白殊皎(しらよし こう)
2025-11-22 22:30:17
2200文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

末永くの言祝ぎを

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
11月22日【いい夫婦の日】のまだ付き合ってない二人。

「え、あんたらって夫婦じゃなかったの?」
 食堂で相席となったあるサーヴァントにそう言われて、近藤はとろろ飯が気管に入ってむせ、土方は茶を盛大に吹き出した。
「げほ……いや……その……私達は男同士、だし?」
「どっからなんでそうなったんだ……
「いやさ、ほら。性別なんて関係あってないようなもんだし。あんたらいつも一緒にいるし? お互い目と目で通じてるようなところもあるし? 距離がやたらと近いし? ありゃ夫婦だろうってみんな言ってるぜ?」
 続けて言われて近藤は耳まで赤くなって撃沈し、土方は天を仰ぐ。
 自分たちは周囲からそういう目で見られていたのかと。
「えっと……私達は……
 言いかけて近藤はチラリと土方を見遣る。
 下手に続けて彼に不快な思いをさせてしまいはしないかと思ったのだ。
「別に俺と近藤さんはそんな仲じゃねぇよ。発端は誰だ、しばき倒すぞ」
 土方はただでさえ深い眉間の皺を更に深くしてまた茶をすすった。
 それを見てほっとした反面、すこしだけ淋しくも感じたが、黙っていた。
「俺が知るかよ。とにかくあんたら距離がちけーんだよ」
 相手はトドメの一言を残して、食堂から去って行く。
 はたと気付いて周りを見回すと、自分たちに食堂にいるメンバーの視線が集中していた。
 皆一様に目が、物語っている。
──本当に、そんな仲じゃないの? と。
「とし……
「あぁ……
 近藤は気まずくなって土方の袖を引く。
 土方も頷いて席を立つと、二人連れ立って食堂を後にした。
──それでも一緒に行くんだな……
 皆大人なので、口には出さなかったが、そう思っていた。



 互いに無言で廊下を歩き、土方の部屋の前まで来ると二人一緒に扉をくぐる。
 それをしてから、もしかしてこれも一因なのでは!? と思い近藤は立ち止まった。
「ん? どうした、近藤さん」
「いや、その。さっき距離が近いと……
「別にどうでもいいだろう。俺は全く構わないぜ」
 しどろもどろになる近藤に、土方はスパッと言い切った。
「夫婦だなんだ、あいつらが勝手に言ってやがることだしな。──それに」
 そう見られるのなら自分はむしろ嬉しい──そう言おうと思ったが言葉を呑み込んだ。
 あれほど動揺した近藤だ、自分とつがわれるのは迷惑なのではないかと。
「それに?」
「いや、何でもねぇ」
 言葉尻を捉えた近藤が聞き返してきたが、返答はしなかった。
「俺はともかく、あんたは嫌じゃねぇのか? 男の俺なんかと夫婦だなんだ言われて」
 椅子を引き寄せ背面を前にして座ると、近藤を見上げる。
……私は……
 そういえば、召喚に応じてから自分の傍らに土方がいなかったことなどほぼない。
 いつもさりげなく、寄り添うように、ここでの暮らしが成り立つように心を砕き支えてくれている。
 それが当たり前だと思ってしまっていたことを、近藤は少し恥じた。
 土方にも土方の暮らしがあり、付き合いもあろう。
 自分の存在がそれを阻害しているのであれば、そこはちゃんと見直すべきではないのだろうかと。
 だが、それを除けば自分にとって土方の傍というのはもっとも心安らぐ場所である。
 一緒にいることで、土方が揶揄からかわれたりあざけりを受けなければ、別に恋人同士だろうが夫婦だろうが言われても構わないし、むしろなりたいとも思えた。
「嫌じゃないよ。おまえの傍は、どこよりも安心ができる」
──もし、この関係を続けるのに必要ならば〝そう〟なるのもやぶさかじゃない。
「ちょっとまて、近藤さん……
 それを聞かされて、土方は椅子の背に突っ伏す。
「あんた、それを本気で言ってるのか?」
「え、歳。あ、その……嫌だった、か……?」
 激しく動揺を見せた土方の態度に、やっぱりマズかったのかと近藤は慌てた。
「いや、違う。なんだ、その……
 近藤から見えている土方の耳が徐々に赤く染まる。
 土方にしてみれば、近藤の告白はまさに対軍宝具を一人で真正面から食らったようなものだ。
「あんたのそれは、ものすごく嬉しいんだが……無理をしてるのであれば……俺は……
 まともに近藤の顔が見られなくて突っ伏したまま続ける。
「無理なんかしていないよ!?」
 土方の口から出た言葉は速攻否定された。
「そうか……
 顔を上げられないまま土方は返事をする。
………………
 しばし沈黙した後、意を決したように立ち上がった。
 まだ顔が熱いのは仕方ないということにして、近藤の横に立つ。
「なら、俺と恋仲になってくれるという事でいいんだよな?」
「もちろんだとも」
 近藤は嬉しそうに土方の手を取った。
 今は生前むかしのようなしがらみも、二人を隔てる立場というものもない。
「あ……でも……
 近藤は土方の手をにぎにぎしながらちょっと考える顔になった。
「?」
「歳は昔から浮名を流してきただろう? 今生での浮気は許さないからな」
 ちょっと頬を膨らませ、睨み付けるようにしてそう言う。
 聞いて土方は可笑しくなった。
──誰が、大本命を射止めたのにそんなことをするかと。
……仰せつかまつりました、というところかな」
 土方はそう言って、自分の手を握る近藤の手を引き寄せて甲に口吸いを落とした。
 次は、近藤が赤くなる番だった。