リュネストの屋敷の使用人たちは、もともと正当なリュネストの血筋に仕えていたものたちだ。新しい主人を認めていないものも、大勢いる。
特に、あの男の女好きで軽薄な態度を厭うものも多かった。彼をリュネストに引き入れることで懐に転がり込んでくる私財は魅力的だったし、あの男が他に与することを考えたら、味方に引き入れておくのが一番安全だ。
しかし、家としての行動を決めるとき、その手綱はやはり貴族が握っておかなくてはならない。
酒場に出かけたとして、確かにそこには情報があるだろう。人の動きも、物の動きも知ることができるだろう。それはわかっている。しかしそれは商人に必要な知識だ。
貴族が行う政の話は、街の酒場には降りてこない。他の家がどのように振る舞っているのかは、一生理解できないまま動乱に飲まれることになる。
ジョアンは一計を投じることにした。
幸い、トルガはしばらく領地を開ける。ディルストーンのご機嫌伺いだ。犬よろしく尻尾を振って従順に振る舞うのだろう。現地で外交をして帰ってくるなら、おおよそ一月は空けることになるだろう。
あの男は、まだ自分が不在の間に家を任せられるような細君はいないし、副官も持っていない。当然、いずれ家を継ぐような息子もいない。望んだところで、政治を複雑化することがわかりきっているのだから、許されはしなかっただろう。
必然的に、リュネストの裁量は家令であるジョアンに任せられる。
その間に、本国へ文を出して港を開き、傭兵を運び入れる。
一ヶ月という時間は、レシーと連絡を取り傭兵を運び入れるにはあまりにも短い。帰りの道中でトラブルがあり、帰還に遅れてもらわなければ時間が足りない。
その手配も今のうちにしておかなければならない。
領地を発つときのトルガは身軽だった。共周りの少なさは、彼が今思うままにできるものの少なさでもある。それを見ると心のそこから安堵する。
偉そうに、この世の全てが意のままであるように振る舞っている。しかし、実際はあの程度なのだ。
トルガがいなくなった屋敷はようやく正しく動き出し、息を吹き返したように鮮やかだった。
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