宮腰
2025-11-23 00:07:17
10842文字
Public
 

水龍3分クッキング

リオセスリ殿お誕生日おめでとう!
リオセスリの誕生日を祝うためにヌヴィレットさんがスペアリブ作りに挑戦するお話。
▼メタネタ盛りだくさん
▼ヌヴィレットさんは大真面目だけど内容はおふざけです
▼かっこいいヌリはいない


【③炙ったリブを一度取り出してソースを塗り、再度じっくり焼く】

 この時、ゲームが大好きなとあるメリュジーヌの脳内では、某モンスターを狩るゲームの肉焼きBGMがループしていたと言う。

「急げ急げ~! そろそろ公爵様が来ちゃう!」
「ヌヴィレット様! ケーキが到着しました!」
「うむ、ご苦労。メンタ、ありがとう。感謝する」
 スペアリブ作りも終盤戦に差し掛かった頃。オーブンからはホカホカと焼けた肉が取り出され、えっさほいさと作業台へ運ばれて行く。ヌヴィレットは左官職人さながらに次々とスペアリブへソースをたっぷり塗りつけ、ソースが塗られたスペアリブは可愛らしいミトンを着用した運搬チームが再度オーブンへと運ぶ。
 メイン会場であるヌヴィレット邸のダイニングでは飾り付けも最終段階へ突入しており、到着した豪華なケーキはテーブルの中心へと飾られた。
 ヌリヌリ、ヌリヌリ。
 次々と運ばれてくる肉へソースを塗り続けるヌヴィレットの滑らかな頬を透明な雫が伝い、顎先から零れ落ちる。止めどなく零れ落ちる汗をヌヴィレットは手の甲でグイッと拭い、作業の手を休めることはなかった。
「ヌヴィレット様、代わりましょうか?」
「差し支えない。心配無用だ」
 ヌリヌリ、ヌリヌリ、ヌリヌリ……
 愛する人の笑顔を守る為に。最高の誕生日をプレゼントする為に。私はいま手を休める訳には行かない。頑張れヌヴィレット、戦えヌヴィレット。己の信ずる道を征け。
「はい、これで最後です!」
「ああ、承知した」
 そうして、長き闘いが壮大なエンディングを迎えようとしていた。ヌヴィレットは最後の肉へシャアアアアとソースを塗りつけ、自らそのパッドをオーブンへと投入した。
 だが、恋する水龍に休む暇はない。ソースが焦げる良い香りがキッチンへ充満し、続いてチーン!チーン!と軽やかな音が鳴り響き始めたのだ。最初の方に投入したスペアリブが続々と焼き上がった勝利の合図、いわば凱旋のラッパだ。
「完成〜! 肉が焼けたよ!」
「ヌヴィレット様、ウルトラ上手に焼けましたー!」
 こんがり肉Gが出来た。
「じゅる……おいしそ~」
「うむ、急ぎ盛り付けよう」
 せっせ、せっせと。
 レストランで出す料理は盛り付けが肝心だと言うが、家庭料理となればまた話は別だ。焼けた肉をエスス山脈のように積み上げ、彩りとしてルエトワールステーキ・ガーリック風味を添える。仕上げに余ったソースをスペアリブ山脈の山頂からドバーとかければ『秘伝のローストリブ・水龍エディション』の完成だ。
 わァ、っ……! と、メリュジーヌ達から歓声が上がり皆で抱き締めあい喜びを噛み締める。
「やったー! 完成だ!」
「お山の天辺にマルコット草を添えて……と」
「あ、ヌヴィレット様は先に着替えてきてください! お時間が!」
「うむ、すまない。そうさせてもらおう」
 失礼、とヌヴィレットは足長高速ダッシュで私室へ戻り、ソースが付いてしまっていた顔をブシャーと水で洗い流す。今日のためにとシグウィンが選んでくれた服へ慌てて袖を通すと、待ちわびていた来客を報せるベルが聞こえて来た。朝早くヌヴィレットが自ら摘んできた腕一杯のロマリタイムフラワーを抱え、再び足長高速ダッシュで愛しい人を迎えに行く。
 不変の誓い、そんな意味を持つ花束を愛しい君へ。
 どう声を掛けて渡そうかと楽しい悩みにこのところ浸っていたが、やはり心のままを伝えるのが一番だ。自分のそんな所が好きなのだと、彼はいつもそう優しく笑ってくれるから。

「誕生日おめでとう。変わらぬ愛の誓いを、君に」

 ドアを開き大量の花束と愛の言葉で出迎えたヌヴィレットを見てリオセスリは面食らったような顔をしていたが、すぐに表情が綻び大好きな笑顔を見せてくれた。花束ごとヌヴィレットを抱き締め熱いキスを交し終えると、リオセスリの手が優しく前髪へと触れた。可愛らしいヘアピンだな、と。
 忘れていた。シグウィン特製のメリュジーヌピンを、前髪へ付けたままだった。