お芋さん太郎
2025-11-23 14:19:44
1464文字
Public ちいさなSS @ONEPIECE
 

未来はまるでピザのような




 ボニーは食べることが大好きだ。おいしいものを口にたくさん頬張ると、それだけで幸せな気持ちになる。
 それに、いっぱい食べるとお父さんが嬉しそうに笑う。だからもっと幸せになる。
 冷たい金属で囲まれた研究所はつまらないけど、みんながいるからとても楽しい。今夜はピザをいっぱい食べる約束をしてるのだ。
 待ちきれなくて、お父さんとのお話が全部ピザの話になってしまう。
「ボニーはどんなピザを食べたい?」
「トマトがいい!」
「いいね」
「あとは、チーズがたっぷり。サラミものせて!」
「最高だ!」
 したたるソースに、もちもちのチーズ、サラミがカリカリになるまで焼くのがベスト。想像しただけでよだれが止まらない。
「ピザって、ベガパンクが作ったのかな?」
「どういうことだい?」
「カツ丼はカツが乗ってるからカツ丼。でもピザは何がのっててもいいの。だからピザが好き! きっと天才が作ったんだよね。天才って、ベガパンクのことでしょ?」
 大きな丸い生地に何をのせてもいいなんて、夢のようだ。丸いからみんなで同じように食べられるし、ピザって本当にすごい。こんなにすごい食べ物なんだから、天才が作ったに違いないと思った。
「ふふ、あとでベガパンクに聞いてみようか。それはそうと、知ってるかいボニー。ピザにはジャムをのせても美味しいんだ」
「なにそれ! 食べる! お父さんも天才だね!」
 甘いピザなんて考えたこともなかった。それでもきっと、おいしいってわかる。お父さんは嘘なんてつかないから。
 それじゃあフルーツものせていいね。クリームものせて。それじゃあクレープだよ。
 あれやこれやと案を出し合っていると、ふいにお父さんが口をつぐんだ。にこにこと、いつもみたいな優しい笑顔で、手のひらにボニーをのせる。
 まあるいフカフカの肉球の上に立つと、まるでピザの具になったみたいで面白い。とはいえボニーは食べる方が好きなのだが。
「君が大きくなるのが楽しみだ」
「今なる?」
「いや、能力の話じゃなくて。ピザを見てたらね」
 ボニーは首をかしげた。お父さんはゆっくりと顔を寄せて、鼻でちょんとボニーをつつく。ボニーは自分の上半身ほどもある大きな鼻にすり寄り、目を合わせた。鏡みたいに自分が映って、その奥がキラキラして見える。
「ピザには何を選んでのせてもいいから。ボニーも病気が治ったら、なんだって選んでいいし、何をのせてもいい。なんでもしていい」
 心地よいトーンで、小さい子どもをあやすように、お父さんが続ける。
「何をのせても美味しくなるピザみたいに、ワクワクするんだ。なんでも自由に選べる君が大人になったら、どんな君になるだろう……って」
 ワクワクするんだ。
 お父さんはもう一度、同じように言った。
「わかんないけど、あたしはきっと、あたしだよ。トマトソースとたっぷりのチーズとカリカリのサラミがのってるかもしれないし」
「ボリューム満点だね」
「ジャムみたいに甘いかもしれない」
「きっとみんなが笑顔になるよ」
 ボニーがニカっと笑うと、お父さんも笑った。
「だからお父さん、見ててね! あたしが、どんなあたしになるか!」
……もちろん!」
 お父さんは、ちょっと息を止めて、返事して、ぼそりとひとつ呟いた。

「どうか君に訪れる未来が、ピザのように丸くありますように」

 意味は分からなかったけど、ボニーにはなんだってよかった。だってピザはおいしいから。
 お父さんと食べるピザは、なんだっておいしいから。