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お芋さん太郎
2025-11-23 14:11:49
803文字
Public
ちいさなSS @ONEPIECE
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はじめての海
まっかな夕日が脳を焼く。
目が燃えるように熱いのは、そのせいだ。
その日、ローは海を見た。たったひとりで海を見た。
『ローが十歳になったら旅行しましょう』
『海なんてどうかな。まだ見たことがないだろう?』
両親はいつも忙しかったから、旅行なんて初めてだ。フレバンスは内陸国で、海なんて見たことがない。だから二人の会話にワクワクと心が弾んだのを覚えている。
友人から聞いた海は、磯のにおいがして、塩っからくて、楽しいものらしい。でもローのはじめての海は、死のにおいがした。
大切なものを全部失い、死体にまぎれて国境を越え、一日かかってやっとたどり着いた海岸線。大切な人たちと見るはずだった景色は、自分ひとりだけのものになった。
そして太陽までもが、知らん顔してそっけなく去っていく。ピカピカ波間を光らせて、笑いながらいなくなる。人の気なんて知ったこっちゃない態度が、ひどく恨めしい。
きっと自分以外のすべてが、明日もいつもと同じ日を送るのだ。きっと自分だけがどうしようもなく一人ぼっちで、みじめで、ちっぽけで。巣から落っこちたひな鳥みたいに、大きな獣に食われてしまうのだろう。
ちゃんとわかっている。大きくて強いものが勝つ。それが自然の摂理というものだ。なんてバカみたいで、くだらない。
そのくだらないものに、ローのすべては奪われた。
ちゃんとわかっている。この世界は冷たく、残酷だ。それが現実というものだ。なんて味気なくて、つまらない。
そのつまらないものに、ローのすべては踏み潰された。
腹ン中で何かが燃え上がる。重くて熱い何かが、グルグルと苛烈に渦巻くのを感じる。知らない感情が、バチバチと火花を散らしてはじけ飛ぶ。
ああ、夜がやってくる。
闇がうしろから迫ってくる。
暗い足もとに小粒の海を散らし、黒くて大きな覚悟を背負う。
太陽は、完全に沈んだ。
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