悴んだ手を擦り合わせる。まだ冬とは言い難い温度だがさすがにこの時間帯は寒い。まあ夏は夏でその暑さに困るのでこの季節が一番良いのかもしれない。虫とか嫌だし。天堂は素手でも潰せそうだけど。実際、この間、始末してくれて黎明をいたく感激させた。
「病める時も健やかなる時もってあるじゃん? ユミピコはさ、あれ誓える?」
「神は誓わせる方だが」
「そうだけどさ〜」
「少なくとも」
天堂の規則的に動いていた音と手が止まる。
「誓う気のない相手と誓う気はない」
なあ、黎明。黒い目、が歪む。薄暗い中でもその色はよく見えた。深く覗かれる感覚にぞくりとする。
湧き上がる衝動に誘われるように顔を近づける。冷たい。けど割り込んだ中は緩く心地いい。掻き回したのは少しだけ。離れた唇から舌打ちが響く。危ない。舌を噛まれる寸前だった。
「オレのこと見てるなって嬉しくなったんだよ」
「発情している間があるなら神に感謝して手を動かせ。早く帰って温かい紅茶が飲みたい」
天堂がこの場に誘ったというのに我儘な神様だ。今日の黎明は機嫌が良いのではいはいと適当に返事して言う通り、止めていた動きを再開させる。
「まあ、でも誠実だろ? 守れもしない誓いをするよりはさ」
「当然だ、守れない誓いをすることほど愚かなことはない」
落下音。
開いた袋からばらばらと落ちて行く。
これも健やかなる時も病める時も互いに慈しみあっていれば天堂に吊るされて、こんなふうに埋められることもなかっただろう。スコップを再び掴む。
土に沈んでいくふたつのひとがたたちがまだ生きている頃、何が一番大切か天堂は問いた。
互いに不倫して、子どもを放置して、別の家庭を壊して。他にも何だっけ、あまりに多くて忘れてしまった。
それだけの行った罪状の数を知っているのだから聞くまでもなくわかりきっていたはずで、しかし最後の審判に相手の言い分を考慮するのだから優しい神様だ。
まあ天堂の望む答えを心から口にしていればきっと慈悲が与えられたのに、間違えたからこの穴の中にいるのだけど。
黎明にとってその辺にいくらでもいる有象無象の人間の相手を思いやる心なんて見ても何も響かないが、天堂は見返りもなく互いを大事にするものがお好きらしい。神様は一番己が大切で愛してるのに他者にはその振る舞いを強いて勝手に価値があると称賛して、赦して、傲慢で自由ですこしだけ羨ましい。
「ユミピコがさ、オレだけに永遠を誓ってくれるならオレも誓えるかもしれないな」
「神を謀るな。おまえはひとりだけで足りないだろう?」
「信用ないな〜、でもちょっとは本気だってわかるだろ」
見透す天堂を観測して、満足する。
もっともっと見てくれたら魅せてくれたら、埋まらない底を満たしてくれるなら天堂に想わせて欲しいと期待する。
「それが全てになるなら考えてやる。帰るぞ、黎明」
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