「なあ、V
……キリエになんて、プロポーズすればいいと思う?」
フォルトゥナの街に佇む、ネロの行きつけのバー。「相談したいことがある」と、Vはネロに連れてこられたのだった。
二人はカウンターの端に腰を下ろし、酒を交わし始める。
「悪いなV
……シャドウやグリフォンも、引っ込ませてしまって」
ネロはブルー・ラグーンのカクテルが入ったグラスを握りしめながら、少し俯いた。
「いや、それは構わない。いると騒がしいからな。で、本題のプロポーズの言葉だが
……」
「ああ
……キリエに、どう伝えればいいんだろうな」
「普通に、『結婚してほしい』でいいんじゃないのか?」
そう言ってVは、コーヒー風味のまろやかなブラック・ルシアンをそっと口に含む。
その隣でネロは酒をグイッと飲み干すと、頭を抱えながらため息をついた。
「お前、よく詩を朗読しているだろ?その本に、何か使えそうな言葉とかないのか?」
酒の熱のせいか、それとも話題が気恥ずかしいせいか
……ネロは頬を赤く染めながら、Vの本を指さした。
「そうだな
……ないとは言えないが、詩をそのまま引用するのはくどすぎると思うぞ」
「はぁ
……だよな
……」
ネロは再びため息をつくと、ぎこちなくも重い足取りで椅子からそっと立ち上がる。
「ネロ、大丈夫か?だいぶフラついているようだが
……」
「あぁ
……ちょっとトイレ行ってくる
……」
ネロが背を向け、店の奥へと消えた瞬間、Vはバーのマスターに声をかける。
「マスター、ひとつ頼みたいものがある
……」
静かに呟くVの言葉に、マスターは優しく微笑んだ。
***
ほどなくして、少し酔いを覚ましたネロが戻ってきた。
「え?俺、こんなの頼んだっけ?」
カウンターには、さっきまでなかった紫色のグラスが置かれていた。
首を傾げながら椅子に座るネロに、マスターは声をかける。
「スミレのリキュール、“バイオレット・フィズ”
……サービスさ」
「いいのか?そしたら、ありがたく頂くぜ」
ネロがグラスに口をつけた瞬間、Vとマスターはこっそり目を合わせる。そして、Vは何事もなかったように本を開くと視線を落とした。
「紫色のお酒って綺麗だよなぁ。味も、爽やかでおいしい」
そう呟いたあと、ネロはグラスをカウンターに置き、Vのほうへ顔を向けた。
「で、話を戻すけど
……キリエになんて、プロポーズすればいいと思う?」
Vは静かに本を閉じると、グラスを片手に話し始める。
「そんなに難しく考えなくていいんじゃないか。それに、大事なのは言葉の美しさじゃない。ネロの気持ち
……そのものだ」
「わかってる、わかってるよそれは
……だけどさ、プロポーズだって一生に一度だろ?キリエに俺の気持ち、すべて伝えたい
……だけど、俺って言葉選びとか下手クソだし
……」
ネロは片手で顔を覆うと、深くため息をつく。
「俺、キリエのこと好きすぎて
……でもそれが空回りするのが怖くて
……どう伝えればいいのか、わからねぇよ
……」
ネロの鼻をすする音が、静かな店内に小さく響く。
Vは彼の頬に流れ落ちる雫を、指先でそっと拭った。
「
……悪い、こんな情けない姿を見せちまって。酒のせいだと思っといてくれ
……」
ネロは目元を拭うと、照れ隠しから小皿のナッツを食べ始める。
その姿に、Vは優しく微笑みながら小さく首を振った。
「情けなくなんてない。大切な人の前で迷うのは、誰だって同じだ」
Vが低く落ち着いた声でそう告げると、ネロはかすかに目を見開く。
「ネロ、言葉は飾らなくても、まっすぐで嘘のないものなら
……必ず届く」
「
……そう、かな
……」
力の抜けた声で呟いたあと、ネロはVに顔を向けた。
「あぁ
……心を込めた言葉は、たとえどんなに不器用でも、伝わるものさ」
「
……」
「大丈夫。ネロの言葉は、彼女にとって世界でひとつの
……大切な詩(ポエム)になることだろう」
その一言が胸の奥に落ちてくるのを感じたのか、ネロは鼻をすすりながら小さく笑った。
「
……お前ってさ、たまにズルいくらい優しいよな」
少し涙声でそう言うと、ネロはグラスを握りしめる。
「ありがとう、V。
……少しだけ、勇気が湧いてきた気がする」
ネロはゆっくりと息を吐き出し、肩の力を抜いていく。
「
……よし。俺、自分の言葉で、キリエにまっすぐ伝えるよ。俺の想い
……たとえ、ぎこちない言葉でもな」
情けなさも涙も、全部ひっくるめて──
それでも伝えたい、幸せにしたい相手がいる。
キリエの笑顔を思い浮かべるその横顔には、確かな決意が灯っていた。
Vはネロを静かに見つめ、「頑張れ」と囁く。
「そういや、Vが飲んでるブラック・ルシアン
……お前の雰囲気に合ってるなって思ってたけど、このバイオレット・フィズも、なんかお前っぽいよな」
その言葉に、Vの口元がふっとやわらかくゆるみ、穏やかな笑みが浮かんだ。
(スミレのリキュール、“パルフェ・タ・ムール”に込められた意味は
……“愛”)
紫色のグラスを横目に見つめながら、Vは心の中で静かに呟く。
その言葉が、ネロの決意をそっと後押しした気がした。
———
[あとがき]
お読みいただいた方、ありがとうございます!
ネロV作品に影響され、自分もネロとVの作品を書いてみたいなと思い、執筆しました。
ネロには同性の友達のような存在が隣にいてほしいなと、DMC5が発売する前からずっと思っていたので、信頼できる男友達に恋愛
——キリエのことをこうして相談するようなお話を書けて楽しかったです😊
本編にはないですが
……ネロとVが友達として仲のいい関係を続けていく世界線、好きです。
本文に出てくるお酒につきまして、B'zファンで知り合いのバーのマスターに、キャラのイメージカラーなどを相談しながら決めたものになります!
@TokyoBlowin
マスター、ありがとうございました😊
ブラックルシアンは甘くて優しい味なのですが、まさにVくんのイメージでした!
機会、興味がありましたら、ぜひお店に立ち寄ってください🍸
こちらの話ですが、2027年発行予定の短編集と少しリンクさせております。
短編集発行の際は、コピー本や簡単な形で再度お届け出来たらなと思っております。
(“了”やto be continuedで締めなかったのは、そういう理由ですw)
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
癒羽琉/由羽
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.