お芋さん太郎
2025-11-23 14:09:26
1079文字
Public ちいさなSS @ONEPIECE
 

ふたりのやる気が続くまで




 潜水艦は、他の単純な船とは違うから。それがローの言い分だ。
「全員がしっかりと動かし方を理解してないと困るだろ」
 ペンギンとシャチにそれぞれ手渡したのは、雑誌サイズの冊子だった。ロー、べポ、ペンギン、シャチの四人がヴォルフから受け継いだ、黄色い潜水艦〝ポーラータング号〟のすべてが、その『取扱説明書』に書いてある。
 シャチはそれを指の先っぽでペラペラとめくり、目をバッテンにして叫びをあげた。
「でもこれ……何百ページもある!」
「八ページしかないだろ」
「読み聞かせて! 夜寝る前に、温かいココア飲みながら!」
「自分で読めよ!」
 泣き言をやめないシャチに、ローは律儀に喝をいれた。ペンギンはそれをながめて得意げに笑う。
「だっはっは! シャチお前、たったこれだけも読めないのかよ! おれなんて一週間で読めるぜ」
「遅ェよ!」
「いや、遅い早いじゃないです、ローさん。できるか、できないか。そこには高い壁があって、おれはシャチと違って……ア」
 言いながら紙をめくるペンギンの手が、突然止まる。冊子をパタンと閉じ、頭を抱えて三秒フリーズし。
「おれ、じつは漢字を読んだら死んでしまう病で……
「そんな病気あるか!」
 幼少期に悲惨な日々を送ってきたペンギンとシャチは、出会った当初、文字を読めなかった。海に出るまでの数年間で勉強はしてきたものの、長い文章や専門的な単語はまだ苦手。その克服に、ポーラータングの説明書はもってこいだとローは考えた。
 だからなんとしてでも、自分の力で読んでもらう必要がある。
「でもべポは! べポは読んだんですか⁉」
「もちろん!」
 ペンギンの指摘に、べポは胸を張って鼻をフンと鳴らした。最年少のべポが二人を相手に威張れる機会はそうないのだ。
「当たり前だろ、航海士だぞべポは。寝起き三秒で暗唱だってできる」
「ろ、ローさん⁉ それはちょっと」
「くそー! やるなァ、べポ! お前すごいんだな」
「信じちゃった⁉」
「ベポが寝起き三秒なら、おれは一秒でやってやるし!」
「しかも張り合ってきた!」
 なんて単純。
 一気にやる気を出した二人は、息を巻いて駆け出した。なぜかわからないが、ドタンバタンと豪快な音まで聞こえる始末。
 結果的に嘘をついたみたいになってしまったべポは、どうしようとワタワタ大慌てだ。そんな彼に、ローはそっとささやく。
「いいんだよ、これで。やる気になってんだから」
 あとでココアでも持っていくか、と。内心ふわっと思いながら、ローはべポと一緒に、二人の代わりに見張りについた。