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お芋さん太郎
2025-11-23 14:13:01
1671文字
Public
ちいさなSS @ONEPIECE
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たこ焼き事変
「コラさん、たこ焼きです。熱いです」
「
……
ッぶっフォアッッッ!!」
「やっぱりやっただすやん!」
ベビー5とバッファローは、アハアハと声をあげて笑った。彼らのかわいい娯楽のために、コラソンの口内環境とたこ焼きは尊い犠牲となったのである。
吸盤ぷりぷりのタコ足は、空を飛んだ。噛まれることも飲みこまれることもなく、コラソンの口から砲弾のように発射された。じつに美しい放物線を描きながら、行きつく先はあろうことか近くを歩いていたローの帽子のてっぺんだ。
小さな小さな足である。ローは哀れなタコ足に気づかない。そして不幸なことに、ローは誰にもすれ違うことなくアジトを進み、ドフラミンゴのもとへたどり着いた。タコ足とともに。
三メートルの大男であるドフラミンゴは、白くてふわふわな帽子に乗っかった熱々の異物にすぐに気がついた。未来の右腕として大切に育てている子どもが、破壊衝動をその目に宿しながら頭にタコ足を乗せている。目を疑ったが、決して幻覚などではなかった。
幼少のころより数々の死線を潜り抜けてきたドフラミンゴも、これにはまったくお手上げだ。大人としてどう言葉をかけたらいいのかわからない。ローは抜け目のないやつだから、試されているのか? とさえ思う。
ドフラミンゴは少しばかり考えをめぐらし、やっと口を開く。こういうのは、素直に本人に聞くのが一番だ。
「ローお前、『それ』は趣味なのか?」
「なんの話だ?」
「頭の『それ』だ」
ローは『頭のそれ』と言われて、すぐに帽子を思い浮かべた。フレバンスでもかぶっていた、白いモコモコの帽子だ。初めてアジトに来た時からずっとかぶっているから、かなり汚れが目立っている。
白い帽子はローにとって、故郷で過ごした『あのころ』を思い出させるアイテムだ。趣味というよりも愛着が正しい。汚いと思われようが、自分から手放そうとは決して思わなかった。
正直に答えてもいいが、目の前にいる冷酷な男にそこまで心の内を晒すつもりはなかった。あえて弱みを握らせることはしたくない。
だからローは、喧嘩腰にこう答えた。
「ばかにしてんのか?」
その答えを聞いてドフラミンゴは半歩ばかり下がった。
どんなに懸賞金の高い海賊を前にしても、海軍本部中将の軍艦を相手にしても、気持ちの悪い薄ら笑いを絶やさなかったドフラミンゴ。そんな彼が、たったひとりの少年のひと言にたじろいだ。気おされたのだ。
ドフラミンゴは確信した。タコ足を頭に乗せるのは、亡国フレバンスを偲んでいるのだ、と。
ローは自信に満ちている。間違いや遊びでタコ足を乗せているとは思えない。きっとフレバンス独自の文化か何かなのだ。
美しかった白い町を知る者は、もはやロー以外にいない。彼が『それ』をすることにこそ、意味がある。
(あのタコ足は趣味なんかじゃねェ! あいつの、誇りだ!)
ローは爆弾を体に巻きつけてアジトに乗り込んだ経歴を持つ。その時からやべー奴だとは思っていたが、想像以上にやベー奴だった。
しかし、それでも。
「お前はやべー奴だが、それでも愛そう」
三メートル級の巨人が、小さなローをキュッとその腕で抱きしめる。
ローはずっとイヤそうな顔をしていた。正直者なので。
さて、お口を冷ましてドフラミンゴのもとにやってきたコラソン。彼が部屋に入ってまず見たものは、帽子のてっぺんにタコ足を乗せてる子どもをギュっとしている実兄である。ドッキリ企画かと、思わず隠しカメコがいないか確認した。
だがコラソンは思い出した。一番初めに食べたたこ焼きにタコが入っていなかったことを。
いつものように無言で二人に近づき、確かにたこ焼きのタコだと認めた。ただただ、活きのいいタコだなと思った。
ドフラミンゴと真正面から目が合う。
(ああ分かってる。自分のドジの始末は自分でつけないとな)
コラソンがコクリとひとつ頷いた。
あのタコ足を食べた時のドフラミンゴの表情と悲痛の声は、生涯忘れることはないだろう。
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