓から飛び込んでくる、死んだはずの『マーロウ』ことウィル! 亡霊の登場にウェセックスも裸足で逃げ出しました。

目が覚めたヴァイオラに、「殺されたのはマーロウだ」「自分がウェセックスに『俺の名前はマーロウ』と言っていたせい」「マーロウが書けたはずのものと、自分がこれから書くであろうものを丸ごと取り替えたい」「こんなのはゴミだ」と自分の書いた台本を破り捨ててしまいます。

けれどヴァイオラは「マーロウはそんなことしても喜ばない」「貴方は書き続けないと」と慰め励ましました。もしもウィルが律儀に『ウィリアム・シェイクスピア』と名乗っていたら、きっとウィルはウェセックスに殺されていたことでしょう。それがウィルの冒していた危険だと、ヴァイオラは気付いたのかもしれません。

二人は再度、より強い愛を誓い合いました。この辛すぎる試練を乗り越えた二人の先にあるのは、ハッピーエンドかはたまた破滅か……

破滅の予感が当たりました。最終調整を含めた稽古中、トマス・ケントがヴァイオラ•ド•レセップスであると宮廷祝宴局長によって指摘されてしまったのです。それを内部告発したのは、ヴァイオラとウィルの衣装室でのイチャイチャを見ていたウェブスター少年でした。ローズ座は閉鎖を命じられ、ヴァイオラは家へ連れ戻され、万事休す。

と思った時、カーテン座のバーベッジがやって来ました。ウィルの台本争奪戦をしてきたし、同じ業界のライバルである。けれど自分たちは皆芝居の世界に生きる同じ身分。ローズ座が使えないなら、カーテン座を使ってくれ、と!!!!

こういうの良いですよね〜〜〜!!! 手強い競合相手が仲間になるの!!! アツい展開!!!

ところが問題発生。ジュリエット役を予定していたサムが変声期を迎え、どう聞いても女声ではなくなってしまったのです! けどお客さんは大入り、ざっと数えて二、三千人。ここで中止にしたらリンチです。一応ジュリエットの登場まで時間はあるから、まだ何かしら対応策を……

そこへやって来たのは、結婚式を終えて抜け出してきたヴァイオラでした! ウェディングドレスを着たままでした。舞台袖でもいいから、芝居を観たいというのです。ヴァイオラがジュリエットの台詞を全て覚えているとわかるや否や、ヴァイオラは舞台に突き出されました。

突然のことにも、ヴァイオラは完璧にジュリエットを演じてみせました。

これにローズ座の愉快な仲間たちは大喜び! 公演が続けられます! 忍び込んできた宮廷祝宴局長やウェセックスも追い出して(宮廷祝宴局長はウェブスター少年に報酬を支払っていなかった)、劇はクライマックスに突入。仮死状態のジュリエットの側で、毒薬を飲み自殺するロミオ。目覚めたジュリエットはそれに深く嘆き、ロミオの所持していた短剣を使って自害。
哀れな恋人たちの亡骸。あぁ、なんて悲しい……そしてある意味でこれがウィルとヴァイオラの運命……

と、舞台セットであるはずの石棺の中でドンドン音がします。インチキおじさん……じゃなくて、宮廷祝宴局長登場! おい誰だよその中に局長閉じ込めておいたの!!!! 女王陛下の名に置いて、この場にいる全員逮捕だ! とか言い出します。 えっ、でもエリザベス女王って演劇好きなんじゃなかったっけ……??

女王陛下御本人がおでまし! その名を濫用することを、女王が許すはずもありませんでした。そして女王は『芝居の中に真実の愛がある』と認め、ヴァイオラことトマス・ケントへ50ポンドを渡すことをウェセックスに命じ、女王の命に逆らうわけにはいかないと渋々。『トマス・ケント』はウィルへ50ポンドを渡し、それが今後生まれるであろう名作に繋がることを願ったのでした。

それでもヴァイオラがウェセックスと結婚したのに変わりはありません。二人は離れ離れです。けれどウィルはヴァイオラへ、「君を主人公にする」と約束しました。私は知らなかったのですが、こちらが『十二夜』という作品になるそうです。

亡きマーロウの霊や、多くの人々に見守られ、ウィルはシェイクスピアとしてたくさんの戯曲を残しました。そしてその何十倍も没にしたであろうたくさんの紙が、天井から降り注いで……閉幕となりました。

やーーーーー面白かった!!!! 楽曲や衣装も、しっかり十六世紀のルネサンススタイル。特に女性陣たちのドレスは作り込みが凄かったですね〜。

全体的な感想としては『物語を書きたくなる物語だった』といったところでしょうか。実際のシェイクスピアがヴァイオラという女性に恋をしていたかどうかはわかりません。けれどこれは、ロミオとジュリエットが、心を揺さぶるストーリーだったからこそ生まれた物語です。シェイクスピアという人間に何があったのか、こんな悲しくも美しい物語を書いたその裏側にあったものとは。それを考えながら、彼が手掛けた戯曲のエッセンスを取り入れながらストーリーを考えるのは、それはそれは楽しかったことでしょう。

と同時に、これは『巨匠ウィリアム•シェイクスピア』の誕生と、ヴァイオラを愛した『ウィル』の死を描いた物語でもあると感じました。勿論、この結末はヴァイオラがウィルの詩の素晴らしさを知っているからできたことです。ウィルもまた、ヴァイオラをモデルに『十二夜』を書くことになります。それもまた愛の形です。
それでも私は、『偉人』とされる存在は、祭り上げられるにつれて『個』を喪うように思えてなりません。そう思うとこの物語が生まれたことで、『巨匠ウィリアム・シェイクスピア』の中に埋もれてしまった『ウィル』が発掘されたように感じられます。私はこういうスタイルのストーリー、大好きです。

まだ読んでいないシェイクスピアの作品はたくさんあります。ソネット集もまだだし、十二夜にリア王、オセローや夏の夜の夢もまだです。『ウィル』の面影を感じ取りながら、それらの作品を履修していけたらと思います。

それでは今回はこれで終わりです! 長々とした感想文にお付き合いくださり、ありがとうございました!