推しに対する感情って最終的にこうなるよね…と言う話し

ワイはレイちゃんに対しては昔からものすごく夢みがちなんや…
碇くんはレイちゃんの中で確実に「聖域」と化しておるよな…聖域…何人も侵してはならないもの、祈りのなかに封じる、大切なもの。触れずに、守る場所…(嗚咽)

診察室を出ると、廊下には誰もいなかった。

月に一度の検査を終えたあとの院内は、とても静かだった。
どこかで機械の稼働音が響いているような気がしたけれど、
それも、遠く深いところで鳴っているようで、現実感がなかった。

細く開いた窓の向こうに見える空は、透きとおるような青。
わずかに吹き込む風が、カーテンの端をふわりと揺らす。
その影が、床に伸びた光の帯を撫でているのを、しばらく見つめていた。

風が肌に触れているのか、いないのか。
自分と外の境界が、なんだか曖昧になっている気がした。

――その光と白を見ていたせいかもしれない。
このあとに見たものを、あんなふうに思ってしまったのは。

 

音を立てないように歩きながら、校門をくぐる。
ほんの少し風が吹いていた。
朝の光はまだやわらかく、校舎の壁に反射して、
白く揺れながら、こちらへ流れてくるようだった。

靴の底が、コンクリートをかすかに擦る。
ゆるやかな坂道をのぼるたび、
背中に、陽のぬくもりがゆっくり重なってきた。

まぶたを細めると、遠くに人の気配が見えた。
二階の窓辺に、何人かの影がある。

笑っていた。
碇くんと、鈴原くんと、相田くん。
窓際で肩を並べて、なにかふざけ合っている。

その一瞬、碇くんが私に気づいた。

大きく目を見開いて、ぱっと表情が変わる。
思わず、というように窓辺から身を乗り出してくる。

「綾波! おはよう!」

風が吹いた。
手を振る彼の後ろにかかっていたレースのカーテンが、ふわりと持ち上がる。
朝の光を透かして、白い布が肩越しに舞った。

ヴェールみたいだ、と思う。
何かの本で見た、花嫁がまとう、それみたいに。

胸が、ちいさくきゅうっとなる。

……きれい」

声が漏れたのと、彼が笑ったのは、ほとんど同時だった。

白い布が、ゆっくりと肩に落ちていく。
その中で、碇くんが笑っていた。
少し目を細めて、風に髪を揺らしながら、
その笑顔が、光の中でほどけていく。
白と青のあいだに溶けるような、やさしい輪郭。
 
ほんの一瞬のことなのに、どうしてだろう。
わからなかった。
なぜ、こんなにも、まぶしいのか。

どうして――こんなふうに感じているのだろう。

理由のない波が、胸の奥に寄せて、そっと引いていく。

名前を呼ばれただけ。
手を振られただけ。
それだけのはずなのに――

心の奥が、すこしだけあたたかくなる。
でもそれが何なのか、言葉にはできなかった。
ただ、心のどこかに、この光景を残しておきたいと思った。
誰にも見せたくないような、誰にも触れられたくないような、
そんな気持ちが、自分の中にあることに、少しだけ驚いていた。

教室へ着くのが遅くなった日。
日常はもう始まっていて、
私はそこに、まだ入りきれていなかったけれど。

でも、彼だけは気づいてくれた。
名前を呼んで、笑ってくれた。
おはよう、と言ってくれた。

心の奥に、そっと灯がともったようだった。
光ではなく、熱のようなもの。
まだ小さくて、頼りなくて、それでも、確かにそこにある。

この笑顔を、誰にも壊させたくなかった。
できることなら、自分さえも――
触れずに、そっと守っていたかった。