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お芋さん太郎
2025-11-23 14:24:57
1548文字
Public
ちいさなSS @ONEPIECE
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おれの名は
青海で新たな王が誕生して、数年がたつ。その影響で世界はさらに自由になり、島々の交流は以前よりもずっと活発になった。
それは空島も例外ではない。ハイウエストの頂を通る航路は安全に整備され、空に憧れた青海人がここぞとばかりに訪れる。
観光を目的とした青海人が増えるにつれて、空に住む人間たちの生活もずいぶんと変わった。
門の監視に常に数十人が配置されることになったし、エンジェルビーチには大人数を収容できるリゾート施設が建った。ワゴームランドは大人も子どもも昼夜関係なく楽しめるアミューズメントパークとなり、たくさんの人で賑わっている。
そんな中でも、現在の神の意向により、シャンディアの文化や生活は文化財として保護されている。遺跡にはシャンディア以外が許可なく立ち入ることはできず、そのルールを守らないものは、神の護衛隊を務める元ゲリラのワイパーたちが排除する。
もう二度とシャンドラの灯を絶やさぬように、島の歌声が失われることのないように、両者が最大限歩み寄った結果だ。
とはいえ、四百年も前の遺跡。しかもかつての黄金郷。となると、興味本位で忍び込む青海の旅行者が出るのは必然である。たいして強くもない一般人を追い返すつまらない日々を、ワイパーたちは続けていた。
そんなある日、ひとりの見張りの男から連絡が入る。
『ワイパーさん、青海人の海賊が遺跡の見学をしたいと
……
』
「バカ野郎、追い返せ」
『いやしかし、どうしてもと聞かないもので』
「百歩譲って学者ならまだしも、海賊だ。どうせロクなことしかしでかさん」
きっとかつての黄金郷の噂を聞き、金ピカの欠片でも残ってやしないかと思ったのだろう。青海の海賊で遺跡への立ち入りが許可できるのは、恩人である麦わらの彼らだけである。
『
……
ですから、
……
いや、でも
……
ダメですって
……
!』
ずいぶんと粘る海賊だ。
一方で今日の見張りは、比較的穏やかな性格の男。問題が起こる前に元凶の海賊を排除しようと、ワイパーは急いでゲートへと向かった。
幸いワイパーのいた詰め所は、ゲートからほど近い。ほんの数分で着くだろう。どうか持ちこたえてくれと願うばかりだ。
『おい! やめろ、あん
……
ザザ、ザ
……
なあ、そこのあんたに言えばいいのか? おれァほんのひと目、遺跡を見たいだけなんだ。それで満足する。許可をくれ
……
頼む!』
ふいに、音声が乱れた。初めて聞く声が、切羽詰まった調子でワイパーに懇願する。
「信じるバカがどこにいる」
『信じられないのは分かってる。だが、あの時あいつらに教えられて、この目で見てェと思っちまった』
「
……
なんの話だ」
『自分でもバカげてると思ってる。それでも、自分が人生賭けて追い求めた答えが、手の届く場所に今ある』
ワイパーは、何か引っかかりを感じた。男の言葉の裏には何かがあると、直感的にそう思った。
見張りの男が「電伝虫を返せ」と叫ぶのが、受話器ごしではないどこかから聞こえる。
もう、すぐに着く。
『ただ見るだけでいい。それだけで、四百年の一族の無念が報われる気がするんだ。頼む
……
後生だ』
ワイパーの息が、一度詰まった。「四百年」という単語に、麦わらのニコ・ロビンの言葉を思い出す。
――
彼の子孫は、青海でいまだ黄金郷を探し続けている。
現場に着いたワイパーに背を向けているそいつは、ガタイのいい男だった。デカい猿を二匹連れている。木の実みたいな頭に、いつか、昔話で聞いた面影を感じた。
ワイパーは通話を切り、祖先の大地を踏みしめて男の元へと向かった。
覚悟を決め、たったひとつだけ男に問う。
「おまえの、名は」
男が振り向いた。まっすぐに目が合う。
「おれの名は
――
」
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