【小説】ミナギの武器

何となく思い付いてぽちぽち

「私も! 私も父様と一緒の武器、使いたい!」

 幼い少女が声を張り上げる。
 その声の主張、いや、言いたいことに、視線の先の男――父様と呼ばれたアクタが、その双眸を瞬かせた。

 刻を戻そう。

 机にばかり向かっていても身体が鈍る。
 そう言って気晴らしに誘う仲間たちの気遣いに気付けぬ男ではないアクタは、「なら、いっちょやるか」と重い腰を上げた。
 ここのところずっと書簡ばかり相手をしていたのは事実で、争いの火種は何処かしこで燻っている現実だ。
 腕を鈍らせることは、自分の――否、仲間たちの命を危ぶませる。
 それだけはなんとしても許されない。
 だからこそ、アクタは仲間の声に応えたし――ならば相手をしろ! とばかりに群がられた訳である。
 待て待て待て、お前らどこから湧いて出た。
 そんなこんなでひと暴れした父たる男に手拭いを渡した少女――ミナギが、キラッキラとした眼差しを向けてきた訳だ。

「一緒って……コイツか?」

 持ち慣れた武器をぷらりと揺らす。
「うんっ」と大きく頷き、その武器を一心に見つめる少女に、ふと、在りし日のことを思い出した。

 そういえば、コイツを渡してくれたのもお前ミナギだったな。

 記憶も無く、名前もなかった男の自分に、彼女は沢山のものを与えてくれた。
 それと同じくらい、いや、それ以上の幸せをこの子にも与えたいと思っている。
 闘いも、争いも知らずに生きてほしいが、時代は――いや、この子の立場はそれを許さないだろう。
 この子自身が、ただ守られる立場に収まることを許さない。
 だからこそ、強くならなければならないのは事実で。
 ふむ、とアクタは己の右手に収まる柄を眺める。
 随分と軽く思えてしまった武器に、そろそろ、己も次の挑戦を始める良い機会かもしれん。
 これも切っ掛けだな。

「なら――これをやろう」

 ほら、と武器を差し出す。
「いいんですか!?」とぱぁっと表情を輝かせるミナギに笑みを深め「ああ。そら、重いから――
 気を付けろ、と言い掛けたアクタの目の前で、ひょいと獲物を軽々しく持ち上げる細腕。
 次の瞬間、振り上げられた武器が床にめり込んだのを、見た。

「えっ、えっ、父様、あの、どうしよう……

 呆気なく抜き取り、それから途方に暮れた大きな双眸が此方を見上げてくる。
 そうだな。
 とりあえず――

「ナトリに、叱られるだろうな……

 俺が。

 そういえば、彼女は昔から力が強かったな、などと今更になって思い出しつつ、今の彼女にもその片鱗があることを知ったアクタであった。
 このあと騒ぎを聞きつけて――いや、たぶんミルキィから連絡で仔細を知ったナトリが現場に顔を出し、叱られたのは勿論、アクタである。




 私も父様の武器が欲しかった!

 そう、頬を膨らませ、幼い頃と同じ表情でもう一人の娘が声を上げたとか。







※今のゴッツい武器になる切っ掛けはこんな感じかなって。