三毛田
2025-11-23 21:48:07
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85 085. 涙に滲む世界

85日目
意外と何も見えない

「んぐぅ……ふ、ぐぅ……
 必死にこぼれないようにしていても、思っていたよりたくさん出ている涙は止まらない。
 そのせいで視界は滲んでいるし、鼻水が出ないように啜っているから鼻も痛い状態。
「穹、うるさい」
「だっれぇ」
「ほら、鼻をかめ」
「ふんっ」
 一枚じゃならいなくて、二枚、三枚とティッシュを使う。
「手を洗うか、これで手を拭け」
「ありがとう、丹恒」
「集中したいだけだからな」
 と言いつつ、冷え冷えのカコカーラを渡してくる。
 きっとこれで水分補給をしろということなのだろう。ありがたい。
 もう一回鼻をすすって、ゆっくりそれを飲む。
「あーあ。面白かったのに途中で穹が号泣するから、ちょっと途中で集中が切れちゃったな」
 大きく伸びをしたなのは、ジッとこちらを睨んでくる。
「だって。二人は何度か観てるかもしれないけど、俺は初めて観たんだよ」
 プロジェクターを持ち込んだ俺の部屋で、ソファーに並んで映画を見ていた。
 初めて観たその映画に感動したというか、涙腺を刺激されて涙が止まらなくなって。
「うーん……そんなに感動するものだったっけ?」
「感動するかどうかは、人それぞれだ。だから、俺は何とも言えない」
 なのは同意を求めるように丹恒を見るけれど、そう言われてしまい拗ねたようにスナック菓子をつまむ。
「これ美味しい。なんて名前?」
「ゼリービーンズだったはずだ。人工甘味料で、様々な果実の味に近づけているようだ」
「あ」
 口を開けると、彼は一つ入れてくれて。
「これは……メロン?」
「こっちは苺っぽい。ピンクは桃かな?」
 なのと二人、色々な色をつまんでは感想を伝えていく。
 あ。まだちょっと鼻が痛い。
「真っ赤だな」
「そんなに真っ赤?」
「ああ。もしかしたら、冷やした方がいいかもしれないな」
 ツン。と、丹恒の指が俺の鼻をつつく。
 いつになく優しそうな表情で、ドキッとした。
「わぁ……ウチ、自室に戻るね。あ。おやついくつか貰っていくから」
 ちょっと引いたような声を出し、彼女はお菓子を入れる用の紙袋にいくつかおやつを入れ、いそいそと出ていく。
「三月はどうしたんだ」
 ナッツをつまみながら、丹恒は首を傾げる。
 なのはきっと、俺が彼を好きだということに気づいているのだろう。
 でも、丹恒は俺を手のかかるやつだとしか思っていないと思われる。
 だから、俺たちの空気に耐えられなくて部屋を出ていったんだと思いたい。多分。
「なのはなので色々あるんだよ。多分」
「そういうものか」